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僕らはみんな生きている(3)

さて昨日までの2話は実はどの会社でもある話である。筆者がまだ若手の頃に大学の同級生たちと一杯やっていれば、半導体や超電導モーターの最新技術が旧ソ連や中国、韓国へと漏れているなんて話はよく聞いたものである。密かにフロッピーディスクに保存され持ち出される図面や提携先を通じた技術流出など、当時の日本企業の無防備さに付け込んだ産業スパイの浸透というのは頻繁に起こっていて、「研究所の○○っていう男が怪しい」なんて噂はどの会社にもあったのだ。

しかし大滝氏の場合は「やはりあいつはスパイだったのでは?」との疑念を深めるような出来事が後年もう一度あったのである。結局役員には昇格せず通常の定年よりも少しばかり早く退職した大滝氏はなんと日本人の退職者をリクルートして中国企業に送り込む仕事を始めたのである。しかも彼の集めた人間たちは少しばかり毛色が違っていたのだ。

これは90年代にわりと話題になっていたからご記憶の方も多いと思うが、モノづくりの現場が中国に集約されるに従って日本の金型技術者などの職人たちを中国企業がかき集めていたのである。しかもこの人数があまりに膨大であったために日本の伝統的な強みである現場の技術が一気に中国へと流出してしまう事態となっていたのだ。





筆者の取引先であった香港・中国の工場にも月給4万元(当時40万円)くらいで雇われた初老の日本人をたくさん見かけたが、彼らは「自分の技能を誰かに後世に残したい」とか「朽ち果てる前に自分が世間の役に立ったことを感じたいんだ」と自分の存在意義を訴えている木の良い爺さんばかりだった。

しかし大滝氏が送り込んだ一団はこういったブルーカラーではなく、名門国立大の修士課程を持って一流企業に入社し、長年開発現場を仕切って来たエリート技術者ばかりであった。業種は言いたくないので仮にスマホ業界に置き換えるが、アップル本社や基幹部品を供給するTDKと日東電工、村田製作所といった素材メーカーのOBたちだと思っていただいてよい。しかも彼らは民間企業ではなく北京にある研究所へと送り込まれていた。

会社の先輩で大滝氏の部下でもあったH氏は研究所には入らず中国・深センで自分の設計事務所を営んでいた方だが、開発委託先としてこの研究所に一時期出入りしていたので、筆者も色々と裏話を聞くことが出来たのだが、ここはアメリカの大学の様に中国全土の先端企業と産学協同プログラムを実施し、顧客の工場に入り込んで品質工場や製品開発まで行う巨大なコンサルタント企業であった。





「俺はなぁ、大滝氏はやっぱり情報を流してたんだと思うよ」と呟いたH氏。筆者も昔は半信半疑だったが、北京の研究所の話を聞いた時には間違いなくクロだと思うようになっていた。しかし地元の中産階級の出身で質素な生活を好む大滝氏が金で転ぶとはとても思えず、いったい彼を背任行為へと突き動かしていたものは何なのか?はさっぱり分からないんだよ・・とH氏は付け加えた。

東ドイツ以来の腐れ縁が続いて脅迫されていたのか、それとも悪意ある噂通り東ドイツ人の女との間に子供でも出来ていたのか、もしくは裏切ることに快感を覚える人格異常者なのかもしれないし、もしくは90年代に中国に渡った老職人たちの様に「自分の技術を誰かに伝承したい」という世間知らずだが純粋な心の叫びだったのかもしれない。

さて大滝氏はすでに高齢であり、H氏が腎臓の病気で帰国してしまった今では研究所の近況を聞くことは出来ないが、数多くの特別な技術が大滝氏を通じて中国に流れたことは間違いなさそうだ。いったい彼は欲しいものを手に入れられたのだろうか?、いや実際はそうならなかったのではないか・・、大滝氏について考える時にいつもそう思ってしまう。





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まあ、長いようで、短い人生だから、というか、そのような運命だったのかも。

昔、アメリカの国防省のデーターシステムに、跡を残さず侵入した、松下電器系の研究所の、若いハッカーお宅が、数ヵ月後、アメリカ大使館から迎えられ、震えていた彼に言ったのは、VIP待遇での家族ぐるみのアメリカ移住。

そのアメリカの国防研究所は、世界中から集められたハッカーたちが、公私とも最高の環境と待遇の元で、技術を磨いていた。

本当のような嘘の話か、嘘のような本当の話か(笑)

リバースエンジニアリング + クリーンルーム  の世界。
ある意味では、スパイ大合戦ですよね。

 

老テクエンジニアリング世界で生きてますのでハイテクノ世界無縁?ですが体で覚えたエンジニアリング・マネージメント能力は長く続けられます。
料理人・飲食業修行もない比国の日本食屋が良い例だ思いますが。頑張れ比移住邦人。。。まともな邦人は比に移住しないでしょう。

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