サウジアラビアの密造酒

筆者の女房の親族にはサウジアラビアに出稼ぎに行った人間が3人いる。筆者が一番親しくしているエド叔父さんは通算15年サウジの建設プラントで機械オペレーターをやっていたし、従兄ジョマールは約10年サウジの首都リヤドにある某国大使館で運転手をしていた。二人とも子供が成人するまではサウジで働いていたが、今はフィリピンに戻ってアルバイト的な事しかしていないから、よっぽどサウジの仕事で蓄財できたのだろう。二人と会って酒を飲むと「サウジでは・・」と昔話になるのが常である。
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そして現在サウジの商業都市ジェッダにいるのが義妹の夫フランシスである。大学の工学部で修士課程を修了し、フィリピンの大手建設会社で経験を積んだフランシスは5年前にサウジにあるフランス系企業からヘッドハントされ、それ以来この会社のマネージャーとして日々複数のプロジェクトを管理・統制しているのである。給料は月3000ドル、住宅費用は会社持ち、年間1カ月の帰国休暇有りとサウジの出稼ぎ労働者の中では相当の高待遇である。「やったなフランシス!」との筆者のお褒めの言葉に、奴は「ブラザー。俺はツイてただけだよ」と頭をかく。照れ屋なのである。
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さてこの3人に何がサウジでは辛かったのか?と聞いてみると、暑さや食べ物の違い、労働環境の厳しさや女を抱けないなど筆者の予想したような事では無くて、三人とも揃って「酒が禁止されている事だ!」と答えた。ちなみにこの3人は筆者の目から見ると酒好きの部類に入る人間ではない。筆者の方がよっぽどの酒飲みだが、筆者は別に1年酒飲むなと言われても別に苦にはならない。なので酒なんか無くったって・・と不思議に思ったが、灼熱の暑さの中で肉体労働をした後はどうしても酒が欲しくなるのだという。しかしサウジは酒の販売も持ち込みも法律で禁止、それに酒どころかアルコール分が入った化粧品でさえ見つかれば没収となってしまう国である。それはそれは気の毒ですが諦めるしかないですな・・とからかったところ、フランシスは「だけど裏の方法があってね。俺たちもたまには酒を飲めるんだよ」と笑いながら言った。
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フランシスの話ではシーバスやバランタインなどの正規品はイエメンやヨルダンなど周辺諸国からトラックにこっそり積んで運ばれてくるが、やはり一番リスクの大きい小売段階(もちろん闇屋である)で宗教警察に捕まるケースが多いため、最近はごく一部の限られたグループ内にしか出回らないようになってしまったらしい。それにシーバスが1本10000リアル(3万円)とべら棒に高いため出稼ぎ連中に手が届くような代物ではないという。ついでに言うとビールは嵩張るばかりでアルコール分が低いから全然お呼びじゃないらしい(灼熱のサウジで飲むビールは美味そうに思えるけど・・)。じゃあお前たちは何を飲んでいるのか?と聞くと、フランシスは「密造酒だよ」と答えた。「材料を買ってきて自分たちで作るんだよ!」
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自作するのに一番手っ取り早いのはワインで、市場で買ってきたブドウを潰して発酵させるのだが、細菌が混じって腐ってしまったり、成功してもアルコール分がイマイチなので思いっきり酔いたい男連中には不評なのだそうだ。だからやはり人気は芋から作った蒸留酒だという。「だけど市場で山ほど芋を買うのはマズいんだ。私服警察がウロウロしてるからな。見つかりゃ鞭打ちの刑を処せられた上に国外追放は確実だから、見つからないように皆で手分けして少しずつ何日もかけて芋を買うんだよ。それで芋がある程度溜まったら水につけて発酵させて、そのあと圧力釜を使って蒸留するんだ」と手順を説明するフランシス。さすが工学修士・・、それに同じ寮には化学プラントに勤める技師も住んでいるから、こんなのお茶の子さいさいなんだろう。
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こうして命がけで作った密造酒であるが味は「物凄くワイルド」なのだそうだ。それにみんなでワイワイ話しながら飲むなんて事をしたら警察に通報されて一巻の終わりなので、各自がコップに注いだ密造酒を一気に煽って、後は自室に帰って一人で酔いを楽しむのだという。そんな飲み方つまらなそうだな・・と思ったが、家族と離れて異国で働くフィリピン人にとっては、そんな酒も一服の清涼剤になるのだろう。会社で上司に怒られたと言って、居酒屋で安酒を煽って憂さを晴らせる日本のサラリーマンとは訳が違うのだ。もっと厳しくて情けなくて泣きたくなるような環境にいるのである。スカイプで「来月フィリピンに戻った時には、みんなで大騒ぎしながら酒を飲みたいよ!」と笑っていたフランシス。奴を空港に出迎える時には、我が家のトヨタ・イノーバにスコッチやコニャックを持ち込んで男どもで酒盛りしながら帰路に着くとしよう。へべれけに酔っぱらって女房の浅黒い肌に抱き付け!フランシス!

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外国人であれば、”さけ”は手に入るのですが、フィリピン人はOFWですからねぇ...

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