失踪した男の行方を霊視した超能力者

昨日の日記でサイコメトリーについて触れたので、今回はこの能力の説明を兼ねてあるアマチュア怪談師が語っていた小話(と言っても実話である)を書くことにする。

元号が昭和から平成へと変わった頃、あるテレビ局の下請け会社が失踪した人物の行方を霊視で探すという番組を制作することになった。しかし依頼してきたのは東京12チャンネル(しかも深夜番組)であったため予算が十分に無い。それで霊能者は宜保愛子らスター級ではなく、ビジュアル的に映えないけれど能力だけは折り紙つきというオバちゃんを使うことになった。

このオバちゃんはサイコメトリーと言って、ある人物が身に付けていた物に触れるとそこから残留思念を読み取ることが出来る超能力者(霊能者?)の一種なのだ。なお制作会社のプロデューサーは父親と涙の再会なんて時間が掛かる展開よりも「樹海で発見された遺体の身元判明」というようなオチを期待していた事は言うまでもない。

さてこのオバちゃんであるが現場へ向かうロケバスの中で「ギャラが安すぎる」「弁当が不味い」とか「アタシの娘は○○に嫁いでて」と喋くりまくってウルサイ事この上ない。それでプロデューサーがカメラに映っている時には余計な事を話さないように!と注意したが、オバちゃんは「任せときな!」と言った直後にまたベラベラ喋りはじめる始末。

こりゃどうしようも無いのを連れてきちゃったな・・と人選を後悔したが、実はこのオバちゃんはスター級霊能者が霊視に失敗した場合に備えて代わりに霊視をする東京近辺で一番の霊能者としてテレビ局から紹介された人物なのだ。どうやら見た目がかなり悪いだけでなく、口の悪さも一級品である事が災いしてどうやらスターになれなかったようである。


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さて高速に乗って数時間後に一行は現場に到着した。正にド田舎。しかしあたりは谷に囲まれた川あり不気味な湖ありのカメラ映えするロケーションである。アシスタントが引率して一軒の家のチャイムを押すと、その家の奥さんが玄関口に現れて全員に家の中に入るように言った。相変わらずオバちゃんはアシスタント相手にどうでもいいことを喋っているが、その家の居間へと通されるとオバちゃんは何故だか急に静かになった。

専門学校と高校生の息子二人が父親の遺留品をいくつか居間に運んできてオバちゃんに差し出してきたので、オバちゃんは何故だか渋々といった感じで遺留品に触れて目をつぶる。ところがオバちゃんは「・・・」と黙ったままなのだ。このババア!一言も喋るなとは言っとらんだろーがー!と怒ったプロデューサーは一旦カメラを止めて「普段通り喋ってくれ!」と指示したが、それでもオバちゃんは「・・・」と一言も発しない。

それで他の遺留品を触れさせ、失踪した父親の部屋へ入れたりもしたが、あれだけ多弁だったオバちゃんが貝のように口を閉ざしているので埒があかなくなってしまった。プロデューサーにとっては「あちゃー!」である。結局ロケは失敗となり、一同憮然とした表情でロケバスに乗り込むと、オバちゃんが申し訳なさそうに「ゴメンな・・」と呟いた。

何を今さら!とプロデューサーは怒っていたが、まあそこは大人なので「一体どうしたんだい?」と声を掛けると、オバちゃんはか細い声で「殺されてるよ・・」と呟いた。一同がエッ?とオバちゃんに視線を向けると、「失踪したんじゃなくて、男はあの家で一家3人に殺されたんだよ!羽交い締めにされて・・棒みたいなもので頭を砕かれて死んだんだ・・。アタシ、もう怖くて怖くて・・あの場では何も言えなかったんだよ・・」と言って泣き出してしまった。

これを聞いて大喜びしたのがプロデューサーである。期待を超える展開に嬉しくて仕方が無い。それで死体はどこにあるのか?と嫌がるオバちゃんの口を無理やり割らせたところ、裏山に土管みたいなものが放置されている光景が頭に浮かぶという。それでスケジュールを変更して急遽裏山へと向かったが、東京と違ってこのド田舎の裏山というのは途轍もなく巨大な代物であり、スタッフ全員が傷だらけになって山をかき分けて探しまくったが結局その日は土管は見つけられなかった。

それで一旦東京に戻ってテレビ局にこれは超特ダネ企画になるぞ!と報告したところ、最初は追跡ロケ続行に乗り気だったテレビ局が後から突然と企画中止を言い渡してきた。もし番組を放送すれば人権侵害で3人から訴えられる恐れがあるとテレビ局のお偉いさんが判断したのだそうだ。


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さて筆者が長々とアマチュア怪談師の小話を書いた理由はサイコメトリーを説明する他にもう一つある。実はこの失踪した男性の奥さんというのは筆者のいた会社に勤めていたのである。数年前に偶然この怪談師の話を(地名まで言ったので分かった)ネットラジオで聴いてびっくりしたのだ。この当時、下っ端の生産管理係だった筆者はこの女性のいる職場によく出入りしていたし、工場脇の喫煙ルームでも時どき顔を合わせていたからよく覚えている。

この人はジャンボさんという仇名の女性で、二人の息子と旦那を養うためにRAという微量の放射線をあつかう工程(皆が嫌がるので特別手当が出る)で真面目に働いていたのだが、この旦那というのが酒と女とギャンブルに狂っているだけで無く、家族全員に暴力を振るう絵に描いたようなロクデナシだったのだが、ある日を境にこの旦那が忽然と姿を消してしまったのだ。

不思議なことにジャンボさんは捜索願いを出しておらず、「そのうち戻ってくるでしょ」と呑気な事しか言わない。しかし夫の行方を聞かれた時のジャンボさんの何かに怯えたような雰囲気から「あの旦那は息子達に殺されたんじゃないか?」と社内で噂が経ってしまい、けっきょく失踪から数ヶ月経って警察に捜索願いを提出、やがて近所のお節介な人 (この人は同じ会社の売店係だった)がテレビ局に不思議な失踪事件として通報したためにテレビ番組から取材を依頼されてしまったのだ。

もちろん本当に殺したのかどうかは疑問だが、ジャンボさんは噂を打ち消したくて取材を了解したのだろう。そして取材後は「有名な超能力者が来たけど旦那の行方は分からなかったんだって!」という噂が社内に広がり、ジャンボさん一家の殺人疑惑の話は次第に立ち消えていった。それから20年経って偶然にも筆者はネットラジオでこの件の裏話を聞く事になったのだ。

さてアマチュア怪談師のラジオを聴いたあと、筆者は早速ジャンボさんのその後を同僚に確認したところ、2008年に定年退職した後、次男夫婦と同居して悠々自適の老後生活を送っているとの事だった。ちなみに旦那はとっくの昔に死亡宣告が出されていたようである。


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洗面台の辺りがメッチャ怖かったです。
自分に向けられた疑惑の噂を打ち消すために、取材を受け、霊能師の透視を受けた母子がいたわけですね。真犯人って、バレてどうにもならなくまで、シラを切り通すものですね。

怪談 

怪奇現象、怪談はええもんでんな
人間は動物といいますやん。
意識の世界こそオカルトと思います。

Re: タイトルなし 

カイビガンさま
コメント有難うございます。
今夜もう2つほど怪談からみの日記をアップする予定です。

Re: 怪談 

Adobo様

コメントありがとうございます。
このアマチュア怪談師は「いたこ28号」というその世界では超有名な方の話です。
創作怪談と違って実話怪談は話のピースが幾つか抜けていてオチがなかったり、
幽霊が何をしたいのかサッパリわからなかったりするのが妙にリアル感があって好きですね!

 

いよいよ明日はブラジルWカップ 日本戦ですね。
私はすでに視聴の段取りを終えています!

Re: タイトルなし 

一ヶ月間 ウルトラ早寝早起きですか 健康によさそうですね

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