まるで役に立たない日本大使館

2014/07/15 00:09:36 | 昔話 | コメント:5件

「日本大使館は役に立たないが、貧窮邦人も役に立たない」というブログの題名を読んで笑ってしまった。この2つを比べるのは論理に飛躍が有りすぎるので、おそらくブログ主のジョークと思うが実に見事な題名である。さてこの方のブログがランキング1位となっているので、これに便乗する形で筆者が経験した大使館の駄目さについて日記を書いて見ることにしたい。それから大使館は大企業の駐在員達しか人間として見ていないと言う人もいるが、実際は大企業も視野に入っておらず、自分たちの都合だけ考えて生きていることもこの日記を読めば分かると思う。

数年前に中国・広東省の日系工場が軒並み労働争議に見舞われた事件を覚えておられるだろうか?キッカケはフォックスコンという台湾の委託生産会社が余りに低賃金で中国人をこき使ったため工場ストライキに入ってしまったことだったが、この労働争議に味を占めた中国人たちはフォックスコンよりも遥かに労働条件が良かった日系企業に狙いを定めたのである。そして中国共産党の息のかかった法律事務所が実行部隊となり、各日系工場の中国人リーダー格にデモを引き起こすようにアプローチを始めた。その最初のターゲットになったのが筆者のいた会社だったのだ。


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筆者のいた会社は深セン市に従業員2万人の工場を持っていて、深センの日本商工会議所から「足並みを揃えて欲しい」と文句を言われるほど高い給料を中国人に払っていたのだが、ある朝に日本人マネージャーたちが出勤してみると工場のあちこちにバリケードが貼られていた(ちなみに写真は本田技研のデモの様子だが、これは筆者のいた会社ではありません)。中国人従業員が言っているのは給料を2倍にしろ!中間管理職の香港人を全員追放しろ!役員の半分を中国人にしろ!という滅茶苦茶な要求だった。中国人の諺である「柔らかい土は掘られる」のとおり筆者のいた会社は与し易い相手と見られたのだ。

さて筆者は営業職なので勤務先の香港事務所に陣取り、顧客への納品遅延の交渉でてんてこ舞いになっていたのだが、日本のお偉いさんから緊急電話が入って来て「今日の午後に香港の日本総領事館に行け!」と命じられた。なんでも霞ヶ関から本社に連絡が入り「重大な問題に発展する可能性が有るので至急報告に来られたし」とのお達しを受けたと言うのである。嘘だろ・・中央官庁がこんな事に介入?。しかも・・香港で説明ですか?ストが起こっているのは深セン市だから広州市にある総領事館が担当では?と問い返すと、このお偉いさんは俺も理由が分からんが、外務省は香港の総領事館を指定して来たのだと言った。


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それで深セン工場から急遽飛んできた副工場長と筆者と支店長の3人でセントラルのエクスチェンジスクエア46階にある総領事館に向かったが、受付に奥の部屋に通されたものの何と30分近く待たされた。もちろん菓子どころかお茶も出てこない。そしてやっと30代半ばくらいの若造が部屋に入って来たが、こいつは名刺も渡して来ないし「わざわざご足労いただいて」の一言も無い。挨拶も無しにいきなり筆者らに「じゃあ説明して」と偉そうに言っただけである。実際に中国人と第一次交渉を朝一番にして来た副工場長が説明を始めたが、この若造は時々「はぁ〜・・」とため息を吐く。しかしこれが毎回タイミングがずれているので話を聞いているフリをしているだけなのは明らかだった。

ここではっきり言っておくが、筆者は労働争議に大使館がしゃしゃり出て来るべきだと言っているのでは無い。ちなみにフォックスコンの労使交渉には台湾の外交官が紛れ込んでいたし、アメリカ大使館は国民の生命と資産保護にの為には他国に対して積極的に介入するが、日本の外交官にそれは能力的に期待出来ない。しかし銀行の馬鹿行員が作った不良債権の山を税金で賄った役所も有るのだから、メーカーの危機に対しては労使交渉のプロを紹介する位はしてくるのかな・・と思ったのだ。それに筆者らを呼び出したのはそもそもが外務省なのだから、何か協力する気でいるのかな・・?と少しだけ思ったりした。


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そこへドアがノックされ七三分けのゴツい感じの親父が部屋に入って来たのだが、ここで目の前の若造の態度が突然変わった。組んでいた足を真っ直ぐにするや急に丁寧な態度で副工場長に対して「どうも説明ご苦労様でした」と話はまだ終わってないのに頭を下げると、この七三分けの親父がソファに座って開口一番筆者ら一行に言ったのは「日本のイメージが悪くなると困るので早急かつ穏便に問題を解決することを望みます。では」と言うなり立ち上がって部屋から出ていってしまったのである。滞在時間たったの1分・・こっちの話は一単語さえ聞くことはなかった。

「では今日説明したことをレポートにして送ってください。それから状況が変わればレポートにして逐一私に送ってください」と偉そうに言う若造。この野郎・・こっちはテンヤワンヤの中で時間を割いて来てると言うのに・・。呼び出したのはお前らなんだから、テメエが自分でメモぐらい取ればいいだろが!と筆者もカチンと来たので、この若造に「ところで外務省は何かしていただけるのですか?」と聞いてみたところ、この若造はニッコリ笑って「先ほど総領事が申し上げていますが・・」とぬかしやがった。


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あの七三分けが総領事・・?。早急かつ穏便に解決を望みますって、まるで小学校の校長が朝礼で「みんな仲良く・・」と言ってるような意味のないセリフが外務省の協力だと・・?。それって中国人従業員の言う給料2倍を今すぐ飲めって事か・・あんたら本当に日本の外交官かよ・・・?。余りの馬鹿らしさに筆者ら3人とも空いた口が塞がらないでいると、この若造は「今回の労働争議はあなた達の責任であって、日本政府は全く無関係ですから・・、今日総領事館に来たことも総領事とお会いしたことも口外なされない様に・・」とヌケヌケと言う。てめえらが来いっていうから来たんだろがーっ!この若造外交官のあまりの傲岸不遜さにもう話など聞く気にもならなかった。

その後労働争議はあちこちの日系工場に飛び火しただけでなく、反日暴動に近いものになってしまったし、次の年もその次の年も同じ事が起った。レポートを送っても何にもならなかったのである。まあ総領事館が動いても中国共産党が仕掛けている以上は何も出来なかったに違いないが、日本大使館なんてものはお題目にある邦人保護とか国益なんて仕事はちっともやってなくて、責任逃れと仕事をしているフリを汲々としているだけなんだと良く分かった。確かに日本はプエルトリコと同じアメリカの準州みたいなもんだから、はなから日本には外交官など必要なかったのだ。だからこいつらは毎日外交ゴッコをしてるだけだったのである。


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さてこの七三分けの総領事には後日談がある。香港日本人商工会議所主催の送別会に現れた七三分けは挨拶の場で「任期の最後になって中国で発生した労働争議の解決のため、私は老体に鞭打って粉骨砕身・・」と発言し、総合商社や銀行の支店長ら日本人会の役員と奥方達から拍手喝采を浴びたそうである。こいつら揃いも揃って馬鹿なんじゃねえか・・。これ以降筆者の中では「外交官=ダニ・ノミの類い」というイメージが出来上がってしまったし、ついでに公家と茶坊主だらけの日本人会も脱会することにした。

さて大使館と困窮邦人の話に戻すと、確かに両者とも役に立たない事に違いはないが、困窮邦人は人の金で豪勢な生活をしてる訳ではないし、こいつらはアメリカや中国、ロシアなど他の国の国益のために日本の税金を使って働いている訳ではないから、やっぱり両者を同じレベルで比較するのは困窮邦人に失礼だと思う。さてさて件の七三分け外交官だが現在は駐タイ大使を拝命しているようである。なのでタイの日本企業のみなさん、大使は全然役に立ちませんから問題があっても大使館に相談しに行ったりないように!。レポートだけ山ほど書かされて後はなしのつぶてなだけで無く、多分レポートは北京に転送されてますよ。


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コメント

労働争議の顛末は?

2014/07/15(火) 12:32:16 | URL | 通行人 #-
示唆に富む内容で参考になります。
当方の経験則からいうと、キャリア外交官よりも他省庁からの出向組や現地採用者はもうちょっと親身になってくれる傾向があるかも知れませんね。
ところで件の争議で、社内的な危機管理など、対応のその後はどうなりましたか?

Re: 労働争議の顛末は?

2014/07/15(火) 13:42:03 | URL | 3カラット #-
3週間のストの末に+15%賃上げで妥協しました。車内に危機管理体制は所詮「気をつけよう」程度の綺麗事出会ったため、よくねんさらに翌々年もデモが発生し賃上げを飲まされたため、中国への新規投資は打ち切りとなりました。

2014/07/15(火) 15:00:41 | URL | でぶ熊 #-
領事部はノンキャリアーで記事のような人物が多く館員は出身省の意向で動くのが問題ですね。
タイ大使だとキャリアーですが新任地では違う動き方をするでしょう。

早期退職し所属してた冠もない時にHCMでワークパーミットで揉めた時は領事が出してくれた1枚のレターで助けられました。大使館員も人ですから担当官によるのでしょうが在比大使館は駐比時代も困窮邦人にご苦労されてました。
在住邦人の質で対応が異なるのは経験国で違う事は体験してます。これは米国も同じことを聞きます。
米国籍だとどこに居ても連邦税金納付義務は厳しく未納だと帰国時に高額罰金、懲役もしくはbothの厳罰に処せられます。どの程度在外邦人が日本籍の責務を知っているか疑問です。

Re: タイトルなし

2014/07/15(火) 17:52:57 | URL | 3カラット #-
でぶ熊様

若僧は通産省からの出向だと当時は思っていましたが、領事館に出入りしている知人の話だと外務省の人間だったようです。しかし何でこのストの件では通産省ではなく外務省がしゃしゃり出て来たのか不思議に思っています。

あはは

2016/12/06(火) 17:02:34 | URL | JICA #-
ホーチミンの領事館も似たようなものです。
税金の無駄無駄無駄ァーッ
しかし、自分から呼びつけておいて「口外しないように」とは気違い極まりないですね。
ホーチミンでも一方的に会社情報を提供するような命令(依頼という低姿勢なものではなかった)がHP上に出ましたが、もちろん提供しませんでしたよ。

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