父から聞いた洒落にならない怖い話(2)

標的にされたのは中野区にある本郷氷川神社、もしくは東中野氷川神社の神主だった男である。ただし異例な事に祖父は生涯3箇所の神社の神主になっているのため、ひょっとしたら最後に神主となった沼袋氷川神社の男だったのかもしれない。恥ずかしながら3つの内どこの神社の話だったのかは父から聞き逃してしまったのだ。さて曽祖父と荻窪の白山神社の神主である曾祖父の従兄弟の奸計に落ちて神職を失った男は神社庁にこれは詐欺のようなものだと訴えたが、曽祖父の影響下にある神主達が裏で手を回したため男の訴えは黙殺されてしまった。そしてこの男は神主以外の仕事は勤まりそうも無い男だった様で、路頭に迷い困窮を極めたあげくに妻と二人の子供を連れて佐渡ヶ島へと渡り、「◯◯家(筆者の苗字)を呪ってやる」という遺書を遺して一家心中してしまったというのだ。

「お前も知っての通り姉たちは全員普通じゃ無い死に方をしているだろ?」と父が言った。長女(筆者の叔母)が幼少期に脳膜炎で死んだのはまあ当時の医療事情じゃ仕方ないとしても、次女は入院していた病院で朝死んでいるのを看護婦に発見されたのだが、死因はなんとベッドの上での全身骨折だったのだ。個室で24時間監視カメラ付き、しかも床に落ちた形跡は無いというのに常識では考えられない死に方である。そして三女は10年ほど前に中野区本町の自宅の階段から転げ落ちて脳挫傷で死んだということになっているが、実際は自分の克之と言う名の息子に殺されたのである。やがて父が「モッちゃん(次女)が死んだ時に俺はハッキリ分かったんだ。ベッドの横に心中した4人が現れて全員でモッちゃんを砕き潰したんだよ・・」と無表情でボソっと言った。



その光景を脳裏に浮かべた時に思わずゾーッとしてしまった。たしかに祖父の悪行は色々と聞いていたが、まさか一家を心中に追い込んでいたとは・・。それでウチは元々神社なのだから何でお祓いをしなかったんだ?と聞いたところ、父は「実はお前(筆者のこと)が生まれる前に一度だけ佐渡ヶ島に行ったことがあるんだ」とポツリと言った。父は当時はバリバリの無神論者だったから怨念など信じもしなかったが、結婚してこれから子供を作ろうという時になると流石に気懸りになったらしい。それで一家四人の命日にあたる日に両津港からバスに揺られて島北部の物凄く辺境にある崖っ淵に行ったのだそうだ。とんでもなく寒々しい光景のところで、もう夕暮れ時であることもあって辺りには誰もいなかったという。

花束と日本酒と菓子と煙草を大きな石の上に供えて祓いの祝詞(父は神職の資格を持っている)を奉じた父は、まだ帰りのバスに乗るまで時間があるので4人が飛び降りた崖の上から下を覗いてみるかな・・と思い立ち、崖っ淵ギリギリのところまで近付いていったらしい。ひざまずいて下を覗きながら「この高さから飛び降りたら海底の岩に直撃するから絶対に助かりっこないな・」とか「大荒れの海が4人をすぐに飲み込んでしまったのだろう・・」と思ったそうだ。そしてもう三十年も前の事とは言え、自分の父親(祖父)のワガママのために一家4人を悲惨な末路に追い込んでしまった事を詫びたらしい。そうやってしばらく時間をつぶし、さてそろそろ帰ろうと思って立ち上がり、ここまで来た道の方へと体を向けると、目の前に4人がいたそうだ・・・。



「でもな・・俺はあの4人は絶対に幽霊じゃない、絶対に単なる通行人だと思ってるんだ・・」と父は確信を込めて言うが、その「ゼッタイに」「ゼッタイに」というアクセントが実に耳障りで背中の悪寒を助長する・・。そして父は「もしあの4人が幽霊だというなら絶対に俺を崖へと突き飛ばしていたはずだし、その2年後に子供(筆者のこと)を授かる筈など絶対に無いだろう!」と筆者の同意を求めるような口調で言うが、それって誰が聞いても幽霊が出て来たんじゃないの・・。なお父の話ではその4人は黙って父を見ているだけで何もせず、父は慌てて横方向へと駆け抜けてバス停へ向かったらしい。そして最後に「不思議なことに怖いとは感じなかったんだ・・だってアレは絶対に幽霊じゃないからな・・」と言ってぎこちなく笑った。

さてその後も筆者は子宝には恵まれていないので、やはり心中した一家4人が血を絶やそうとしているのかも・・と思うことがある。それに父方の親戚たちの様子も伝え聞く処によれば色々と問題を抱えてい全員とも不幸なようだ。しかしである・・気になるのは、父の死は二人の姉の死に方と違って外科的な原因ではなかったし、それにそんなに苦しまずに死んでいるのだ。ひょっとして・・佐渡ヶ島の話は筆者をおどかそうとした父の作り話・・?。そう言えば「実はお前にまだ話していなかった事があるんだ・・」と言う前のあの数秒の間がなんか怪しいのである。まあ30年間も筆者を怖がらせずに口惜しがっていた父が、最後の最後にとっておきの恐怖小話で筆者をおどかすことに成功したのだから、本当の事であれ作り話であれ父は絶対に心の中で快哉を叫んでいたに違いない。すっかりやられたね。俺の負けですよ、お父さん!



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教え子にも愛されていたお父さんだったんですね。
 佐渡島の断崖絶壁のシーンが迫力でした。下は泡しぶきを上げて砕け散る海の波。ふと見ると4人の霊が降臨。冷たい手で、自分の身体をふいにもまれたようなゾッとした感覚でした。
 先祖のタタリ末代までもという言い伝えがありますが、お父上が断崖であげたお祓いによって、すべてが溶けたのだと思います。

 幕末、維新の時期に活躍した志士たちも、あまりに若くして20代で死んでしまったり、相手の女性との間に子供ができなかったりして、けっこう血縁が途絶えていますが、養子縁組などで、家系が今まで続いているところが多いですね。
 そんなものなんだと思います。
 

 

 

僕はオカルト関係は、笑い話程度にしか考えていないのですが(フィリピン人のムルト話は参加する)筆者様は、結構この話題が多いですね。やっぱ好きなんですね。

夏の会談というのは良いものですが、フィリピンのような常夏ですと、幽霊的にはどうなんですかね?!

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ほんとでも虚でもいい 

私は涙がでました
人に はめられる悲しさ虚しさ
そんな想いに縛られる死後
そして許せた?かもしれない事
はめられるという事は 人の良い心の方だったのでしょうから
それを悪鬼に変えてしまう多数の人の欲の方が怖い
怖い話には変わりないですね

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