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インヴィクタス

2018/01/23 11:59:57 | ニュース | コメント:1件

元東大教授で評論家の西部邁が自殺したと聞いて「ああ、やっぱりそうだったのか」と思いってしまった。以前チャンネル桜の番組だかで久しぶりに見た氏はやけに憔悴していて、昨今の現状の余りの酷さに生きていても仕方がないと思うようになった・・とこぼしていたからである。

西部邁が朝まで生テレビに出演されたころの筆者は思い切り左翼で、当然ながら氏と対立する小田実や大島渚、野坂昭如、それと氏を徹底的に罵倒する小林よしのりといった陣営を応援していたのだが、しかし意見の相違はあるものの独自のブラックユーモアを交えながら持論を展開する氏の姿勢は実は結構好きだったのだ。

しかしそうは言っても氏のパブリシティーを重んじるスノッブな姿勢、愚民を見下すエリート意識、エスタブリッシュメント思考は何から何まで鼻についたものだが、他人の世話になりながら病院のベッドで惨めな死だけは迎えたくない!という氏の断固たる意志、ダンディズムには敬意を持っていた。

そして氏は自殺した。この死に方には当然ながら反論の方が多いだろうし、そういう終わり方は余りにも寂しすぎるではないか!という思いが強いのだろうが、しかし自分が西部氏と同じ立場にいたらどういう選択をするだろうか?と幾度か考えてみたところ、やはり自分も同じ結果を選ぶかもしれないな・・という結論になったのだ。

で、不思議なのだがその時に頭に浮かんだのがウィリアム・アーネスト・ヘンリーの詩「インヴィクタス」だったことだ。この詩は獄中にいたネルソン・マンンデラの精神的な支えになったとして有名であるが、何故だか筆者にとってはオクラホマ連邦ビル爆破事件で死刑判決を受けたティモシー・マクベイが処刑直前に唱えた詩としてずっと記憶に残っていたのだ。

その死刑囚と稀代の論客を同じ視点で見るのも変なのだが、何故だか知らぬが颯爽と死へと向かう後ろ姿、ある種の潔さと言うか強さ、凛とした気高さのようなものが重なって見えてしまったのである。なのでピント外れな話だけれど、この場でこの詩を読み上げてみることにしたい。





Out of the night that covers me,
私を覆う漆黒の夜
Black as the Pit from pole to pole,
鉄格子にひそむ奈落の闇
I thank whatever gods may be
私はあらゆる神に感謝する
For my unconquerable soul.
我が魂が征服されぬことを

In the fell clutch of circumstance
無惨な状況においてさえ
I have not winced nor cried aloud.
私はひるみも叫びもしなかった
Under the bludgeonings of chance
運命に打ちのめされ
My head is bloody, but unbowed.
血を流しても決して屈服はしない

Beyond this place of wrath and tears
激しい怒りと涙の彼方に
Looms but the Horror of the shade,
恐ろしい死が浮かび上がる
And yet the menace of the years
だが、長きにわたる脅しを受けてなお
Finds, and shall find, me unafraid.
私は何ひとつ恐れはしない

It matters not how strait the gate,
門がいかに狭かろうと
How charged with punishments the scroll.
いかなる罰に苦しめられようと
I am the master of my fate:
私が我が運命の支配者
I am the captain of my soul.
私が我が魂の指揮官なのだ

病魔に侵された詩人の死への恐怖からの解放、非転向政治犯の希望、死刑囚としての煉獄、インテリとしての孤独と焦燥、晩節を汚したくないというダンディズムのくびき・・。なんかそんな意味の無い言葉が頭の中に浮かんでは消えていったのだ。

さて西部邁先生、本当にご苦労様でした。あんた自分の意志を最後まで通したね。ご冥福をお祈りします。R.I.P






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コメント

納得がいきました

2018/01/23(火) 12:46:48 | URL | 名無しさん #-
このニュースを知ってどんな人だったのかとアマゾンで著作を見てみました。
この本は知っている、これは読んだことがある。
この人が作者だったのか、と著作の多さと内容を見て何となく現代社会はこの人にとっては生き辛かっただろうなと思いました。
でも、70を超えた方です。もうすぐ自然にお迎えが来ます!
何も自分から冷たい水に入って死ななくても!!

今日の記事を読んで納得がいきました。
自分の生き様の終わりを、ご自分で決定したかったんですね。
可愛いネクタイをしめたおしゃれでダンディな写真が素敵です。
写真も詩も、西部邁氏にぴったりです。
長いこと、お疲れ様でございました。

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