黄色い革命を知らない大学生

2014/02/25 05:40:40 | 日記 | コメント:2件

いつも週末に我が家に帰ってくる大学生の姪が何故か今日の夕方家に来た。何でお前はここにいるのか?と聞いてみたとこおろ、明日は革命記念日で休日なのよ・・とぶっきらぼうに答える。革命?なんだそりゃ?と問い返すと、「マルコスが国外逃亡してアキノのお母さんが大統領になった革命よ。知らないの?」と嫌味っぽく答える。おお!あの政変か!筆者は当時大学1年生で(今の姪と同じような年頃だった)、当時期末試験後の休みだったからテレビにかじりついて革命の成り行きを見ていた覚えがある。アギナルド基地に立て籠もったエンリレ国防相とラモス副参謀総長、街を埋め尽くした反対派の群集、大統領府のバルコニーに姿を現したマルコスと涙ぐむイメルダ夫人。やがてマルコスが米軍機でアメリカに国外逃亡をしたというニュースと歓喜する群衆。そうか・・あれから28年もたったのか・・と感慨にふけってしまった。
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姪の話によると、同級生の中にはエドゥサ革命について全く知らない生徒もいるという。まあ20歳前後の生徒が自分が生まれる前の政変劇を知らなくても無理が無いな・・と思った。1966年生まれの筆者の同級生たちも60年安保闘争とか樺美智子とか六全協なんて全く知らないのがゾロゾロいたから無理もない。「それでお前の大学はエドゥサ革命についてどういう教え方をしているんだ?」と聞いたところ、政治的なことが大好きな姪は「この時期になると政治学の教授が講座を開いてエドゥサ革命を専門的に講義するのよ」と胸を張って言う。それから姪はこれまでの3年間、毎年その講座に出席しているのでエドゥサ革命については詳しいのだと言って、事件の発端からコリー・アキノ大統領の就任までの説明をしようとした。筆者はタイムラインはある程度知っているので、姪の説明をさえぎって一番簡単な質問である「なぜエドゥサ革命は成功したのか?」と聞いてみた。
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「それは民衆が立ち上がったからよ!」と自信満々に答える姪。はぁ?民衆が立ちあがったからだと?こいつ質問の意味を理解してないんじゃないか?と思って今度は「政権はどうして転覆するのか?」と意味を広げて質問をしてみたところ、姪はさっきと同じく「民衆のパワーに屈するから」と答えた。筆者のいぶかしげな表情を見て不安になったのか、「だって政治学の教授はそう教えてるのよ。弱い国民でも一致団結すれば世界は変わるんだって!」と呆れる様な事を言う姪。これが20歳のネーちゃんだけの意見だったらまあ無理もないかと思うが、仮にも最高学府の教授(正確には准教授)、しかも政治学の専門家が「民衆が立ち上がれば世界は変わる」だと・・。だったら何で天安門事件の時に中国共産党は崩壊しなかったんだよ?姪のあまりの幼稚な答えに思わず「お前の大学はどうかしているぞ!」と叫んでしまった。
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たしかに1989年の東欧共産国の相次ぐ体制崩壊や、2011年のアラブ諸国の独裁者の相次ぐ失脚など、怒れる民衆が立ち上がった事で成功したかのように見える革命劇は存在する。しかしこれらの革命劇を良く観察してみると、民衆が立ち上がる前に革命の筋書きは黒幕たちが予め用意していて、民衆の暴動などほんの序幕の1つ、しかもアジテーターによって「大義名分つくりのため」に巧みに扇動された1コマに過ぎないことが分かってくる。代表的なのは1989年のルーマニアの政変劇である。表向きはチャウシェスクの集会に集められた数万人の群衆のうちの数人が「独裁者打倒!」と叫んで爆竹を鳴らし、それが周りに広がって一気に「反チャウシェスク集会」になってしまったことが発端だと言われているが、だったらなぜルーマニアの軍がたった一日で反政府側についてしまったのか?チャウシェスクの親衛隊以外の全ての勢力がたった1日でどうしてまとまった動きが出来るようになったのか?全く説明がつかないではないか。
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筆者の説明に対し姪が「でも教授は人々の力が・・」と言って譲らない。まあ姪っ子を苛めるつもりはないので、筆者が思うマルコスがあっさりと倒れた理由、アメリカと軍に見捨てられたから、について話すことにした。対ソ連封じ込めのためのアメリカと中国との裏取引、反共姿勢を取るアジアの独裁者から徐々に手を引くアメリカの外交政策の転換、戦場から市場への発想転換についていけないマルコスの取り巻き達の古い政治スタイル、汚職が蔓延したアジアの病人。こういったマルコスの負の面にうんざりしたアメリカは、別の思惑を持つフィリピンの軍部と一部の政治勢力を動かして、最小の被害でマルコスを除去する行動に出たのだと思う。軍事力と治安維持力を奪われ、後ろ盾にも見放された上に恫喝されたからマルコスは逃亡したのである。何十年も権力の座にあった古狸が、民衆が騒いでるからと言って座を明け渡すはずなど無いのだ。
     Nixon Mao

筆者の説明に姪はウンウンと頷くだけだったので、全く納得なんかしてなくて話半分で聞いているだけに違いない。まあ筆者も若い頃は若い人間特有の理想的な価値観を持っていた時期があるから、姪の反論したい思いも理解できるのである。しかしこれからフィリピンの次世代を担っていく大学生に対して「ジョン・レノンの唄を聴けば世界は平和になる」というような甘ったるい政治学を教える准教授がいるとは一体どういう事だろう。大学の准教授と言う事は政治学の博士課程を終了しているはずだから、レーニン全集やマックス・ウェーバーくらいは読んだはずである。まったくこういう奴がいるから自国の領土を中国にみすみす乗っ取られるようなことになるのだ。まあ筆者の大学にも文化大革命を讃えたり、金日成主席万歳なんて叫んでいた頭のいかれた教授もいたから余り他国の事は言えないが、少なくともアカデミズムに従事する者として、情緒に流されずに冷徹で緻密な事実分析くらいしてほしいと思う。
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コメント

2014/02/25(火) 07:12:43 | URL | hanep #-
軍がどちらに味方をするか?という意味だと思いますが、比の場合のみならず、東南アジアで軍事独裁政権が倒れていった過程ですから、「あたらずとも遠からず」という気もします。EDSA革命は、比の政治暴走を最後に食い止めたのは国民だ、という意味では、現政権にとっても抑止力になることですから、私は機嫌よく「そうだね!」と笑顔で答えていますよ。黒幕がいてもいいじゃないですか、その国の政治(ルール)を決めるのは国民です。それに時の政権は”ヘタを打ちすぎました”。革命という名称は大げさかも知れませんが、EDSAは起こるべく起こったと思います。EDSAの時、わが国は一体何をしていたかを振り返ると、決して比を批判できない気もしますしね、あはは

2014/02/25(火) 07:31:20 | URL | hanep #-
それにしても、比の政治学をかいまみる貴重な著述ですね。こういうブログの火を消してはいけないと思います。
今後とも良質と、ウィットと、スットボケの記事を、
1読者は待ってます(^^
※私ばかりコメントしていて、妙に荒らしな雰囲気なのですが、これほどの記事ならば、upされたら何十コメが付くブログになっているのが当然で、今現在私が浮いているだけと想像します。FC2ブログですから、コメの数字が増えても、邪魔になりませんので、今後ともよろしくww

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