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落書きの向こうから吹いてくる心地よい風

2018/01/08 11:58:52 | タイ・インドシナ | コメント:0件

『金の北米、女の南米、耐えてアフリカ、歴史のアジア、なんにもないのがヨーロッパ、問題外のオセアニア、豊かな青春、惨めな老後』。

かつてバンコクの猥雑な下町、ヤワラートにたたずむ伝説の安宿、谷恒生の小説「バンコク樂宮ホテル」の舞台になった樂宮旅社の壁に書かれた読み人知らずのいつ書かれたのかも定かでない落書きである。

階下にはスワニーという女将が営む北京飯店があって、ここで丼ものとアサリの味噌汁で腹ごしらえすると道端にたたずむ街娼たちをひやかし、その中から目ぼしい女を部屋に連れ込んで下の情欲を満たすのがこの宿の住人の日課であった。

で、さびしい懐事情を抱えながらも3年、5年と旅を続けるボヘミアンが麻薬にまどろみながら壁に書いたのが前述の詩で、出鱈目な宿らしく店主も落書きをそのまま放ったらかしにしたおかげで多くの日本人の目に触れることとなり、ナイロビ、デリー、テヘランの安宿で古参の連中から新参者へと語り継がれていったのだ。

実際この内容はボヘミアンから見た世界を良く表しているのだが、最後の豊かな青春、惨めな老後というくだりは、若いうちはカネはないが旅を続ける体力はあるし、それに日本に帰れば原発の掃除や牛丼屋で2年もバイトをすればまた旅に出られるが、年を取ったらそういう旅はもはや出来ないし、なにより自分が何も持ちあわせてない事実に向き合いながら寂しく老いていく・・という意味らしい。

だったら真面目に働いて奇麗な奥さんと可愛い子供でも持てば良いのだが、しかしそう望んでもそうなれないのがボヘミアンの宿命で、だからこそ彼らは孤独な旅を続けていくしか無いのだけれど、こういう根無し草の人生を思い描くたびに筆者は何故だか知らぬが心地よい風が向こうから吹いてくる気がするのである。

はじめてインドを旅した時に筆者は自分の本性がボヘミアンであることを知り、しかし世間体もあるからとネクタイを締める生活へ飛び込んで、その世界では同じ世代の仲間たちよりも随分と恵まれることになったのだが、内部に起こる軋みというのはどうしようもない訳で、四半世紀も経った時にこれは俺の人生ではない!と確信し、今まで築いてきたものをあっさり捨てたのである。

だから筆者は惨めな老後へとまっしぐらに進んでいて、当然そこにはいくばくかの恐怖心もあるのだけれど、しかし一度糸が切れた凧が元に戻ることは無い訳だし、そもそも混沌としたアジアの雑踏に足を踏み入れた21歳の時からずっと自分の心はそこを住処にしていたのである。

後悔などしないが年老いていくのは厳然たる事実、だからせめてみじめさを感じないために旅を続けましょ、行けるところまで・・。






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