不思議なインド人ビジネス(3)

番頭は「INDIGIは第1次代理店に5%のマージンと6か月の支払い期限を与えている」と言ったのだ。これって筆者のいた業界では常識外れ、それも大ハズレの取引条件である。ふつう卸のマージンは最低でも25%は確保しているのに何と5%とは異常なほど少なく、一方支払い条件の方は45日が普通なのに6か月とべらぼうに長いのだ。

もちろん日米欧など普通のサプライチェーンではメーカーと消費者の間に登場するのは代理店と小売店の2名(地方や外国輸出ならもう1名追加で3名)だけだが、インド人の場合は7人も登場するから、なんでそんなに人が必要なのか?の理由はさておきマージンを極端に下げざるを得ないのは頭では理解できる。しかしそれでも5%では常識的に考えて才腕がとれているとは思えない・・・。

デジカメがの小売価格を100%とした場合、サプライチェーンに参加したそれぞれの取り分がどうなるのか簡略化したのが下の図である。上の段がインド人の場合で、下の段が日本メーカーの場合であるが、見て分かる通りインド人のサプライチェーンでは小売店のマージンが25%と随分少なく、それに中間にいる人間がやたらと多い割には利幅が極端に少なく、そしてメーカー(INDIGI)の取り分は逆に日本メーカーより多いのだ。

つまりINDIGIは自分の会社はガッポリ設けてはいるが、卸や小売は労多くして益少なしを地で行くような搾取そのもののサプライチェーンを作っていることになる(もちろん取扱高が増えて粗利が固定費を上回っているのだろうが・・)。一体なんで卸たちはこんな悪辣なサプライチェーンから逃げないのか?と不思議に思うだろうが、INDIG社にはもう一つのとっておきの武器、つまり支払い猶予期間の長さで卸たちの不平を抑えているようだ。

INDIGIと1次卸の支払い期限はモノの引き渡しから6か月後である。1次卸はこの商品を2次卸に5か月の支払期限で引き渡せば原理上キャッシュフローの心配はいらなくなる。そして2次卸は3次卸に4か月、その下には3か月という具合に段々と短くしていけば、サプライチェーンにいる卸たちは原理上胴元であるINDIGIの支払い猶予の傘の下にいるので資金繰りに苦しまなくて済むというメリットがあるのだ。





さらに全く手持ち資金が無い人間でも卸の下の方に参加すれば生活費を稼ぐ事くらいは出来るのという新規参入者への利便性もある。そして顧客を拡大できる奴は6次卸から5次、4次卸と階級が上がっていくルールになっていて、3次卸くらいに上がれるとローンでコンドミニアムを買う位にはなれるらしい。と・・ここまでの説明で「あれっ?どこかで聞いたような事がある話だぞ・・」と思われた方もいるのではないか?

そう・・、これはマルチ商法と似ているのである。サプライチェーンに参加した人間が持っている親子関係や友人関係、さらにはクラスメートから近所の人との人間関係まで全て金に換えてしまう寄食寄生型ビジネスモデルである。どうりでINDIGIのサプライチェーンがやたらと多くの人間を巻き込むわけで、人間が多ければ多いほど人間関係の糸の数が増えていき、INDIGIの販路が広がるからだったのだ。

つまりINDIGIの企業の力とはオペレーション機能の優越さ・・というよりも、INDIGIのファイナンス能力につられた貧しいインド人達が自分の持つ人間関係をべらぼうに安い値段で差し出していることにあるのだ。もちろん商盛期や景気変動によってキャッシュフローが回らなくなったり、顧客の取り合いで卸同士がいがみ合うなどの事態も起こるらしいが、それをモノとキャッシュのバルブを締め上げることで恫喝し、言うことを聞かせるのがINDIGI本社の仕事なのだそうだ。

全ての見学が終わった後の夕食の席で「どうだね?わが社のサプライチェーンは?」と聞いてくるINDIGIのオーナー。流石に会ったばかりの顧客を批判するのは嫌だし、何より初日番頭に「アナタの会社は構造的な問題を抱えている」と言ってしまったから、ここは失礼を詫びるしかない。それで自分が不勉強だったこと、そして目から鱗の気分で有る事・・などを言うとオーナーは実に嬉しそうに笑った。支配者の笑みとはこういうモノなのか・・と思わせるものだった。

「多くの人たちがINDIGIを支えているのだよ」と笑うオーナー。しかし筆者には最も最下等に位置づけられた貧しい人々が棄教もせずに自分たちの教えを守り続けるヒンズー教の不条理さを見たように思えてしまい、このオーナーとは結局最後まで打ち解けることは無かった。なおINDIGIは今でも何千人ものインド人の血を吸い上げながら中東最大のブランドとして繁殖し続けている。






にほんブログ村 海外生活ブログ フィリピン情報へ
にほんブログ村

スポンサーサイト

コメント投稿

  • URL
  • コメント
  • パスワード
  •  管理者にだけ表示

商売のやり方の違い 

一連の記事を拝読してますが世界には日本商人>中国商法>印商法>ユダヤ・アラブ商法>中国商法>日本人商法と言う輪廻のようななのは事があります。
それぞれの商売/商売経験から言いえて妙だと思いますが。。。

 

中東の小さな国(ガスでお金持ちの)に赴任中なので、スーパーに行って"INDIGI"に相当するブランドを探してみたのですが、見つけられませんでした。本当のブランド名の頭のアルファベットだけでも教えていただけないでしょうか?例えば、"Axxx"と言う感じで…気になってしょうがありません。

Re: タイトルなし 

それは秘密です。笑
それにデジカメというのは例えで、実際はもっと小さい商品ですよ。
ちなみにアルファベットはOで始まります。

 

ありがとうございます。また、スーパーに行って確認してみます。デジカメより小さくて電子部品が使われているとなると…時計ということなのかなー?ヒントを戴いたので、あとは自力で探索してみます。

トラックバック

http://dadesigna.blog.fc2.com/tb.php/504-105ed1ca