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木こりの末えい部長

2014/09/19 00:01:36 | 日記 | コメント:1件

大学サークルの同窓会でバカ騒ぎをしている最中に、隣に座っていたバンコク在住のFという後輩から「石田が来ないのは○○(筆者の事)さんのせいだよ!石田は木こりの末裔だって何回も言うから顔を出せないんだ!」と言われてしまった。石田・・ああ…その瞬間に筆者の記憶は30年近く前にタイムスリップし、目の前に田舎者丸出しのヒョロリとした石田くんの姿が浮かんだ。

石田くんは静岡県出身で、その朴訥とした雰囲気と純朴さから皆にかわれやすいタイプであり、筆者も石田君がバイトを探していると言うので、投薬実験や人工骨折、更には角膜や腎臓を売り払う闇バイトを紹介したりしたのだが(もちろん冗談である)、石田くんは全てを本気にしてしまい俺は東京は怖くてもういれないよ!と田舎に帰ってしまうような純朴な人柄だったのである。

その後も石田くんはみんなから麻雀で鴨にされたり、軽井沢で幽霊をみた現場に置き去りにされたり(主犯は筆者)と散々な目に合わされたが、もとより品の良い大学生のおふざけだから石田君もそこらへんは割り切って筆者らと付き合って来たのである。しかし大人しい石田君もついに我慢の限界を迎える時が来てしまった。それも全く予想外の形でである。

ある時サークル員達それぞれでお前たちの祖先は何をしていたのか?という話になり、うちは神社の神主だ、ウチは醤油屋だ、どうも百姓らしい、いや大工だと聞いたけど…、などと話していたのだが、石田くんは何故だかモジモジして祖先の職業をなかなか言おうとしない。それで日本人の9割は農業関連だから、静岡あたりじゃ茶でも摘んでたんだろうと助け舟を出したところ、石田くんは重い口を開けてキ・コ・・リ・・と呟いた。

えっ?何だって?と皆で聞き返すと、石田くんは顔を真っ赤にして木こり!木こりだよ!という。その瞬間その場にいた全員は一瞬黙った後に顔を見合わせて大笑いしてしまった。なお言っておくが別に木こりを差別しているのではなく、誰もいない山奥で黙々と木斧を叩きつけるイメージが、寡黙で背がひょろりと高い石田くんにドンピシャリと重なったからである。





俺は武士って言って欲しかったんだよ!。でもオヤジから木こりって聞いたときは凄いショックで・・と石田君は必死にとりなす様に言うが(今思えばどうしてとりなすのか変だった)、一度火がついた筆者らの笑いは止まらない。そして石田くんは双子だったからお前ら二人で黙々とトンカントンカン木を切り倒す光景が目に浮かぶよ!などと皆で笑っている中で、石田くんは何かに耐え忍ぶ様に顔を真っ赤にしていた。

それからも事あるごとに筆者は「おい!木こり!」「木こりツインズ!」などと石田くんに向かって呼び続けたが、どうも石田くんにとっては自分の祖先が木こりで有ることが堪らなく恥ずかしい様で、だんだんサークル部室に来る頻度が減る様になり、ついには筆者が現れるとあからさまに逃げる様になってしまったのである。そしてそのまま25年間も疎遠になってしまった。

さて石田は今何をしているのか?と石田くんと同学年のO君に聞くと、大メーカーで若くして部長に昇格し、今は大阪支店のお偉いさんになっていると言う。それに国内営業畑らしく毎週末は接待ゴルフで大忙しなのだそうだ。石田が部長…?とちょっと驚いたが、真面目な仕事ぶりが評価されて、会社では同期どころか同世代の昇格レースでトップを走っているらしい。

それに石田は早く結婚して、子供二人も大学生になってるんだよ!と散々遊び歩いたために今だに二人の子供が小学生という男が言う。なるほど…木こりの末裔だけあって黙々と仕事をこなし、人生設計も黙々とだが着実に一歩一歩歩んでいくんだ…。それに木こりだけあって口下手だけど実直な性格は顧客の信頼を勝ち得るのに役立っているのだろう。やはり何百年にわたる生業というのは子孫のDNAに刻み込まれるものである。

さて石田くん!。君は今頃豪快な木こりショットで300ヤードくらいかっ飛ばしている最中かも知れないが、一体なぜ君は自分の出自が木こりであることをそんなに恥じていたのか教えてくれないだろうか?。君が他の件で筆者を疎ましく思うのなら理解できるが、木こりの件が原因だというのはちょっと違うのではないかと思う?。それに木こりとして培われたDNAは君の人生を良い方向に導いているとしか思えないんだけどね。






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コメント

2014/09/19(金) 19:00:08 | URL | でぶ熊 #3hri4u1c
バンコク時代のアーミーのコースのゴルフ仇は陸軍中尉で飛距離、方向抜群。彼によると樹木の伐採の斧、野営の際の杭打ち込み、山間歩きで足腰が鍛えられたと。パットの集中力はすごかったです。射撃と同じなのでしょう。

専門外の仕事を頼む高校大学の後輩は祖父が多摩の出自で樵と思われるので嫌だと言ってましたが行ったら大きな屋敷、邸宅の旧家で驚きました。
記事のお仲間も似た育ちではないでしょうか。

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