サディストの退役少将がついに逮捕

朝イミグレーションへと向かう車中で、運転していた従兄弟ジェンと女房が話し込んでいる会話のなかに「パルパラン」という単語が耳に聞こえて来た。おおっ!これは昨日テレビニュースに映っていた貧相な老人の名前ではないか!。義妹と従姉妹ミレットがこのニュースを見た後なにやら話し込んでいたので、こいつは一体誰なんだろう?と気になっていたのだが聞きそびれてしまったのだ。それでこれはちょうど良いチャンスだとばかりに、ジェンと女房の会話に割り込むことにした。

「ブラザー。パルパランはとんでもない悪党だよ!」と言って説明を始めるジェン。パルパランは共産ゲリラ狩りで名を馳せた元陸軍少将(メジャー・ジェネラル)で、その容赦無い残虐な仕打ちからNPA(新人民軍)に「屠殺人」と呼ばれるほど恐れられていた男なのだと言う。「この男が連隊長や師団長として赴任した地域では、疑わしきはまず殺してから調べれば良いというポリシーが適用されるんで、すぐに死体の山が築かれるんだよ」とジェンは顔をしかめながら言った。

「それだけじゃないのよ!フィリピン大学の女子学生2人を誘拐したり、拷問も手足の指をハンマーで潰してから腹を裂いて内蔵を取り出したり、ガソリンをかけて焼き殺したりするんですって」と女房が言い出した。これはずいぶん創作されてるな・・と思ったが、多少割り引いて考えても凄い話だ。これじゃスターリン時代のソ連か北朝鮮じゃないか!と言うと、ジェンは「その通りだよ。パルパランはまさしくサディストであり精神異常者なんだ!」と断定した。




さてイミグレ本部に到着して面接を待っていたのだが、いつまで経っても面接官が出勤して来ないため、暇に任せてパルパランについてネットで調べてみた。1950年生まれ、意外な事に陸軍士官学校ではなく私立大学で経営学の学士を修了したのち陸軍に入隊。そしてその後の経歴は軍事活動よりも治安維持の功績で彩られていて、ミンドロ、サマール、ヌエバエシハの部隊指揮官としてゲリラ掃討に容赦無い姿勢で臨んだことにより数々の勲章を授与されていた。

しかし任務に忠実なのか先天的なサディストなのかはハッキリしないが、治安活動に行き過ぎがあったのは確かなようで、女房が言ったとおり2006年にカダパンとエンペーノという女子学生を拉致して、以後2人とも行方不明になっているのは事実であり、そしてジェンの言った死体の山というのもあながち嘘とは言えないようなエピソードが幾つか書かれていた。このパルパランというのはフィリピン政府の忠実な猟犬であり、同時に共産ゲリラにとっては死刑執行人であったようである。

さてこの男は在職中から悪評が高く、フィリピンの人権団体から訴えられたりしていたのだが、なんとアロヨ前大統領が年次教書演説の中でパルパランを「国家の安全に大きく貢献した」と読み上げただけでなく、なんと2007年の総選挙で下院議員に立候補、結果は次点で落選したものの2009年の議員定員数増枠で下院議員に就任していたのである。しかし2011年に前述の女子大生拉致の容疑者として告発され、以後3年に渡りパルパランは逃亡する身になっていた。



イミグレーションからの帰り道、話題がまたパルパランの事になったので筆者も一夜漬けならぬ超浅漬けの知識で会話に入ったが、従兄弟ジェンや女房と話しているうちに、彼らの意見がパルパランが悪だ!こういう奴をのさばらしていた政府が悪い!という所で打ち止めになっていることに気がついた。確かにサディストの将軍が引き起こした罪は大きいが、それでもそれはちょっと違うんじゃ無いか?という事で車中で二人と揉めてしまった。

当たり前の話だが、躊躇なく引き金を引けるパルパランを制御するどころか寧ろ積極的に活用していた政治勢力があるのであり、パルパランは与えられた権限の中で己のサディスティックな趣味を満たしていただけである。旧ソ連にはヤゴーダやエジョフといった同じようなサディストがNKVD(内務人民委員部)長官として人類史上稀に見る非道の限りを尽くしていたが、彼らは上司スターリンに対して一つ一つお伺いを立てねばならぬ小役人の身であった。なのでたかが陸軍少将の師団長パルパランが自分の一存で虐殺行為を繰り返していたとは考えにくい。

筆者はフィリピンに居させて頂いているご身分なので滅多にフィリピンの悪口を言わないが、フィリピン特有の誰か悪者を作って後はシャンシャンというのは筆者が一番嫌いなパターンである。それで「フィリピンはアジアで最も民主的な国だとフィリピン人たちは胸を張っていうが、安易なポピュリズムと空理空論が蔓延した矛盾社会はこういったモンスターを影で活用しなければ体制維持が成り立たなくなるのだ!」とジェンと女房に説明したが、この二人にはちっとも理解して貰えなかった。筆者が言ってることって何か間違ってるかな?



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