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蝶を追いかけた男

2018/06/07 19:40:40 | 人間万華鏡 | コメント:0件

今回日本に旅に出る前にヌエバエシハ州に住む旧友メリーから気の重い頼まれごとを受けていた。メリーのかつての恋人で娘キムの父親であるMの消息を探って欲しいという申し出である。時を遡る事四半世紀、香港に赴任したばかりの筆者はメリーがつくったカクテルを呑みに夜ごと繁華街ワンチャイのバー赴いていたのだが、今の女房と付き合い始めて足が遠のいた時に入れ替わるようにバーに現れたのがMである。

超大手都市銀の支店ナンバー2で既に50歳になっていたMとフィリピンに旦那と子供を残していたメリーは良くあるように期限付きのW不倫に溺れ、そして娘キムが誕生する直前に日本に帰任させられたMとメリー・キム母子は数年に一度香港で逢瀬を重ねる以外はメールと電話でやり取りをする程度だったが、2年前にMから重い病気に罹ったと連絡が入り、もし自分と連絡が取れなくなったら死んだと思ってくれと言っていたそうなのだが、昨年のキムの誕生日以降は音信が完全に途絶えてしまったと言うのだ。

だからどうしてもMの消息を知りたい!と言うのだが、しかし手掛かりとなるのはアルファベットでのMの苗字名前と返事が来なくなったメールアドレス、それと現在使用されておりません!としか聞こえて来ない携帯番号、そして横浜に日本人の奧さんと子供と住んでいる!と言うだけの、正直これだけじゃお手げだよ!という程度の情報なのだが(実は筆者はMとは面識が無い)、途方にくれている時に女房がある手掛かりを思い出したのだ。

キムが産まれた時に女房は病院でMと何度か会っていたのだが、あの人は自分は蝶のちょっと凄いコレクターだと自慢していた!と言ったのだ。へえ、蝶ねぇ、でも何でそんな話したんだ?と聞いたら、キムの正式な名前は学術用語で何とかいうアゲハチョウを意味するのだ!と奇妙なほど熱心に語っていて、自分は時間を見つけては蝶の採集に行くのだ!日本の家には蝶の標本がいっぱいあるのだ!と子供みたいに語っていたのを覚えていたのである。





それで試しにMの苗字と蝶で検索したら・・出てきたのだ。それはいくつかある蝶の学会の一つの機関紙的なウェブサイトで、Mとアルファベットで同姓同名人間がインドネシアで採集した膨大な量の票本を学会に寄贈したとして4年前にとある賞を受けたと記事なのだが、そこにはMが銀行員として駐在したアジア各地で採集を続けて・・の説明とともに写真が出ていて、それを女房に見せたところ・・これよ!この人よ!信じられない事だがそこに写っていたのは正しくMその人だったのである。

漢字の氏名、横浜にいると言う情報。実はこれだけである程度の事が分かるのは分かる人には分かる話である。で、その筋に関係している友人に頼んだらものの数分で答えが返ってきて、それに該当する人物は横浜にただ一名だけいる由の事が書かれて有ったのだ。そこには番地まで入った住所と電話番号も当然書かれていたけれど、ここで電話をかけるかどうか筆者は戸惑ってしまったのだ。

オレオレ詐偽と間違われて電話を切られるのならまだ良い。筆者が嫌だったのはもしもM本人が出てくればメリーとキムを捨てた事実と直面するわけだし、一方で夫人なり子供が出てきてMが死んだことを聞き出せば、筆者は死のメッセンジャーとなるわけで、つまりどちらにせよ良い役割にはならないし、何よりMという人間を自分が嫌ってきた事に改めて気づいたからである。

自分の本当の娘に自宅の住所や電話番号さえも知らせなかったM、メリーの経済状態を見る限り微々たる額の資金援助さえしているかどうか怪しい限りのM、そして筆者よりはるかに恵まれた経歴と財力を持ちながら親としての責任から逃げ続けた身勝手な男M。一方メリーといえば筆者らがヌエバエシハ州に遊びに行けば自分のベッドルームに筆者ら夫妻と寝かせて自分と娘キムは応接間に雑魚寝しているようなお人好し、その人格の差に腹が立ってきたのだ。(続く)





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