平和なニュースを願うフィリピンの女たち

ミンダナオの情勢がさらに緊迫してきた。ダバオで爆弾が2発炸裂、フィリピン軍がザンボアンガの反政府軍占拠地を空爆、反政府軍が警察署長を含む4人を拉致、とバイオレンス度を増してきた。次はカトリック教会に爆弾をしかけるんじゃないか?いや!マニラの中心部に違いない!もっと空爆して反政府軍を徹底的に叩き潰すべきだ!女房の従弟たちは小難しい顔をしてタカ派的な論表を加えているが、どうもこの連中はルール無し・時間無制限の異種格闘技戦を見るように内心では楽しんでいるのではないかと思えてきた。男と言うのは元々が戦争好きだし、血沸き肉躍るストーリー展開に心を躍らせる生き物である。
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一方ご婦人たちはザンボアンガのニュースが流れると顔をしかめる。野蛮だわ!子供が殺されたらどうするのよ!早く停戦合意しないと・・とハト派の意見が支配的だし、それ以前にこういったバイオレンス系を見ること自体が嫌いで、早くポーク・バレルのニュースに画面が切り替わらないかと思っている。そう。ポーク・バレル事件の方は今週に入ってから大物議員5人と政治家秘書、官僚、架空のNGO団体責任者の名前がぞろぞろ出てくるなど急展開していて、現時点では48人(闇のフィクサーであるジャネット・ナポレスを含む)が横領・汚職・不正の罪で起訴される見込みなのだ。フィリピンのご婦人たちは毎日市場で売り子と1ペソの攻防を繰り広げているだけあって、「こんな大金を着服するなんて絶対許せない!」と嫉妬の念もだいぶ入り混じっているので大変ご立腹なのである。
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ところが従妹のミレットの話では、どうもご婦人方はポーク・バレルの事件について怒りは覚えるが、事件自体に娯楽性が無いため井戸端会議では話が盛り上がらないという。どういう事か?と聞いてみると、男と女の臭いが全くしないらしい。中心人物のジャネット・ナポレスなる人物はかなりのオバサンであり、その容姿と体形を見る限り汚職議員たちと金以外の関係があったとは想像しにくいというのだ。この点イメルダ・マルコスはその妖艶な雰囲気から年をとっても妄想話好きなご婦人たちの話題のタネだったらしい(男たちも同じだと思うけど・・)。金の大きさだけではなくて事件にもっと男女の愛憎とか淫靡な迷宮が垣間見えないとご婦人たちは楽しめないようである。
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この話を聞いて15年前の出来事を思い出した。ビル・クリントンとモニカ・ルインスキーのスキャンダルだ。筆者は当時香港で下っ端営業マンをしていたのだが、会社でもお客のオフィスでも朝になると男も女小「クリントンは口が大きな女が好きらしいよ」「ほお・・それは一体どうしてだね?と言うような話をしたり顔で討論していたし、筆者も「クリントンは葉巻をモニカのどこに入れたんだろうねぇ・・?」と女性社員に尋ねると「えー!いやだー!」とか言いながらも実に嬉しそうな表情で積極的に話に乗ってきた(筆者の職場の香港人女性は全員この手の話に目が無かった)。実際1998年は性別・人種・宗教・教育程度を越えて全世界の人たちがひとつになって一年中エロ話を楽しんでいたのだ。それにあの時期は冷戦が終結して世界は平和だったし、ダウ・ジョーンズはうなぎ上りに上昇、筆者の会社も注文が入りすぎてしまい増産し続けても常時モノ不足に陥るような非常に景気の良い時代でもあった(日本国内は除く)。そう!逆説的で乱暴な意見だが世界が平和で豊かだとニュースはスキャンダルで染まるのである。
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ところがクリントンの次にジョージ・ブッシュが登場してから、同時多発テロ、アフガニスタン攻撃、イラク戦争と全世界のニュースはバイオレンス一色になってしまった。このブッシュには艶っぽい話は一つもなく、聞くのは元アルコール中毒とかキリスト教の熱狂的な信者といった耳を覆いたくなるような話ばかり。それにドルを刷りすぎたせいで異常なバブルが発生、筆者は同期より早く出世したのにインフレで生活は毎年厳しくなってしまうし、最後にはリーマン・ショックが起こって筆者の顧客がいくつか飛んでしまい債権回収に四苦八苦させられた記憶がある。あの時には「あー!クリントンの時代は良かった」としみじみ思ったものだ。誰だって毎日戦争のニュースを観させられる時代よりも、「モニカのドレスに着いたシミの正体」について朝からあれこれ淫靡な想像をめぐらす時代の方が世界は平和で豊かだと思うはずである。
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ご婦人たちが世界は平和だと感じる時代のニュースというのはこういうものだろう。テレビをつけるとアメリカの大統領とカナダ首相夫人が不倫の上に妊娠していることが発覚、イギリスの王子とロシア人のモデルの駆け落ちと隠し子騒動、韓国女性大統領がホストに入れあげた挙句に略奪婚、中国国家主席と熟女政治局員のマル秘ビデオが流出というような、「あの二人できちゃったみたいなの・・・」「あの二人はもう体が離れられないんだって・・」というような愛憎劇ドロドロのニュースばかり流れた後、ご婦人たちの心を鷲掴みにするルイ・ヴィトンやカルチェの新作ニュース、でまた肉欲ヌメヌメなニュースが始まって、その後はハンサムなフランス人モデルの特集(ほとんど裸に近い恰好で現れる)。だけど選挙や株価のニュースはちっとも出てこない。モスクワテレビやアルジャジーラ、北京放送までもがこういう報道スタイルに変わったら、世界は本当に平和になったと言えるのだろう。ただし筆者はもっと毒々しい世界の方が住みやすいんだけれどね・・。
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