カトリックの骨とアメリカの肉

香港に出稼ぎ家政婦として20年近く働いているノエミーとワンチャイの中華料理店で夕食を食べている時に会話が彼女の雇い主であるイギリス人一家の娘の教育方法になった。

ノエミーの雇い主は夫も妻もオックスフォード出の弁護士で共に50代、香港では大手企業の顧問弁護士を何社も引き受けていて家賃120万円の超高級マンションに住む超エリートである。なお夫は40歳まで香港駐留の英国陸軍中佐だったと言うから、なんと無く謹厳なお茶の間が眼に浮かぶ。

この夫婦にはずいぶん歳をとってから生まれた15歳の娘がいるのだが、ノエミーの話によると娘は低俗なテレビを見たり、ゲームをしたりする事は禁じられていて、さらに買い食いや外食は一切ダメ、服装も大変地味なモノしか着させて貰えないというのである。

なんですって!それじゃ刑務所と同じじゃないの!と怒り出す女房。女房は子供達は自由闊達に育てるべきだ!という考えだからイギリス人夫妻の子育て方針とは真逆である。それでノエミーの話にいちいち噛みつくようになった。

しかし長年イギリス人の富裕層の家政婦を務めてきたノエミーは「イギリスのミドルクラスはどこもそういうモノなのよ」と言い出したため(どうやら厳格教育派のようだ)、なんと二人はお互い子供も居ないのに言い争いになってしまったのだ。



ちょっと待て!と仲裁に入る筆者。しかし女房は「その娘はいずれ反乱を起こすわよ!」と言い張るが、ノエミーは「いや!彼女はカゴの中に入る事を心地良く感じ始めるわよ!」と言うからラチが明かない。

はっきり言ってこの勝負はノエミーに軍配が上がる。だいいちノエミーはそういう教育方針が好きか嫌いかを議論している訳では無いし、そもそも女房はイギリス中産階級のピューリタン的な価値観というのを全く理解していないからだ。

イギリスのパブリックスクールの本なり映画を観れば、彼らが幼い時分から大変自分に厳しくて禁欲的な作法を仕込まれる事が分かるが、これは彼らがエリートとして将来社会的な責任を果たすための一種の通過点なのだ。

筆者の知人にもケンブリッジ出の御仁がいて、彼は少年時代の学校教育は窮屈で窮屈で仕方無いと言っていたが、若くして広告会社のお偉いさんポストとごく一部の人間だけが入会を許される名誉あるコミュニティの一席をショートカットで獲得し、見た目にも案外楽しそうにやっていたから、少年時代の苦行は後に巨大な配当となって戻ってくるのだろう。

しかしそう説明しても女房はアメリカ型の自由闊達教育が良いと言って聞かない(多分にハリウッドの浅はかな青春映画の影響を受けているようだ)。それで筆者も少し頭にきて「お前のイメージするアメリカ式教育には重大な欠陥がある!」と言ってやった。



アメリカはプロテスタントという社会貢献精神に満ちた宗教が国民の精神的骨格になっているから、子供を勝手にさせすぎる脂肪たっぷりの教育を施しても頑丈な骨格のおかげで国の方は何とか立っていられるのである。

しかし厳格な教育を受けないイギリスの下層階級や、プロテスタントの献身性を能力的に持ち合わせないアメリカのホワイトトラッシュを見てみれば、自立や自由という耳には心地良いけれども薄っぺらい教育が無責任な国民を生み出している事とは明らかだ。

と・・筆者がここまで言うと、側にいたノエミーがその通りだ!と言い出した上に、アメリカ式の脂肪たっぷりの駄目な教育に、骨格の方もプロテスタントみたいな立派じゃない国があるわよ!と言い出した。

そんなの・・言わなくってもフィリピンだって分かるよ。教会行って懺悔すれば許される超ゆるゆるのカトリックの骨格と、10代半ばで平気で妊娠しても個人を尊重する教育。骨格はグズグズで肉もブヨブヨだから自力で立つことが出来ない国家。自分の財布を膨らませることしか関心の無いリーダーたちが溢れた国。

さてここまでは良かったのだが、だからアタシはキングダム・オブ・ジーザスクライスト教団に転向したのよ!といって妹のグレースと一緒にこの教団の教義を話そうとするノエミー。いや・・やっぱ友人との会話で政治や宗教の話はするもんじゃないな・・。それで会話を最近のフィリピンの芸能ゴシップに切り替えた。




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アメリカ式 

アメリカの青春映画が自由を謳歌しているように見えるのは親の支配下では目茶苦茶厳しいので、自立したらその反動でのびのびするからでしょう。親にしても子供の早い自立はしてやったりですわ。子供時代の厳格な教育は自立後も道を間違えないですね。酒の場では政治、宗教の話しません。特にヒリピンでは。エライ目に会います。

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