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フォンを尊ぶ空洞男

2017/11/05 12:22:33 | 映画音楽文芸 | コメント:2件

大学時代の筆者は授業の合間に映画サークルの溜まり場に行っては映画の話ばかりする4年間を過ごしたのだが、ここに来るメンバーの中に一人だけ「お前なんでここにいるの?」と言いたくなる男がいた。一昨日の日記で書いた新しく何かを取り入れようという発想が無い男、後輩たちから「中身が何にもない人」とバカにされ続けた三島君である。

映画好きであれば「フェリーニなら甘い生活よりも81/2の方が好きだね」など監督ごとに話をするものだが、この三島君はジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」の話は出てきても「明日に向かって撃て」や「ガープの世界」は一切口から出て来ない(観ていない)、つまり一番基本の体系的に映画を観る方法さえ思いつかない男であった。

それがある時に彼からジョセフ・フォン・スタンバーグの名が出てきて一同エッ?と驚いた事がある。言わずと知れた白黒映画時代の巨匠、戦前から戦後にかけてハリウッドで活躍したドイツ生まれの大監督である。三島君はこの監督の最高傑作と呼び名の高いマレーネ・ディートリヒ主演の「嘆きの天使」について語り始めたのである。

へえ、人間環境にいればそのうち進歩するものだな・・と皆で噂しあっていたのだが、予想した通り三島君の口からはその後もジョセフ・フォン・スタンバーグの名だけが頻繁に登場するようになったのだけれど、この名監督の名前を皆が100回か200回聞かされたあたりでイチイ君というメンバーが「三島の話ってなんか変じゃないか」と言い出したのだ。





ふつう映画サークルのメンバー同士では監督の名前はゴダールとかキューブリックのように苗字しか言わないものである。筆者もブログでは「フランス・ヌーヴェルバーグの寵児フランソワ・トリュフォー」なんて細かく書くけど、これはこの監督について知らない人が多いだろうから親切に表現しているのであって、相手が映画ファンなら向こうもこの監督の映画など沢山見てるので「トリュフォー」だけで十分なのだ。

ところが三島君の場合は毎回必ず「ジョセフ・フォン・スタンバーグ」とわざわざフルネームで発音する上に、さらにドイツの貴族出身者を表す「フォン(Von)」の響きがフォンッ!と1オクターブ末尾で上がるというか、なんかやけに強調しているようで変なんだよ・・とイチイ君は言い出したのである。

「なるほど、たしかに一音上がるぞ」「あいつスピルバーグやルーカスは苗字しか言わないぞ」「同じ苗字の監督他にいないもんな」と話し出す筆者たち・・。やがて「あいつさぁ、フォンッ!言えば自分がヨーロッパの文明的な香りを醸し出しているように見えるって思ってるだけなんじゃないの・・」という意見に集約されていったのである。

それに三島君の「嘆きの天使」論って何かの本に書いてあるような事しか言ってないんだよな・・という分析が始まり、ついに「三島はジョセフ・フォン・スタンバーグという皆から尊敬を勝ち得そうな名前を覚えただけであって、スタンバーグ監督の作品自体は見ていないのではないか・・」という身も蓋もない結論になりつつあったので、だったら次の飲み会でスタンバーグ映画の話だけをしようじゃないか!という事になったのだ。





その飲み会での三島君の狼狽ぶりと言ったら・・。「モロッコ」や「上海特急」などスタンバーグの他の作品を観ていないことは渋々白状したものの「嘆きの天使」は観たのだ!と言い張る。しかし話せば話すほどボロが出て来たわけだが、可笑しかったのは全員その場で「スタンバーグ」と苗字しか言わないのに、三島君は最後まで「ジョセフ・フォン・スタンバーグ」と例のフォンッ!の抑揚付きで呼び続けた事である。

なぜ映画が好きでもないのに映画サークルに入ったのか?なぜ皆が話している有名な映画を一本でも良いから試しに観てみよう!という気に最後までなれなかったのか・・。三島君は性格的に変な意固地なところが有りすぎて彼の心理は理解できなかったけれど、結局彼は卒業までサークルに居続け、そして社会人になって一か月後のゴールデンウィークに彼の方から全員に対して一方的に関係を断ち切ってきたのだ。

さて今年夏に大学時代の仲間と再会した折、一人の男が風の噂で三島君は社会人になってからサバイバルゲームに目覚めたらしく、週末になると仲間を集って野外戦闘にふけっているとの風の噂を聞いたんだよ・・と言い出したのだが、しかしミリオタ・・と聞いて一同軍事戦略のバイブル「戦争論」の著者カール・フォン・クラウゼヴィッツの名に思い当たり、そして忍び笑いが広がっていった。

もしもどなたか「カール・フォン・クラウゼヴィッツによると戦力は二乗で効いてくるから中央突破しよう・・」と作戦会議の場でわざわざカールから始まる長ったらしい名前、それもフォンッ!と例の抑揚付きで引用している男を見かけたら、それは三島君でほぼ間違いないから「大学時代の知人たちがキミによろしく言っていたよ!」と伝えていただければ幸いである。






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コメント

2017/11/08(水) 14:18:47 | URL | 通りすがり #-
戦力の二乗?それランチェスター第二法則じゃないの?クラウゼヴィッツも言ったの~

2017/11/08(水) 14:55:12 | URL | ほにょ(ブログ主) #-
そうです。ランチェスター理論です。
これ、スタンバーグ同様にクラウゼビッツの本など一行も読んでないのに名前を持ち出す、相手が知らないだろうと高をくくって立派な名前を騙り尊敬を勝ち得ようとする三島君が言いそうなセリフなので「戦力の二乗=クラウゼビッツ」と書いてみました。

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