超感覚のレストランオーナー

ネットにある忘年会特集で東京の焼肉屋の一覧を眺めていた時に懐かしい名前を見つけた。谷岡さん(仮名)とミン・ヒーさんご夫婦である。このお二人は新橋にある○○焼肉店のオーナーで、すでに同地域に3店舗も展開している成功者だと書かれていた。

もともとデザイナーのご主人と名門ソウル大学で食品工学を学んだ才媛のコンビが新橋を席巻、さらに焼肉だけに飽き足らずフレンチの店まで開業したが、これも予約が取れないほどの人気なのだそうである。しかし最後に「この二人の味覚は確かだ!」という記述を見つけた時に筆者は困惑してしまった。

あれは今から20年前、香港ワンチャイのディスコで踊り明かした後で筆者のアパートに明け方現れた谷岡夫妻は「腹が減った・・」と言い出したのである。他の方には随分厚かましい様に聞こえるだろうが、やはり実業家として成功するにはこれくらいの超神経が必要なようだ。

冷蔵庫にサーロインステーキがあったので友人のため筆者は焼いてあげたのだが、ソースは学生時代に筆者の常食である吉野家の牛焼肉定食を真似たおろし生姜入りポン酢ソースをつけてやった。本当はおろしニンニクも加えるのだが生憎チューブ入りニンニクの手持ちが無かったのである。



フォークを刺してソースにナビった肉を食った谷岡さんは何故だかしーんと黙り込んでしまい、そしてもうひと切れ、さらにふた切れ目と無言で食い続けた後で「このにく・・うまい・・」とくぐもった声で言い始めた。ちなみにこれ単なるお徳用のステーキである。

それを聞いたミン・ヒーさんは多少躊躇した表情を浮かべた後で肉を口に運んだが、同じ様にしばらく沈黙すると残りの肉を全部平らげてしまい、そして「もう一枚焼いてくれない」と大変実業家向きのお願いをしてきたのだが、筆者が内心チッ!と舌打ちしたことは気がつかなかったようだ。

数分後もう一枚ペロリと平らげた後で「この肉は実に素晴らしい」と言い出したので、いや・・これは下のニューワールドスーパーで買ったお徳用の・・とは言えずその場を誤魔化したのだが、何とそれから1週間後にこの二人が牛肉片手にまた我が家に現れたのだ。

なんでも大変上等な肉を手に入れたので筆者に今から焼いてくれ!というのである。いや・・俺は単なるセールスマンで料理人でもなんでもないんだけど・・と言ったが、とにかく焼いてくれ!と何度も頼み込むので仕方なくフライパンに火を通し始めた。



この肉も美味い美味い!と二人であっという間に平らげてしまったので、いやあんたらが美味いと思ってるのは肉じゃなくてソースだろ?酢と生姜が肉の旨みを引き立てるんだよ!と言ったら、ああ!そうかもしれない!いやきっとそうだ!そうか!ちっとも気がつかなかった!と今頃になって納得したらしい。

この二人の味覚回路は本当に大丈夫か?と首をひねったが、ミツカンのポン酢とSBのチューブ入り生姜を持たせてあげたところ、ありがとう!これで毎日美味しいステーキが食べられるわ!と感激した様子で、こんなモノに大層感謝されるとはオレは異空間に入ってしまったのではないか・・と疑念を抱いてしまった。

その後筆者は当時付き合っていたミン・ヒーさんの親友と気まずい別れ方をしてしまったため谷岡夫妻とも疎遠になってしまったし、香港返還前にご夫妻は日本に帰国されてしまったのでつい先ほど20年ぶりに名前を発見したというわけである。しかし一緒に酒を呑んだりソウルで遊んだ記憶とともにあのステーキの一幕が蘇ると、筆者の中に深い疑念が浮かんだ。

新橋の店が流行っていると言うのは本当なのだろうか?。しかし一人も客がいないのに3店も持てるはずは無いから美味いのは確かなのに違いない。でも美味いのはソースであって肉では無い事に気づくのにあれほど時間がかかったのは、成功するレストラン経営者には常人では到底理解不能な別次元の味覚分析回路があるということなのだろうか?




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37年前を思い出します。日本の話です。当時、仕事の関係で’、一流レストラン、ラウンジで只で食べ放題だったのですが、今でも記憶に残っているのは、ミニッツステーキにラフォールおろしとレモンと特別な醤油(ニンニクを醤油のビンに入れ、醤油の色が薄くなるまで寝かした日本醤油)をかけて食べたステーキの味。
神戸肉よりおいしかったような。

あと記憶に残っているのは、生ハムメロンとか生牡蠣のレモンバター添えとか。

フィリピンでも大昔、バイトの仕事で、ツーリストレストランで3日に一回は生きたロブスターやシーフーズを無料で食べ放題。(嫌になりますよ)
これも、小ぶりのロブスターを蒸して、レモン醤油で食べるのが一番おいしい。

結局、思うのは、SIMPLE IS BESTですよね。

日本醤油、お酢、レモン・ゆず・カラマンシー、しょうが、ニンニク、日本ワサビ、レフォール(西洋ワサビ)、白・黒胡椒、山椒、自然塩、+日本マヨネーズ、ゴマ マスタードこのあたりのコンビネーションで、おいしいステーキが食べれるかも。

今、日本では紅白が終わりかけて、行く年来る年かな。

(1時間)45分早いですが、明けましておめでとう。


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