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壁の向こうから漏れ聞こえてくる音

2017/09/26 12:21:59 | オカルト系 | コメント:0件

最初の海外赴任を終えて帰国した筆者は一時期Aという別会社に出向していた事がある。A社と筆者がもともと所属するB社は資本関係はないもののその時期は新規事業の共同プロジェクトが組まれており、また新入社員の頃よりお偉いさんと気が合わなかった事もあって筆者は体良く追い出された格好になったのだが、勤め始めてすぐにA社には怪談話があることを知ったのだ。

大きな工場ならどこもそうだろうがクラブハウスと呼ばれる施設がA社の敷地内にあった。平成になってからは新人の女工員でも軽自動車くらい持っているが、昭和の昔は通勤といえば電車やバスだけだから深夜まで残業を命じられると家に帰れなくなってしまう。クラブハウスとはそういう社員のための簡易宿泊所の事なのだが、なんとそこに幽霊が出ると言うのだ。

古参社員の話だとその昔はクラブハウスをラブホテル代わりに使う輩がいて(二人ともわざと残業して上司から使用許可を別々に貰い同じ部屋にしけこむ)、特に上司の既婚男性と若い女性社員の不倫カップルがやたらと多かったのだそうだが、一人の女子社員がクラブハウスの一室で自殺してしまい、さらにその部屋に幽霊が出るという噂が出始めたため開かずの間になっていると言うのである。

この話を聞いた時に筆者は事件事故につきものの後付け恐怖小話だと思った。怖い話は大好きだけど正直信じがたい話である。死んだのは生産技術部の〇〇の姉さんで名前はxx子さんと言ったんだよ!とか不倫相手は△△主任といって辞職したんだ!などと情報が具体的だったから自殺自体は本当なのだろうが、しかし自殺した部屋をその後も宿泊施設として使い続けたという事はありえない。だから幽霊話はウソだな・・と思ったのだ。





ところがある年のこと、大規模な生産移管に備えるため中国工場から百人を超える短期研修生を受け入れることになったのだが、ちょうどその時期はその県で開催される大きなスポーツイベントと重なってしまったためホテルが全然足りない事態になってしまった。それですでにQCサークルや業務打ち合わせなど昼間しか使われなくなって久しいクラブハウスを急遽使うことになったのだ。

共同トイレに共同シャワールーム、それと全室六畳ほどの畳の部屋がずらりと並んでいるだけだから準備といったってリース会社に寝具と机椅子を手配するくらいである。新事業開発部にいた筆者は中国語が出来るという理由から世話役を押し付けられていたのだが、中国人研修生たちが住み込み始めてから数日たったころ、筆者は総務課長から今すぐ会議室へ来るよう命じられたのだ。

そこには総務課長の他に中国人のねーちゃん二人と意思疎通出来るくらいの日本語ができる研修生のリーダー役の男がいて、どうやらこの連中が言ってることをオマエが通訳しろ!という事らしい。それで有没有問題(何か問題があるのか?)と問いかけたところ、変なパーマをかけた方の女が「夜になると隣の部屋からカリカリと壁を掻く音がうるさいので眠れない。部屋を変えてくれ」と言ったのだ。

ははあ、もう一人のチンチクリンの女が音の犯人でオレに仲裁しろって事か!と内心ムカついたが、まあ押し付けられたとは言え世話役の一人だからこっちも大人になって「君はなぜ壁を掻くのか?」と聞いたところ、このチンチクリンはハァ?という表情をした後に「違いますよ。私と彼女(変なパーマ女)の部屋の間には空き部屋が一つあるのですが、私もその空き部屋から聞こえる音に悩まされているのです」と言ったのだ。





へ・・・?。つい数日前まで「もう一室だけでも何とかなりませんか?」と県内のホテルに電話をかけまくっていたのに工場のクラブハウスには空き部屋が一つある・・。その空き部屋の両隣に住み込んだ中国女は二人とも深夜になるとカリカリと壁を掻く音に悩まされている・・。そしてこんなの下っ端社員が担当する案件だが何故か総務課長が、それも誰も連れずに一人で臨んでいる。これは・・もう確定だよな。

そしてその疑念を確信に変えたのは、筆者から話を聞いた総務課長が中国人研修生を宥めもせず「分かりました。別の部屋を用意します」と即断したのと、筆者が興味本位で聞いた「その空き部屋には何があるのですか?」という質問に対し「君には関係のない事だ」と言ったきりスタスタと会議室から出て行ってしまった事である。この生真面目な男はかなり動揺していたのだ。

その後で筆者は荷物の搬出を手伝うためクラブハウスへと足を運んだが、なるほど件の開かずの間のドアには「6」という番号と共に「使用禁止」の札が貼られていた。そして怖い話が好きな筆者は中に入ってみたかったのでドアノブを掴んで思い切り回そうとしたのだが、その時怪しげな日本語を話す中国男が「アブナイモノナカニイルヨ・・」と筆者の方を見上げながら言うのを聞いて・・その試みを止めた。

自殺した女性社員は誤って選んでしまった漆黒の闇から脱出したかったのか?、それとも十何年ぶりに両隣に誰かが住み込んだのを知って人恋しくなったのか?壁をカリカリと掻き続けた意味は筆者になどには分かるはずもない。これはもう20年近く前の話であるが、一緒に働いていた同僚の話だと今でもこのクラブハウスは建っているそうである。彼女は今でもその部屋にいて、まだ来ぬ不倫相手をずっと待つ続けているのかもしれない。






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