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死神と呼ばれた男(2)

機内でしこたま酒を呑み呂律の回らない状態で香港に赴任してきたYは正に吹き溜まりの様な男だった。数週間とはいえアメリカに赴任していたという売り文句の割には白人コンプレックスが酷くて商談の最中に逃げ出してしまうし、一方中国人商人相手には優越感から鷹揚に接してしまうため相手に付け込まれて杜撰で穴だらけの契約結んでしまうなど低能を絵に描いたような男であった。

それに営業現場が駄目でもマーケティングや新商品企画などの先を見通す業務や、事業計画や採算管理などの数字系には案外向いている人間というのは結構いるものだが、Yの場合はこれらの業務もことごとく最低点なため、筆者はコイツの使い道について考えあぐねた末に、値段にうるさい割に金払いが悪いとか、かつては重要だったが今やお荷物となった代理店などクズ客だけを回すことにしたのだ。

最下等な客に最下等な価格と納期、サービス条件を貸したのだから、Yはどこかでブッツン切れて問題を起こすだろう、そうすれば適当な理由をつけてYをお払い箱にできるわい・・と筆者は内心ほくそ笑んでいたのだが、世の中不思議なことにダメ社員とダメ顧客というのは波長が合うのか、案に相違してダメ客はYから逃げずにそのまま残り続け、しかもダメの2乗効果を発揮してさらなる混迷の深みへとはまり込んでいったのである。





しかし中小顧客が引き起こす問題ならまだ良い。一番困ったのは筆者らの事業環境に暗雲が立ち始めた事だ。1980年代後半に事業を立ち上げて以来、戦争や経済不況、イノベーションによる競合製品の出現に強烈な為替変動など様々な危機を迎えながらも、筆者らの事業は右肩上がりの成長を続けていて、過去20年間で最も悪い年でも対前年ではせいぜい▲5%程度で済んでいたのだが、Yが来てから流れが変わり始めたのだ。

まずY赴任の翌月には英ベアリングス社が経営破たんし、そして経済全体が数か月間暗闇の中を漂ううちに遂にリーマンショックを迎えることになった。中小の顧客は一気に沈黙してしまうわ大手顧客は在庫圧縮のために購買を3カ月近く凍結するわで、その年の売上は対前年▲30%と異常事態になった上に、倒産したり債務踏み倒しで開き直った顧客群(主にYの客がそうなった)からの債権回収で血反吐を吐く思いとなったのである。

その翌年も前年同様に低調なため毎日日本の上司からガミガミお叱りを受け続けた。しかし2010年は今までとは打って変わって生産キャパシティーの50%増しの巻き返しが起こり、今度は注文を断ることで多忙を極めたものの「やっと光明が見えた!」と喜んでいたのだが、翌年春の3・11地震で基幹部品の80%を調達していた仙台の工場が津波の直撃を受けて全壊してしまい、その後は予想もできない超次元の経験をすることになった。





それと筆者の会社だけで発生した事だと、ヨーロッパの環境規制の強化で許容範囲以上の有害物質が使われていることが認定されてしまったため主力商品の作り直しに半年かかるとか、労働争議で中国工場が3年連続で一時閉鎖してしまう、さらに品質不良でややこしい客から訴訟されてしまい、しかもこの客の営業担当であるYの書いた見当はずれな返事で上げ足を盗られて数億円の賠償を払わされるなど散々な目に遭わされたのだ。

おかしい・・。今までは失敗と言っても競合他社が画期的な新製品を出したとか、価格攻勢に出てきた、あるいは商品トレンドや需要動向を読み違える、そして最も多い単純ミスなどある意味想定範囲内の出来事が原因だったが、ベアリングス社の破たん以降は予想外の事態のオンパレードなのである。

そして迷信深い香港人たちの間からも「何だかYが来てから悪運に見舞われるようになったな・・」という噂がどこからかで始めるに及び、筆者はYの不運というのは本物で、今自分たちはYの背後にうごめく巨大な黒い雲に覆われつつあるのだ・・ということを確信した。死神・・、Yのあだ名は本当だったのである。(続く)






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死神の魔力を、逆利用する方法が在ったりして…

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