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酔っぱらいのピエール

筆者が最初にヨーロッパを旅したのは30歳に近くなった頃で、ある国際的な展示会へと数日参加したのだが、出張の後でその分の旅費だけ自腹払うと上司に掛け合って花の都パリへと向かう事にした。当時好きだった絵画を堪能するためである。

滞在したブリタニックという安ホテルからオルセーとポンピドー、そしてルーブルへと巡り、夕方になったのでカクテル通には堪らないハリーズ・バーへと出かける事にしたのだ。かのヘミングウエイも通い詰めたという伝説的な店である。

しかし期待とは裏腹に行ってみると案外と普通の店で、筆者はそこで大ぶりのショットグラスに注がれたマティーニなぞ飲んでいたのだが、2杯目だか3杯目を干すうちに隣の席に座ったスーツ姿のフランス人に声をかけられた。

ピエールと名乗ったその若い男はあんたの紺のスーツの袖口から覗くストライプブルーの組み合わせは実に良いね!と言いながら、自分はこの近くの出版社で働いているのだ!と言い始めた。何でも帰りがてらにここで一杯引っ掛けて帰るのが日課だという。

見れば相当酩酊している様子で、生まれつきなのか酔ったからなのか焦点が合わない目で何やら色んな事を話しかけてくる。今だったらギャルソン呼んでこんな野郎は追っ払うが当時は若かったしパリで人恋しかった事もあってピエールの長ったらし雨話を聴き続けたのだ。

君たち日本人へね、言いたい事があるんだよ、と急に改まった口調で話し出すピエール。君たちは時間の使い方を知らないんだ。だからアメリカ人みたいにいつも急いでいる。でも僕たちヨーロッパ人はね、豊かな時間の使い方を知ってるんだよ。

当時30歳前で本格的なビジネス経験を積み始めたばかりの筆者にこの阿呆の言葉がどう映ったのかはご察しの通りである。ただバーの雰囲気の良さと初めてのヨーロッパでのメランコリックな気分から筆者はただただ黙ってピエールの話に耳を傾けたのだが、彼の事など遠の昔に忘れていたのだ。





さてあれから20年が経過し、本日ただいま筆者は那覇市で1ヶ月の短期滞在を始めたばかりなのだが、滞在先の近くにある公園で琉球相撲の大会が開かれていたので買い物の帰りがてらに覗く事にした。別に興味は無いが地元民が楽しそうに見ていたのである。

公園の芝生に座ると英語で会話している筆者らに側にいた古老が「あんたらはどこから来たのか?」と日本語で聞いてきたので、説明するのも面倒だからこっちも日本語で東京です!とだけ答えたのだが、この古老は何だかもっと話したそうだった。

この試合は個人戦と団体戦があって、筆者が見ていたのは個人戦だったのだが、準決勝以降は団体戦の後、つまりメインイベントは最後の最後になると聞いて呆れた筆者は帰る事にしたのだ。幾らロハとは言えもう1〜2時間公園いる気にはならなかったのである。

それで尻の下に置いたビニール袋を取り出して帰路につこうとすると、側にいた古老が筆者の方をジッと見ているの気付いた。なんか言うのかな?と思ったが何も言わない。しかし古老の幾分ロンパリ気味の目を見たときに何故だろう20年前の光景が脳裏によぎった。

筆者には今日どころか次の1ヶ月間の予定だって何もないのだ。いやもっと言えば別に1年でも2年でもこの公園にい続けても全く何の問題も無いのである。にもかかわらず一段落したからと場を辞そうとしたのは筆者の中にある種の強迫観念がある事に気付いた。

繰り返すが筆者は今後自分が死ぬ事以外は何のアポも無いのである。だったら時間をゆっくり使えば良いのにそれが出来無い・・。かつてポーランドの郊外で友人の一家の団欒シーンを見たときの様に自分が非常に貧しい生き方を生き急いでいる事に気付く。

こう書いても分からない人には分からないかも知れない。しかしどれほどポケットに小銭があろうとも何かに急かされている一日が幸せと言えるのだろうか?。そう問うと20年前の酔っ払いのフランス人の顔が目に浮かぶ。そして相撲を見ていた沖縄の古老の浅黒い顔も・・。彼らは筆者がきっと再び筆者を戒めに現れるのだろう。






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沖縄の離島に行って一週間滞在した時のことを思い出しました。
ビーチしかない島だったのですが、毎日宿の自転車を借りて島じゅう巡りましたよ。
まるでそうしないと損をするみたいに。
三日目ぐらいにアホらしくなって、
やっとダラダラぼーっと海を眺める生活に慣れたころに本土に帰りました。
うちなータイムにもなれなかったし、
琉球人じゃなくて日本人だなあと沖縄での時間をもったいなく思いました。
人間なんて産まれてきて死ぬだけなのに、自分のせっかちを反省しました。
そこへ行くとフィリピン人の奥様はどうなんでしょうね。
のんびりしているのかなあ。

 

沖縄ですか。沖縄の直ぐ北の与論島には、昔々、よく行きました。ここものんびりしてましたね。沖縄、まだ左側通行の時、行ったことがありますが。パーフォマンス一杯のステーキハウスとか懐かしいな。

沖縄が右側通行になって、ここのタクシーが殆どフィリピンに流れたそうです。
私的には、のんびりしているつもりなのですが、何故か年をとると、時間がたつのがやけに早い。

相対的なものかな。

 

いろんな生き方があっていいと思います。
急ぎでものんびりでも・・・

いまさら変えられないですよ。俺は。

それにしても「東京です」笑
ハイ、私もたまに使います。 

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