クリスマスもニューイヤーも来ない家

大晦日から正月三箇日にかけて女房の実家のあるリサール州の田舎町で過ごしてきたが、最初の晩にいざ寝ようとしたところ義父が申し訳なさそうに「悪いけどリリーの家で寝てくれないか」と言われてしまった。大学生の姪がクラスメート(全部女子大生)を大勢連れてきてしまったため、朝までこの家は男子禁制と相成ったと言うのだ。

義弟の家は他の親戚が押し掛けていてすでに満杯だしエアコンが無い。それで選択肢としては義父と一緒に蚊に刺されるのを承知でベランダに寝るか、エアコンのあるリリー叔母の家に厄介になるかの2つしかないのだが、正直これは参ったな・・と思った。というのはリリーの旦那は精神分裂病を患っているからだ。

深夜遅くにリリー叔母の家のドア越しに呼びかけると、暗闇の中から片足を引きずったリリーが表れて(脳溢血の後遺症から軽い半身麻痺である)快適なベッドルームへと案内してくれたのだが、義父や義弟の家では大勢の人間が居間の床に毛布を引いて雑魚寝しているというのに、この家はリリーと旦那の二人しかいない・・。





シン!と静まり返った家・・。そしてベッドメイキングを始めた時に「○△&#P○△&#P○△&#P」と同じフレーズを繰り返す低い声が暗闇の向こうから聞こえた。こりゃマズいんじゃないか・・と女房と筆者は顔を見合わせたが、リリー叔母は別に動じたりもせずに「目を覚ましちゃったみたいね」とだけ言うと暗闇の向こうへとズリズリと歩いていく。

リリーの旦那はもう10年近く病院の厄介になっているが、一昨年の前の祖母の葬儀では皆の前で絶叫したり、大層な金額の配当を得たという妄想から私立病院に表れて全く理解不能な治療法を医者に要求するなど症状が段々と進行してしまい、現在はベッドに縛り付けられるほどではないものの、最早外に出せる状態ではないとの話は娘のローズアンから聞いていたのだ。

確かに筆者の滞在中もリリーの旦那は意味の無い言葉を何度も繰り返し吐き出しているし、それに何だか随分大きな木片を力いっぱいに擦り合わせている様なグギッグギッグギッ!という不快な音が暗闇の向こうから聞こえてくる。一体何をしてるんだろう・・などと考えると大変不気味な光景が頭に浮かんでくるので考えない様にしていたのだ。





さて筆者と女房はこの家に4泊したのだが、二人とも心を痛めたのはリリー叔母夫妻には来客どころか電話さえただの一度も掛かってこなかったことである。無論いたのは毎日深夜から午前10時くらいなので、昼間は誰かが来た可能性もあるけれども、女房の親戚たちはクリスマスからただの一人もやり取りが無かったことは断言出来る。

10メートル離れた義父の家では親戚たちが大騒ぎをしているのに、リリー叔母と旦那を誘う人は誰もいない。大家族主義なフィリピンでもどうやら精神病だけは駄目なようだ。なにより実の娘ミレットとアンジェラさえもが嫌な現実を観たくないからと過去3年間クリスマスからニューイヤーは筆者らと一緒に過ごしているのである

昨日この家を辞す時にリリー叔母に世話になったと礼を言いに行ったのだが、その際に旦那にも一言・・と言ったところ、リリー叔母は急にキリリとした表情をするや「その必要はない!」と言い切った。その断固たる口調に何を言えなくなった筆者は黙って玄関へと歩いて行ったが、何か木材をこすり合わせるグギッグギッグギッ!という音は朝からずっと続いたままだった。






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日本の孤独老夫婦を思い浮かべますね。
食べるのには、心配なくても、精神的家庭環境は、孤立。フィリピンも将来、孤独死が予想されているそうです。中流の生活者(中間層)の国では。日本でいう下流老人精神的環境。

こういう状態は、オリジナルフィリピーノ国の田舎の子沢山の貧しい家庭では、、余りない状態ですよね。

子供が親をみるわけですから。親が子供をみるフィリピン中流国のはなしですね。

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