精神分裂病の叔父が葬儀の場で絶叫

香港から来たユン叔父のビザ延長のため葬儀の場から遠く離れたタイタイ市のイミグレで順番を待っていると、女房の携帯に電話が掛かって来て、筆者の耳に相手の泣き叫ぶ様な声が聞こえてきた。女房は呆気に取られた様な表情を浮かべると、何か早口でまくし立てる。そして成り行きを見守っていたユン叔父の妻ルーシーが「ミレットの父親が狂ったんだって」と言った。なんでも葬儀に来た弔問客たち一人一人の側に擦り寄って何やら罵倒し続けた挙句に、最後は大声で絶叫し始めたというのだ。

この通称ミレットの父親というのは祖母の長女リリーの婿で、夫妻とミレット、ローズアンの二人の娘が祖母と同居して面倒を看ていたのだが、数年前にミレットの父は精神に異常をきたして何ヶ月か入院していた事がある。診断名は精神分裂病。どうも今回それが再発した様なのだ。ちなみにこの男は祖母の次女ルーシー叔母と夫のユンから長年に渡り多額の金をたかっていた寄生虫の様な男なのだが、そんな野郎が狂うもんなのかね?・・。一報を聞いたユン叔父は「俺の方が狂いたいくらいだ」と言って苦笑いした。

さて帰り道に隣町の花屋で明日の埋葬日用の花を注文していると、通りの向こうから何とミレットが強張った表情を浮かべて車に向かって歩いて来るではないか。どうも事情を聞くため叔母が呼び出した様である。車に乗ると堰を切った様に早口で喋り続けるミレット。ルーシー叔母が口を挟んでもそれを遮って話し続ける。そして話が終わると急にシートに突っ伏してワーッと大声で号泣し始めた。それに続く女房と叔母のわめき声。あまりの急激な展開に筆者とユン叔父、それに運転席のミレットの夫ラフィーも呆然としてしまった。


幾分落ち着きを取り戻したミレットから聞いた話によれば、父親は数年前に退院した後も祖母とローズアンに突然怒りを爆発させたり、ただの通行人に「お前のせいだ!お前のせいだ!」と詰め寄るような奇矯な言動が多々あったらしいのだが、今日の父親はどうやら一線を越えてしまったようだと言う。義母の葬式で弔問客を罵倒した上に皆の前で絶叫・・。得体の知れない不気味さにその場に居合わせた全員が凍りついてしまったという。

しかしこの話を聞いた筆者は、先日の酒の席でミレットの父親が見せたイメージとの違和感に戸惑ってしまった。ユン叔父に不甲斐なさと不誠実さを激しくなじられてもヘラヘラと適当に受け流していたふてぶてしい男。。それであの男を苛むモノの正体は一体何なのかさっぱり分からないでいるのだ。ミレットの父親は生前の祖母をぞんざいに扱っていたから祖母の死が悲しい訳は無いし、それに葬式だって金を出すどころか指一本動かして無いのだからストレスなんか有るわけが無い。

さてミレットの父親は絶叫後その場に居合わせた叔父や従兄弟達に取り押さえられ、本当は今すぐ精神病院に送るべき所だが埋葬日の前日という事情があるため、葬儀が行われている家の一番奥の部屋に幽閉されているという(トイレとかどうしてるんだろう?)。一度娘のローズアンが中の様子を伺いに行ったが、父親はベッドの上で何かブツブツ呟いており、その底知れぬ不気味さにローズアンは思わずドアを閉じてしまったそうだ。

しかし次から次へと色んな事が起るものである。親戚間の対立、金のゴタゴタ、遺言のいい加減さに祖母の土地の不法占拠など筆者が体験した問題以外にも、実は祖母の長男の二人の娘は実子では無かったとか、三男が愛人と子供を連れてきて一番目と二番目の奥さんが粉叫するなどトラブルが続いてみんな疲れ切っている様だ。しかし・・ここで本音を言うと、筆者はこのバルザックの小説を地で行く様な奇矯な人間喜劇を結構楽しんでいるのである。それにしても・・ミレットの父親が壊れて絶叫する現場に是非とも居合わせたかった・・。



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