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雪ダルマと頭の壊れた銀行員

2014/05/12 00:45:32 | 人間万華鏡 | コメント:0件

従兄弟ジャネルがサウジアラビアに行くという話を昨日聞いた。ジェッダの建設会社でマネージャーをしている義弟フランシスの片腕の地位に就く事になったという。まあ給料は今より遥かに増えるが、せっかく大手銀行に入り込めたのに勿体無いなあと言うと、「ジャネルは本店の営業部に配置換えになってからストレスでかなり参ってたのよ」と女房が裏事情を教えてくれた。そうか・・何処の国でも銀行員というのはストレスを溜め込むのだな・・と思っていると、今から25年前の筆者がまだ大学生だった時に起こったある銀行員の事が頭に浮かんできた。

筆者が大学で属していたサークルでは毎年大晦日に吉祥寺の亀屋矢崎商店という大きな酒屋の会議室に集まって翌日元旦まで夜通しバカ騒ぎをするのが恒例行事であった。筆者より3学年上の矢崎祐久という先輩がこの店の跡取り息子で、当時サントリーの社員だったから酒代は有難い事にタダである。元々この忘年会は現役の大学生と就職して数年のOBたち数十人が集まって旧交を温める場だったのだが、タダ酒だけあって夜7時の開始早々にさっそくゲロ吐いてぶっ倒れる奴が出てくるなど本来の主旨とは程遠い飲み会になるのが常であった。

前日夜から始まった大酒で全員床の上に転がっていた元旦の昼前、協和銀行(現りそな銀行)の1年目社員である荒牧(仮名)という先輩が現れた。「やっと徹夜の残業が終わって浦安から駆けつけて来たんだよぉ・・」といつも通りの間延びした声で言う。大晦日に残業だって・・?やっぱり銀行は大変だな・・と思いながら荒牧先輩の紺色のコートを見ると、あちこちに雪がこびりついていた。あれっ?また雪が降ってきたんですか?と筆者と同学年の男が聞いたところ、「あぁ〜これかぁ〜。雪ダルマを壊している時についちまったんだよぉ〜」と引きつった笑みを浮かべて言った。


なんでも元旦の朝まで働かされて怒り心頭の荒牧先輩はブツクサ独り言を言いながら吉祥寺駅から三鷹方向にある亀屋矢崎商店へと歩いていたが、とちゅう紀伊国屋スーパー付近で子供二人が楽しそうに雪ダルマを作っているのを見つけた。その時突然と「この雪ダルマを壊せ!」という欲望が脳裏にビビッと浮かび、その衝動を抑える事が出来なくなってしまったというのだ。そして道端に落ちていた鉄パイプを手にするや雪だるまに向かって歩き出したらしい。

雪だるまの頭部目掛けて鉄パイプを思い切り振り下ろすと、傍らにいた子供二人は目を剥いてビックリしていたらしいが、それに構わず荒牧先輩は雪ダルマの頭部を砕く様に叩き続けた。「やっ!やめろよー!」「何すんだよー!」と叫びながら二人の子供が腕にすがりついてきたが、それを振りほどいて終始無言のまま雪だるまを叩き潰し、最後はグチャグチャになるまで踏みにじったという。雪ダルマの残骸を呆然と見つめる二人の子供。そして全てを終えた荒牧先輩は無言のままその場を立ち去ったらしい。

「いやぁ〜あのガキ達の表情ときたらさぁ〜」とウィスキー片手に嬉しそうに話す荒牧先輩。そしてその後は自分が融資に関わった再開発事業や、自分が上司からどれだけ目を掛けられているかを滔々と話し続けたが、その場にいた全員は荒牧先輩の余りの異常さにすっかり凍りついてしまい終始無言のまま・・。しかしそんな気配も感じ取れないほど頭が宇宙の彼方へ飛んでしまった荒牧先輩は今度は「うちの支店長が俺に紹介した女子行員だけどさぁ〜」と夜の自慢話をヒヒヒッと笑いながらずっと話し続けた。

この時期はバブル経済で空前の売り手市場であったにも関わらず、その後筆者の属していたサークルからは一人も銀行に就職する人間が居なかったことは言うまでもない。


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