死体の流れ着くリゾートホテル

女房の従兄弟にスプークという男がいて、こいつはニューワールドやヘリテージなど名だたる有名ホテルで腕を磨いて来た料理人だが、数年前にビサヤ地方の超有名なリゾートホテルで働いていたことがある。なんでもスプークの兄弟子に当たる人物がそのホテルの2番目だか3番目のシェフに就任した為、スプークもホテル住み込みの調理助手として兄弟子に呼ばれたのだそうだ。

ある日の朝、まだ夜明け前で辺りは真っ暗な時に、プライベートビーチの方から「キャーッ」ともの凄い叫び声が響き渡った。スプークら住み込み従業員はビーチのすぐ近くの従業員寮で生活していたので、この叫び声を耳にするや数人が慌てて寮を飛び出してビーチへと駆けつけた。

ものの数秒でビーチへと続く遊歩道に入ると向こうから白人の女性が走ってくる。「どうしたんですか!」「大丈夫ですか!」と声を掛ける男たち。しかしこの女性は大きな叫び声を上げた割りには意外に気丈で、ビーチの方向を指差して「あそこに死体があるのよ!」と言うやスプークら従業員たちを現場へと連れていったのだそうだ。





恐る恐るビーチへと向かうスプーク一行。やがて全員が見たのは砂浜に打ち上げられ、波の満ち引きで揺れ動く人間の死体だった。この死体は手足は真っ白く変色していて、着ていた服がはち切れんばかりに膨張していた。これは大変なことになった!早くホテル本部に連絡しなければ!と焦りまくっていたスプークらの背後で突然声がした。

「あ〜、また来たがな(ビサヤ語)」という間伸びした声。振り向くとそこにはホテルの警備員の一団がいた。そしてパニックを起こしているスプークら一行とは対照的に、警備員の面々は全員ゴム手袋をはめると手慣れた感じで死体を四角い板の上に乗せ、ビニールシートで覆った後で何処かへと運んでいってしまったそうだ。

あの〜・・警察呼ばなくていいんですか?とスプークの同僚が警備の主任らしい人物に聞くと、このオヤジは馬鹿にしたような目で同僚を一瞥したあと「そんなんイチイチ連絡するかいナ!商売あがったりになってしまうやないケ!(ビサヤ語)」と怒声をあげた後、唖然とする一同を残して何事も無かったかの様にスタスタとホテル本部の方へと歩いていってしまったのだそうだ。





従業員寮へ戻ったスプークらが憮然とした表情でいると、現場に駆けつけなかった古参のホテル職員が「早朝に叫び声が聞こえてもビーチに行っちゃダメだよ」と文句を言い出した。なぜかと言うと、このホテルでは死体が流れ着くのは日常茶飯事で、毎朝セキュリティーがビーチを巡回していて、死体を発見すると客に見つからないように素早く処分しているのだそうだ。

スプークが聞いた話では、周辺の海域で遭難したり殺されて海に投げ込まれた死体は海流の関係でこのホテルにだけ流れ着くらしく、一度など腐ってもげて海底に沈んでいた手の甲を、ヒトデと間違えた子供がビーチチェアでくつろぐ母親に持って行ってビーチ中が阿鼻叫喚の大パニックになった事があったのだと言う。

「ブラザー!俺の兄弟子は今でもあのホテルで働いているから、奴に頼めば思いっきりディスカウントした値段で泊まれるぞ!」と嬉しそうに言うスプーク。誰がそんなホテル泊まるか!と内心思ったが、いやいや折角のお誘いだけれども、あんまり衛生的じゃないし何より臭いがきつそうだから好意だけ有難く頂いておきますよ・・とお断りしておいた。






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