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アメリカのエリートが否定したい偉大なるミュージシャンたち

2014/04/16 19:50:52 | 映画音楽文芸 | コメント:1件

筆者は仕事上アメリカ人と話をする機会が多く、何気ない会話のネタとして映画や音楽の話をすることが多かった。特に音楽の方は高校生の頃からMTVを見ていたから得意なのだ。それで食事の後のバーではウィスキーグラス片手にジェイムス・ブラウンやエアロスミス、ボンジョヴィなど相手の世代に合わせたミュージシャンの話をするのだが、彼らと話している内にある一つの世代の音楽が彼らからすっぽりと抜け落ちていることに気がついた。

それはジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、もっと簡単に言うとウッドストック・フェスティバルに代表される60年代後半から70年代初頭にかけて一世を風靡した革命的な一連の音楽である(以下便宜上この世代の音楽のことを"ウッドストック"と称する)。

ベトナム戦争の泥沼に足を取られ壊れていくアメリカを背景に、ヒッピームーブメント、ドラッグ、セックスに溺れるアメリカの若者達のための音楽。ロックが本当のロックであった時代である。映画だと「真夜中のカーボーイ」や「イージーライダー」、「タクシードライバー」らアメリカン・ニューシネマの時代である。音楽史でも最も高く評価されるこの時代の音楽が、不思議な事にアメリカ人たちと話すとポコっと抜け落ちているのだ。

パット・ベネターとかリンダ・ロンシュタットにZZトップみたいなどちらかと言うと下層階級向けの歌手の話を東部の名門私立大学出身者にしても「さあ知らないな」と言うのは筆者にだって理解は出来る(泉谷しげるが慶応大学の卒業パーティーに登場したと想像してもらうと良い)。

これはアメリカは社会階層によって観る映画や音楽にスポーツ、そして買い物に行くショッピングモールまで違ってくるからなのだが、しかしジミ・ヘンドリックスやジャニスは後年のプリンスやマドンナの様に当時は社会階層を超えた国民的なミュージシャンであり、特に反戦運動の騎手であったアメリカの大学生たちには熱狂的に支持されていたはずだ。

例えばあるアメリカ人女性は1970年ごろにカリフォルニア大学バークレー校の学生だったと言うので早速ジミ・ヘンドリックスの話をすると、この女は露骨に嫌な顔をした。それで貴女は学生時代にどんな音楽を当時聞いていたのですのか?と聞くと「バーブラ・ストライサンド」と答えやがったのだ。

嘘つけ!このババア!本当はスティーヴィー・ニックスみたいにベルボトムのジーンズ姿でタンバリン叩いて公園で踊ってたくせしやがって!何といっても当時のバークレーは反戦左翼の総本山で、日本で言えば全共闘期の京都大学みたいな存在なのだ。それがアメリカ高教養お上品淑女協会選出のバーブラとは・・・。お前はよりにもよって一体何をぬかしとるんだ!

しかし筆者のこの疑問を解き明かしてくれたのがピーターというニューヨーク代理店の社員であった。彼は筆者以上の音楽マニアでウッドストック世代より少し年下にあたるが、「アメリカ人はあの時代の音楽を過小評価してるわけじゃない。現に俺の息子もジミヘンのファンだよ」と前置きした後で、愚鈍な筆者にも分かる様になぜウッドストック世代がアメリカン人ビジネスマンたちの会話から抜け落ちるのか説明してくれたのだ。

まず第一にとんでもなく古い時代の音楽なので今の若い世代は余程の音楽マニアでも無い限り知らないこと、そしてあの頃の音楽はアメリカの暗い時代を思い出させるので次世代には取っ付きが悪い事、そして第3に当時ウッドストックと同時代だった連中の場合はちょっと複雑な理由があって、彼らの半分は最初は支持していたのに後から否定に回ったからなのだ・・言う。この1と2はよく分かるが3の意味が分からかったので、ピーターに捕捉説明をお願いしたのだ。

「あの頃アメリカ全土の大学では反戦運動が盛り上がっていたけれど、実は大学生は徴兵の対象外だったんだよ。徴兵検査を受けさせられて戦争に行ったのはカントリー聴いてた田舎の高卒白人やブルース聴いてる黒人達だったんだ。つまり当時の大学生は絶対安全圏にいて反戦とか反権力を叫んでいるお気楽なご身分の連中だったのさ。」

「ところがニクソンがベトナムから手を引く様になると、今までヒステリックに反戦を叫んでいた大学生は手のひら返した様に愛国者に鞍替えして、ヒッピールックからスーツに着替えて大学から外の世界に飛び出て行ったんだよ!」

筆者はまだ理解出来ないので、その話とウッドストック系がどう関係するのか聞いたところ、ピーターは呆れた様な表情で筆者を見て「だから!今じゃ政府や企業の幹部になって、中には文字通り国を動かす立場にいる連中が、私は若い頃ウッドストック系の音楽を聴いてましてね・・といったら部下や選挙民はどういう反応をするか分かるだろう」

「『アンタは若い頃は安全圏で反戦叫んでた人なんですね・・。アンタが私のリーダーでいることに不安を感じて来ましたよ・・』って思われちまうと困るだろうが!。それでみんな自分は大学時代は勉強専門で大学院まで進みました、反戦運動なんて一切やってません、音楽はジャズとかバーブラ聴いてました!って言って誤魔化すんだよ!」

このピーターの説明を筆者は最初は半信半疑でいたのだが、その後10年以上アメリカ人と接している内にどうやら本当の事だと信じる様になって来た。と言うのは筆者は1950年頃に産まれた大卒以上のアメリカ人とはその後何百人も出会ったが、冗談でなくただの一人もウッドストック系の話に乗って来たり、反戦運動に参加したという人間が居なかったからである。

これが日本だとオヤジどもの6割以上はデモに参加したとしゃしゃり出て来るし、俺は安田講堂に立て籠もったと言い張る会社の元上司や、どう聴いても作り話だと思える機動隊との「銃撃戦」を自慢する税理士もいると言うのに、なぜアメリカのビジネスエスエリートたちは自分の過去を隠すのか?というと、やはり実は自分が国民の義務から逃げた卑怯者である・・と言う後ろめたさを感じているからであろう。

さてここまで書いて急にジミ・ヘンドリックスのThe Star spangled Banner(アメリカの国家)を聞きたくなったので動画サイトで映像を見ることにした。ウッドストック・フェスティバルのトリを務めたジミヘンの演奏でも最も有名な一曲である。日本では「これはベトナム反戦の意思表明である」と音楽評論家の誰もが言っていたが、ピーターにこの話をしたら「元アメリカ空挺部隊の隊員で多くの同僚を失ったジミが、そんな薄っぺらい正義感で国歌を演奏なんてするもんか!」と一笑に付された。

これはベトナム戦争で手足をもがれ生命を落としているアメリカの名もなき兵士たちと、傷つきボロボロになりつつあるアメリカという国家に捧げるレクイエムだと言う。その説明を聴いた時に、なるほど・・そっちの方がスッキリするなと胸の奥のつかえがストンと落ちた。





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コメント

2014/04/17(木) 01:02:10 | URL | でぶ熊 #3hri4u1c
中学の時からFEN聞いてたので病高じて大学行きながらアメリカ演歌?バンドを結成し米軍将校クラブでやってましたが休暇で戻る彼らは反戦運動連中とは相いれないでした。
今の仕事は米人と付き合いが少ないですが、嫌米なので会社時代転勤も拒否、彼らと音楽の話は思想がばれるので避けます。女房と趣味的にやるのは彼女のピアノ弾き語りでやるバラードが主体です。

前記事のビュッフェ、今は基本教育する余裕がないのでしょう。
営業職でないですが若造時代は客先との会食に料亭、レストランでの会食に強制され勉強しました。
ビュッヘなんて、欧州なら商談破断です。階層社会のフィリピンも同じ、泊まるホテルで値踏みされ相手に迷惑かけます。ふらっと行く時も女房実家に気を使い予約してもらいます。
HCMは詳しいですが日航のビュッヘが良いなんて気を使ったのでしょうが自分なら華町に接待します。本場に負けないフレンチもあります。

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