一見何気ないけど本当は恐ろしい話

2013/09/25 20:07:57 | 日記 | コメント:2件

テレビ番組でフィリピン最大のカルデラ湖であるタール火口湖を紹介していた。この湖は筆者も今年2月に訪問してその奇抜な光景に感動したフィリピン屈指の観光名所である。番組の中で火口湖の調査をしている科学者が登場してきて、地底のマグマから湖水に溶け込んだ二酸化炭素の量がここ数年すごいスピードで増加しており湖水の下半分は炭酸水のようになっていると言う。炭酸水は比重が水より重いため今のところは非炭酸性の湖水がフタの役割をしているが(コップの下半分がコーラ、上半分が水と考えればよい)、いずれどこかで炭酸水が一気に吹き出る日がやって来るらしい。レポーターの女は「ワーオ!まるでシャンペンの栓を抜いたみたいですね」と言って学者と一緒に大笑いしていたが、筆者はふと30年近く前の自然災害を思い出し、そして凍り付いてしまった。
     taal lake

1986年アフリカ・カメルーンのニオス湖という火口湖付近で1800人が死亡し村が全滅という自然災害があった。まるで中性子爆弾が落ちた跡を見ているように人と家畜の死体が転がっている映像が全世界に放映されたからご記憶の方も多いのではないだろうか。この災害は最初は硫黄成分の毒ガスが原因と言われていたが、科学者が調べていくにつれ火山湖の底に押し込められていた炭酸水が原因不明の湖水爆発によって大気中に吹き出し(爆発の後は二酸化炭素が抜けたため水位が1メートル下がったという)、炭酸水から分離した二酸化炭素が火口から麓の村へ空気を押しのけるようにゆっくり流れていき(二酸化炭素は空気より重いため)数キロメートル先の窪地にあった村を直撃したことが分かった。そして酸素が無いため村人はもがき苦しんで全員窒息死したのである。科学者の分析では1立方キロメートルほどの二酸化炭素が村をすっぽり覆ったというから村人は走って逃げることも出来なかったらしい。
     killerlakes.jpg

でも火口湖なら日本にいくつもあるけど大災害は起こってないじゃないか!と思うかもしれないが、温帯以北の地域にある火口湖では二酸化炭素は溜まりこまないのだ。どういうことかというと、季節が変わったり明け方などに大気の気温が下がると当然湖水表面の水温も下がるので、水面と湖底の部分との水温が逆転し水が上下に循環して掻き混ぜられる状態になるからである。つまり炭酸水に含まれる二酸化炭素は日常的に泡となって抜けているのだ。一方熱帯にある火口湖は1年を通じて水温が一定しているため湖水の上下循環は起こることがなく、シャンパンの栓を開けたかにように二酸化炭素が一気に噴き出すまで、何十年何百年にもわたって湖底に溜まり続けるのである。
     lakenyos.gif

地図で見てみるとカメルーンのニオス湖とタール火口湖はだいたい同じような大きさであった。仮にタール湖がニオス湖と同じような湖水爆発を起こし1立方キロメートルもの二酸化炭素が噴き出した場合は(二酸化炭素は重いから、高さ10メートル、面積100平方キロメートルくらいを覆ってしまうと考えればよい)、6000人の島民とそれより多そうな観光客はどう見ても一人も助かりそうにない。それどころか周辺湖を越えて対岸のサン・ニコラスあたりまで二酸化炭素で覆われてしまえば死者10万人くらい到達するかもしれない。ちなみに大気中の二酸化炭素が3~5%まで上昇すれば精神錯乱と呼吸困難が始まり、10%だと1分以内に意識喪失となって死んでしまうようだから、1立方キロもの二酸化炭素が持つ殺傷力は中性子爆弾のようにすざまじいモノがある。   
     pumps.jpg

もちろん科学者たちも今まで手をこまねいていたわけではない。フランスの援助でパイプをニオス湖底に通して湖底に溜まった二酸化炭素を常時ガス抜き出来るようにするなど色々手を尽くしてきたのだ。しかし湖底のマグマから吹き出る二酸化炭素の量が半端じゃないため徒労に終わったようである。さらにニオス湖は諸々手を打ったにもかかわらず1986年と同じような湖水爆発を近々起こす可能性が高まっているらしい。大自然相手では人間がいくら手を尽くしても無駄ということのようだ。さてテレビニュースに出ていたフィリピンの科学者であるが、筆者の目にはあんまり深刻そうには見えなかったのだが、タール火口湖の二酸化炭素の絶対量がニオス湖とは比べられないくらい少ないのか、それとも「フランス政府が頑張っても無駄だったんだから悩むのは止めよう」とフィリピン流の楽天的な現実逃避を選んだのか・・・。いずれにせよ窒息死は嫌なので筆者はしばらくタール湖には近づかないことにした。
     CO220(all20data)_40.jpg

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コメント

2013/09/26(木) 22:46:49 | URL | ken2 #-
 マジ?

2014/02/10(月) 22:13:39 | URL | hanep #-
視点がおもしろい記事で、最後まで一気に読んでしまいました。本記事は自然の驚異についてですが、今度はマニラの大気汚染についても是非教えてください!

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