思い切り飛べるフィリピン産のジン

パッシグに住むエスター叔母さんから夕食に誘われたので日本の焼酎いいちこを持って出かけることにした。普段は必ずと言ってよいほどジョニーウォーカーかシーバスリーガルを手土産にするのだが、義弟フランシスは運転する日は絶対に酒は飲まないので、この日酒を飲むのは筆者とエスター叔母の旦那であるダニー叔父だけである。このダニー叔父は無類のホワイトリカー好きなので、物は試しと先日日本食材店で買った焼酎を飲むことにしたのだ。

このダニー叔父は数年前に会社を退職してからは毎日朝からジンを引っかける生活をしているらしい。それで早速「これは日本のジンですよ(正確には違うが)」と言って焼酎ボトルを見せると、満面の笑みを浮かべて挨拶も早々にグラスと氷を用意し始めた。まだ義弟や義妹は車から出てきてもないってのに・・と奥方や娘の冷たい視線をよそにグラスに焼酎をドボドボと注ぎ込む。そして「えっ!」と言う間もないくらい一気にグラスを空けた。

「味はいかがでしょうか?」と聞いてみたが、グッドとかOKといった味に関して評論的なことは一言も言わない。しかし駆け付け三杯の言葉通りに3回注いで一気に飲み干したからおそらく不満は無いのだろう。筆者の亡くなった祖父もそうだったが重いアルコール依存症の人間は酒が美味いか不味いかには興味はなく、単に摂取しやすいかどうかに軸足が移っていくから、おそらくダニー叔父にとって焼酎いいちこは評価が高いのではないだろうか。

そこへ突然と予想外の客(従兄弟ジェン)が現れた。なんでも筆者ら一行がエスター叔母の家にいると聞いたので近所に住むジェン一家も急遽参加することにしたのだそうだ。さてこのジェン、やあやあ!と嬉しそうに挨拶を交わした後、テーブルの上にある焼酎いいちこをチラリと見て「これは何だ?」と聞くので、奴のグラスにドボドボ注ぎながら「日本のジンだよ」と言うと、明らかに「こんなロクでもない酒持ってきやがって」という失望の表情が顔に浮かんだ。

ダニー叔父によれば、フィリピンでジンを飲むのは山岳部の農民や漁師などの低教養かつ低所得の男たちで、自分は彼らとは格が違うが(あくまで自己申告)ジンやウォッカの味が好きなのだ・・とフィリピンにおける階級と酒の相関関係について説明する。要するにジンの愛好者はコニャックやスコッチを飲む階層よりも下である事は言うに及ばず、プンタドールやエンペラドール、アルフォンソ2世を飲むフィリピン人よりも下の最下層民ということらしい





なるほどジェンが舌打ちしたのはそういう意味か・・。たしかにコイツは普段ジャックダニエルを愛飲する男である。しかし日本でも昔は焼酎は肉体労働者のための酒だったが、最近は品質レベルも格段に上がりホワイトカラーにも愛用されるようになったのだ!と説明したが、これはまるで理解してもらえない・・。イギリスのジンやロシアのウォッカ同様に、フィリピンでもジンは下層民の飲み物という固定観念がしみついてしまっている様である。

しかし従兄弟ジェンも失望感いっぱいの表情とは裏腹に何度も焼酎をグラスに注いではグビグビあおっているから、案外と焼酎いいちこは気に入ったのではないかと思う(一応レモンの切れ端を入れていたが)。それにアルコールが25度とスコッチよりも低いのに気が付くや「ダニー叔父は健康のため日本の焼酎に切り替えるべきだ」と言い出す。当たり前だ!いいちこは下町のナポレオンと呼ばれるほど評価も高いんだぞ!と言おうとしたが、多分通じないだろうから黙っていることにした。

さて焼酎いいちこにすっかり気を良くしたダニー叔父が「フィリピンのジンを飲んだことあるか?」と言い出した。ギルビースなら飲んだことあるけど・・と答えると、あんなジンはダメだ!俺が飲んでるジンを持ってくるよ・・と言って台所へとヨロヨロと歩いていく。「やめた方がいいよ・・」と従兄弟ジェンは言うが、乗りかかった船だし、こっちも酔っぱらってるから今更飲みませんとは言えない。そしてダニー叔父が放り投げた小さなボトルを見てみた。

ラベルにはGINEBRA S. MIGUELと書かれていて、350ミリリットルとの表記はあるが肝心のアルコール度数は見つからない。そしてメタル製のキャップをあけたところ、筆者が今まで飲んだゴードンやタンカレーとはまったく別種の強烈なアルコール臭が漂い始めた。昔読んだ昭和初期の小説に「灯油臭い焼酎」という記述がったが、現在この不名誉な枕詞はこのジンに冠すべきだな・・と何となく思った。

おい、やめとけよ・・というジェンの心配そうな顔を無視して、灯油臭いジンをグラスに半分近く注ぎ、念のためにレモンの切れ端を絞ったあと一気に咽喉へ流し込むことにした。とても味わえるような代物とは思えなかったからである。そしてグラスを口元に運び90度傾けるや・・

★△&ぎゃ@#=☆☆あЙ☭∑!!!

そのまま一気に遠くへと飛んでいった・・。
教訓 : やっぱりホワイトリカーは下層民の飲み物である。






にほんブログ村 海外生活ブログ フィリピン情報へ
にほんブログ村

スポンサーサイト

コメント投稿

  • URL
  • コメント
  • パスワード
  •  管理者にだけ表示

 

(写真の)ヘネーブラ、たまーに呑んでます。フィリピン流のショットグラスで呑むやり方ではなく、炭酸飲料でたっぷり割って飲むやり方で。


トラックバック

http://dadesigna.blog.fc2.com/tb.php/466-260cc2df