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世界最高のスパゲティ

2014/09/15 01:18:33 | 昔話 | コメント:4件

大学時代の友人と麻雀を打つ前に腹ごしらえをしとこうと思い、昨日いつもの行きつけの店である新宿の紀伊国屋書店にあるシンジンという店に行った。せっかく日本に来たんだから、もっと格の高い店で豪勢なモノを食べても良かったが、時間があんまり無かった事と、それに何よりもこの店は筆者が小学校の頃から時々通っていたので、懐かしさも手伝って近所に来ると足を運んでしまうのである。

筆者の叔母は紀伊国屋書店の本店で長年働いていて、小学生の筆者は美味いものが食べたくなると西武新宿線に乗ってわざわざ新宿まで出て来て、昼休みの時間を見計らって受付に「庶務の梅田静子をお願いします」と伝えるのである。受付の女性の顔には「このガキまた来たわ!」という表情がありありと浮かんだが、それを無視して待っていると、そのうち社服を来た叔母がエレベーターから現れるという具合である。

1970年代前半の日本の外食産業はまだ未熟で、東京とは言え近郊にある住宅街にはロクなレストランが無かったから、筆者にとって美味いものにありつく唯一の手段は花の新宿でOLをしていた叔母に昼飯を奢ってもらう事だった。それで叔母の元に押しかけてはイタリア料理のカラカラや天ぷらのつな八に玉川寿司や、名前を忘れてしまった中華料理店の飲茶など世界の美食に舌鼓を打ったものである。





さて叔母はオシャレな人で、洋服や化粧品には大層な金を使う人だったから、給料日前には財布は随分と軽くなってしまった様で、そういうときに連れて行かれるのが勤務先の紀伊国屋ビルの地階にある2軒のスパゲティ屋であった。一軒が前述のジンジンで、もう一軒は十紀和(トキワ)という店である。両店は全席カウンター式の店で、料金も安めの立ち食い蕎麦に毛が生えたくらいの店であるが、筆者はこの十紀和のチキンソースというスパゲティがそれはもう美味くて美味くて仕方が無かったのだ。

そのスパゲティを口に含んだ瞬間に口いっぱいに広がる芳醇な鳥の旨味、そしてトマトソースの絶妙な酸っぱさと甘み。これらがハーモニーとなって筆者の味蕾を刺激して、ものの1分もしないうちにスパゲティ一皿を一気に平らげてしまうのである(書いてる最中に生唾が出てきた)。それで筆者は自分の小遣いを貰う様になってからは自分で十紀和に出向いてチキンソースを食べに行き、高校時代も歌舞伎町のディスコに踊りに行く前の腹ごしらえのため十紀和に通い続けたのである。

筆者はその後もミラノやニューヨークのイタリア料理の名店でスパゲティを食べたが、今だに十紀和のチキンソースを超える味にお目にかかったことが無い。もちろん幼児期の味覚体験というのは案外いい加減なもので、随分と舌が超えた現在の筆者が十紀和で食べれば評価は違ってくるのだろうが、残念な事に十紀和は筆者が大学に入る前に閉店してしまい、あの味は筆者の頭の中では人生ナンバーワンのスパゲティとしてフリーズパックされてしまったのだ。





さてもう一軒のジンジンの方はと言うと、筆者にとっては十紀和が満員のときに行く代替的な店であった。正確に言うと筆者は30分くらい待ってでも十紀和で食べたかったのだが、せっかちで昼休み時間が短い叔母は十紀和が満員だとスタスタと10メートル先にあるジンジンに入ってしまうのである。そしてジンジンで食べるスパゲティは筆者にとっては明らかに十紀和よりも劣る味がしたが、下手に叔母の機嫌を損ねて奢ってもらうチャンスを失いたく無いので文句も言えずに黙って食べていたのだ。

もうあれから40年以上時間が経ったが、絶品の味だった十紀和が潰れてジンジンは今でも営業しているというのは何とも皮肉である。ひょっとするとジンジンの方が人気があったのかもしれない。それで昨日もジンジンに入って人気メニューであるペスカトーレを頼んで見たが、まあ美味いことは美味いけど、ニューヨークのリトルイタリーやグリニッジ・ヴィレッジで食べまくったスパゲティに比べるとイマイチどころか今二、今三である事は言うまでもない。

そしてジンジンのスパゲティを食べるたびに思い出すのは、「オバさ〜ん!ぼく十紀和のチキンソース食べたい〜!」と内心で叫んでいるが、オバさんに一喝されると怖いので渋々とジンジンへ向かう小学校低学年の筆者の姿である。そしてジンジンのスパゲティを口に含んだ時に、うん!そうだ!、やっぱり十紀和のスパゲティは圧倒的に美味かった!、やっぱり俺の舌は間違って無かったのだ!という思いを一層強くするのである。






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コメント

十紀和について

2015/08/21(金) 10:23:27 | URL | pupio #-
どうせ出てこないだろうと思って、「十紀和」と検索してみたら、出てきたので、感激しています。「ジンジン」のほうは、大企業の食品会社のアンテナショップだったので、個人経営の店と違い、現在でも続いているのでしょう。いつも紀伊国屋に行くたびに思い出しています。私はあそこの鳥レバーを使ったスパゲッティ(シシリアンとかいいました)が大好物でした。だれかそのレシピを記憶しているかたはいらっしゃらないでしょうか。お店の子孫の方もいらっしゃるでしょう。何か思い出をお聞かせ願えれば幸いです。

Re: 十紀和について

2015/08/21(金) 13:39:23 | URL | ほにょ #-
シシリアン!ありましたねー。
チキンソースだけを食べていたので、いったいどんな味なのか・・と不思議に思っていました。
あと○○紫蘇スパゲティとか和風タイプもあったことを覚えています。

あの店で働いてた人がどこかで店をやっていてくれないでしょうかね?
もしそうなら札幌でも那覇でも食べに行くんですけれど。

わぁ、、

2019/03/21(木) 10:43:44 | URL | 名無しさん #-
懐かしくて検索したら、出てきました。十紀和

他でやっているなら?と思いましたが、閉めてしまったようで。

チキンソースやシシリアンが人気だったのは、覚えています。私はいつも、ミラネーズ?ミラネーゼ?でした。

頻繁に寄ったのは、72〜74年くらいです。高校生の私でも、紀伊国屋で本を買った帰りに寄ることができる値段でした。

ミラノ風、と言えば黄金色が特徴だそうですが、カツレツや卵で演出されていた記憶はありません。トマトやホワイトソースではなく、塩、チーズ、味付けで鶏肉が入っていたような、、、もう食べられないのが残念です。

Re: わぁ、、

2019/03/21(木) 11:51:41 | URL | ブログ主 #-
72年~74年と言うと小学校低学年の筆者が叔母に連れられて食べてた頃ですね。
ひょっとしたらカウンターの隣にいたかもしれませんよ笑
それにしてもあの味、今でも忘れられないくらいうまかったなあ・・

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