言ってはいけない質問

2018/02/26 12:12:12 | 日記 | コメント:0件

先日夫を心臓病で亡くしたばかりのニダが土曜日の晩に突然我が家にやってきた。おい・・葬式とかはいいのかよ?と思ったが、とりあえずお悔やみの言葉を言ったのだが・・、なんかニダはちっとも悲しそうに見えない・・。女房と2人のクラスメイト(アイリンとアグネス)と一緒にバカ話に興じて笑い声をあげているのだ。

なんか変だな・・と思ったが、しかし夫を亡くした直後の妻に「悲しくないのか?」とは聞けぬから黙っていたのだが、ニダが別室へ引っ込んだときにアイリンの旦那に「ニダは頭が混乱してるようだね」と聞いてみたところ、いやいや違うんだ、オレたちも知らなかったんだけど、数年前から結婚生活は破綻してたようなんだ!と言って何かを炙るような仕草を見せたのだ。

シャブ依存症を表すシグナルである。ここフィリピンでは注射ではなく炙りでの摂取が主流で、筆者の周りにも2人ほどシャブ依存者がいるなど日本じゃ考えられないほど広くシャブが蔓延しているのだ。となるとニダの旦那の死因は慢性心臓疾患ではなくオーバードーズによる心臓発作なのではないかと思えてきた。

愛する妻と2人の子供がいるにもかかわらずニダの旦那は中年になってシャブに手を出し、今まで真面目だったのがウソのように人が完全に変わってしまったそうなのだ。ただ気になったのはアイリンの旦那の口調が「ニダが香港の出稼ぎ家政婦になったのはカネのためというより夫に見切りをつけて逃げ出した」・・という感じなのである。





母親が2人の子供を見捨てるというのは考えにくい。しかしフェイスブックを家族の写真で埋め尽くすのが常のフィリピン人にしてはニダのページには家族の写真が驚くほど少なくて、それと6年前の当時香港にいた筆者らの住む家にやって来たニダの口からは家族の話ってほとんど聞いたことが無いのだ。

香港に来たばかりの頃にニダが放っていた虐げられた動物が持つような独特の負のオーラを放っていたが、6年後の現在マニラの我が家で若い娘の様に嬌声をあげているニダの姿とのギャップを考えると・・やっぱり夫も子供も捨てて逃げ出したのでは?と思えてきたのである。

ただシャブにはまり込んだ人間は周囲の人間の精神までズタズタに切り裂いてしまうし、人間の忍耐には限度があるからニダがそういう選択をしたのは仕方がいないか・・と思っていた矢先に驚くようなことが起こったのだ、ニダが筆者らが呑んでいる部屋に戻って来るや「&$#J=」と言い出し・・なぜか全員が沈黙してしまったのである。

筆者はタガログ語が判らぬからキョトンとしていたのだが、女房とアグネス・アイリン夫妻の計5人はなんか答えにくそうな表情で黙ったまま・・。で、そこで何を思ったのかアイリンの旦那が筆者の方に振り向くや「ニダは新しい恋人を持った方が良いかしら?と聞いてるんだが、ニダに何かアドバイスしてくれないか?」と言ったのだ。





・・・・・。一呼吸おいて「見つけるべきだよ。いや、今すでにそういう人がいるんじゃないのか?」筆者はそう答えたのである。夫が死んで1週間も経ってない女が普通こんな質問をするか?というニダに対する嫌悪感の一方で、虐待され続けた動物のようなオーラを妻にまとわせてしまったシャブ中の夫への軽蔑感もあって正直逡巡したけれど、しかし何よりも全員が沈黙しまったあの場の空気が一番嫌だったからだ。

で、その回答に対しニダはきっと怒るだろうな?と思ったが、意外にもニダは肯定も否定もせずにジッと筆者を見ているだけだった。そしてしばしの沈黙の後ニダはアグネスに何やら話しかけ、つい先ほどの様に楽しそうに笑いこけ始め、やがて随分夜遅くなってから子供たちが待つタギッグの家へと帰っていったのである。

そもそもなぜ家から抜け出して我が家へ来たのか?子供二人との関係はどうなっているのか?妻として母親として暮らした家にまだ愛着は残っているのか?いや、それ以前に自分以外の人間の共感する能力が・・などなど色んな疑問が浮かぶのだが、しかしニダの言動を思い返しても答えは読み取れないままでいる。

ただあの質問はクラスメイト3人が夫とまあ幸せそうに生活している事への反発や、失ったものを別の形で取り戻したいという虚勢であり、あるいは言ってはいけない事を口にすることでつかの間の息抜きをしたかっただけなのかもしれない。そして次の日、日曜日の晩にニダは再び香港へと戻っていった。






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