FC2ブログ

育ちの違いが出る瞬間

2017/12/11 12:52:14 | フィリピン雑学帳 | コメント:0件

筆者の女房は料理好きで誰かが遊びに来ると早速食事の準備に取り掛かるのだが、とりあえず酒のツマミにこれでも食べておいて!と出すのがステーキ類である。我が家の冷凍庫にはサーロインやポークチョップにラムチョップが常時蓄えてあるので、まずはこれらの類をサッと炒めて客に出すのである。

で・・初めて来た客、あるいは初めて食事を伴にする客の場合だと大変不躾ながら、相手がどの肉にフォークを伸ばすのか?いや、正確に書くとどの肉に手を付けないのか?に注目し、そこから相手の素性を見極めては心の底で密かにほくそ笑む・・というイヤミな癖が筆者にはあるのだ。

レチョンという丸焼きからアドボという煮込みまでフィリピンで豚肉は幅広く使われており、また町にあちこちには焼き鳥屋がモウモウと煙を上げている様に鶏肉も非常にポピュラーな食材なのに対し、シニガン・バカやブラロなんて料理はあるにはあるがここでは牛肉はかなりマイナーな存在である。

これはアメリカの食肉用に飼育された牛と違ってアジアの牛はどれも痩せこけている上に肉が固すぎるため、食の大国中国でも青椒肉絲みたいに細かく切らないと食えなかった事が原因なのだが、しかしここ20年ほどフィリピンはそれなりに豊かになってそこそこ食えるレベルの輸入牛肉がスーパーに並んでいるから、牛肉がもっと人気があっても良いはずだ。





にもかかわらず未だに牛肉が好きでないフィリピン人は案外と多く、例えば義弟アベットの娘アビー(当時10歳)は(犬肉は大好物なのに)サーロインステーキを一口含むやペッと吐き出してしまったし、紺のスーツ姿で会計事務所に通勤する足の臭い姪イナも「牛肉はちょっと・・」といくら進めようが敬遠しがちなのだ。

さてさて、これ筆者と同じかそれ以上の年齢で東日本出身の方ならちょっと思い当たるのではないだろうか。そう、実は90年代に牛肉輸入が自由化するまでは牛肉は非常に高価であり、特に70年代まですき焼きやビフテキ(当時の名称)など年に1回食べられるかどうかのご馳走だったのだけれど、いざ食べてみると「・・・」と沈黙してしまった方も案外多いと思うのだ。

なんかケモノ臭いな・・。この口にまとわりつく脂が気持ち悪いな・・。変な甘みがする・・。これが筆者が小学生の頃に最初に牛肉を食べた時の感想で、高校の帰りに吉祥寺駅前の松屋の牛丼をオヤツ代わりに食い続けるようになるまで正直牛肉にはぜんぜん馴染めなかったのである。

だから母親が他所に働きに行っていたためずっと祖父に育てられたイナや、少しは所得はあるものの極貧地帯ビコール出身で大変育ちの悪い母親が作ったエコロジー料理ばかり食っているアビーは幼少期に牛肉を食った経験がほとんど無いため、これが旨い肉である!と知覚するだけの味蕾が育っていないのである。





しかし・・物事には例外があるもので、同じくリサール州の奥地に住んでいる女房のクラスメイトが我が家に遊びに来たのだが、一緒についてきた小学生の娘は一たび牛肉を口に含むや「マサラップ!」と叫んであれよあれよという間に1枚丸ごと食べてしまったのである。それで「キミはステーキをしょっちゅう食ってるのか?」と聞いたのだが「初めて食べた」と正直に答える。

珍しい事もあるもんだな・・と思ったが、話を聞いているうちに理由が分かってきた。彼女の家は豊かではないが母親(女房のクラスメイト)は料理に手間ヒマをかける人間、何事も粗雑で怠惰なフィリピンでは珍種に属する母親であり、実はこの母親自身も料理に手抜きをしない母親(小学生の娘にとっての祖母)の下で育っていたのだ。

考えてみれば当たり前だが海あり山ありのフィリピンには色んな材料があるのだから、その気になれば色々な材料を組み合わせてバリエーション豊かな料理を作る事が出来るのだ。だから子供に美味しいものを食べさせたい!という意識に満ちた母親の下にいれば当然ながら子供たちには多面的な味を許容し旨味を知覚できる味蕾が発達していくのである。

牛肉に手が伸びるかどうかでその人間の育った家の懐具合と母親の勤勉さが出る・・。判断される側にとってはなんとも恐ろしい物差しである。そして豊かでない中年の男女が牛肉を避けるのは仕方がないにしても、めかし込んだ母親が最近買った新車の自慢話をしている傍らで子供が握ったフォークが牛肉をはじいているのを見た時に「この張りぼて女!」と心のなかでほくそ笑むのが・・・。一度試してみる事をお勧めする。






にほんブログ村 海外生活ブログ フィリピン情報へ
にほんブログ村
スポンサーサイト




コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://dadesigna.blog.fc2.com/tb.php/1399-e973bf43
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)