天安門事件の元闘士の光と影(2)

帰り道に中国人Jはなぜ単なる雇われサラリーマンなのにあんな大規模なプロジェクトを手がけられるのかと先輩H氏に聞いたところ、Jは今やS社社長のパートナーになっていて、Jの工業団地の出資者の一人なのだという。「Jはな!あの工業団地の会社を深センで上場するつもりなんだよ!そうすりゃ莫大な利益が転がり来んで来るだろ!」と得意そうに言う。単なる工業団地が上場・・?と訝る筆者の表情をみて「あれは単なる団地じゃないんだよ。あそこに入ったお客の全ての面倒を見ますよって仕組みなんだ!」

一般的に大企業と違って日本の小規模企業には中国での操業のノウハウが無い。そこでJの会社はこの手の店子を50社集めて入居させ、労働者やスタッフから工場幹部まで店子に貸与し、資材の調達から輸出入手続き、それに総務から経理までサービスとして提供する計画なのだと言う。日本から機械設備と工場長だけ送ってくれればすぐに操業出来ますよという事だ。「それにな!R&Dセンターを作って製品開発も請け負う計画なんだ!」とどうだ!と言わんばかりの口調でまくし立てるが、この青写真って一見耳触りが良いけど、結局は店子がまな板の鯉になるだけじゃ無いか・・。

しかし日本人にはお人好しが多いもので、日本のS社社長が県の青年会議所や同業者のつてを辿って、一口2500万円の出資金(一区画の使用権とJ社の株式0.5%を取得できる)を募ったため、Jはその後すぐに建設開始にこぎつける事が出来た。始工式には日本の出資者がズラリと集まり、歌手まで呼んだ宴会では乱痴気騒ぎを繰り広げたらしい。そしてこの場で筆者の会社の先輩であるH氏はJの会社のR&Dセンターの責任者に就任する事が発表された。

しかし半年も経つとJのプロジェクトに綻びが見えてきた。工業団地の建設工事がしょっちゅうストップする様になったのだ。Jが言うには深セン市当局からの度重なる立ち入り検査と工事一時停止命令、建築資材の見直し要求、要するに賄賂要求だという。しかも銀行から借り入れが随分増えているという。出資者達は不安になって来たが、日本に説明に来たJは「大丈夫です!深セン市の上の方と話をつけましたから」と全員の前で笑っていたそうである。それが皆が無た最後のJの姿だった。

ある日の午後「Jが逮捕された!」というH氏からの電話を受けた。容疑は業務上横領罪である。H氏の話によると、工事の度重なる中止に不安を感じたS社の社長が独自のルートで調べてみると、なんとこの工業団地の所有権はJの設立した会社には無いことが判明したのだという。(正確に言うと、この団地の敷地内に登記されている幾つかのペーパーカンパニーのうちの一つがJの会社だった)。この工業団地は最初からJの詐欺話にリアル感を持たせる仕掛けでしかなかったのだ。



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