お祭り騒ぎに騙されるな

日本の友人たちがここ1週間ほどボジョレーワインの写真をフェイスブックにアップしている。酒輸入業者の知人の話だと今年のボジョレーは中々の出来らしく、顧客からの評判も上々との事である。このお祭り騒ぎで大儲けだね!とメッセージを送ると、知人はニコニコマークで返答してきた。

ボジョレー解禁イベントは日本では1970年代に始まったらしいが、筆者らの世代だと何と言ってもビッグコミック・スピリッツという漫画雑誌に掲載されていた見栄講座であろう。確か1981〜82年頃だと思うが、ミーハーな若造に絶大な人気を誇ったこの漫画の「フランス料理店で恥を書かないためにどう振る舞えば良いか?」という回でボジョレーが登場するのだ。

1本ウン万円のワインなど頼むのではなく、クリスマス前にフランス料理店を訪れて「さあ今年の新酒を飲もうよ」とボジョレーをオーダーすべし、さすれば如何にもフランス通に見えるし、大事な懐も痛まない・・と書いてあっただ。それで大学生の筆者も女性からディナーをねだられても多忙を理由に11月下旬まで引き延ばすようにしていたのだ。

一丁前にブレザーなど着込んでレストランに現れ「今年のボジョレーは外しだな」とか「渋みが強いね」などと通ぶった事をウエイターに言って女性陣の尊敬の眼差しを集めていたが(の様に思えた)、実は筆者は万年金欠のアルバイト学生であり、さらに生まれつきブドウが嫌いなので、どんな高級ワインであろうとも味などちっとも判らないのである





しかし数年後に働いた会社では解禁日に全員でワインパーティーを開くような風土があったし、それに新酒を飲むのはおめでたい事だからと合コンの口実にも使えたので、ワイン嫌いの筆者もボジョレーは渋々飲んでいたのだが、今から約20年前フランスを訪れた際にこのイベントが如何に間の抜けたものか気付いたのだ。

出張で訪れたのはフランス東部アルザス地方にあるミュールーズという町で、ここは正確にはボジョレーの取れるローヌ県から300キロほど離れているが、ここもフランス屈指のワイン産地なのである。訪れたのはちょうど11月末だった事もあり目抜き通りにはボードに「ボジョレーヌーヴォーあります」と掲げているカフェが数多くあった。

それで折角だから飲もうじゃないか!とカフェに入りボトル一本を頼んだところ、同僚がこのボジョレーは実に美味いねえ・・と言い出した。そりゃそうだよ地元だから!とか、防腐剤が入ってないんだろうな・・と褒め称える同僚。実は筆者は味が濃い薄いくらいしか判らないのだが、当たり障りの無いよう話を合わせることにしたのだ。

さてお勘定を頼んだ際に「いやあ、このボジョレーは実に美味かったよ」と言ったらギャルソンは何故だか怪訝な顔をする。しかし友人が酔った勢いでワイン用語を駆使して話し始めると、このギャルソンは「アンタらなあ、今度一本空けるなら少なくとも他の普通の(オーディナリー)ワインを飲んだらどうだ?」と言ったのだ。





唖然とする筆者と同僚。このギャルソンの態度よりも言っている内容に驚いたのだ。こんな美味い(と友人が言ってる)ワインが普通以下だと・・。そしてギャルソンが持ってきた紙切れには当時のフランで1000円くらいの値段が書いてあるのにビックリしてしまった。パリと違ってこういうワイン産地では評価の低いワインは店で飲んでもべらぼうに安いのだ。

そしてホテルへの帰り道にヨーロッパセンターというミュールーズ一番のビルにあるワインショップに赴くと、つい先ほどまで筆者らが飲んでいたボジョレーワインのボトルが積んであるのが見えた。そしてそこには紙で大特価らしき文字と日本円で300円程度の数字が書かれていたのには面食らってしまった。

そう、日本のボジョレー解禁イベントとは、2~3年熟成させても売れそうにない出来損ないワインを買ってきて原価の十倍以上の値札を付け、ワインに無知な東洋の猿に有り難がって飲ませる仕組みであったのだ。筆者は愚かにもそれに気付かず、女性陣にピント外れなウンチクを語っていたことを思い出して赤面してしまった。

「ついにボジョレーを積んだ飛行機が到着しました。あっ!世界で一番早くボジョレーを飲む人たちが会場へと向かっています」と読み上げるニュースキャスター。あんたらなあ、この飛行機に積んであるのは間引きされた下等酒で、それにあんたらはワイン原価より航空輸送費の方に高い金を払ってるんだよ。






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毎年、「今年のボージョレ・ヌーボーは...」って言うテンプレ聞くたび笑ってしまう。何しろ、毎年出来が良いらしいから...。でも、もう消費者はとっくの昔に気がついてんの、だからもう踊らないのさ。いい加減に目を覚ませよ、マスコミ。っつうても、販促の片棒担いでんだから無理じゃろねえ。だから、マスコミ離れが進むんだぜ。

 

今年の風邪はたちが悪いというのと同じですね。

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