肩書が多い男の死

2017/07/17 10:33:00 | 日記 | コメント:0件

高校時代の同級生で熊本に移住していたモリヤが死んだ・・という連絡が入った。今年春に手術を受けて1か月以上入院していたことは知っていたが、つい2か月ほど前に「仕事再開!」とフェイスブックに健在ぶりをアップしていたから、来年の日本旅行の際には九州までモリヤを訪ねにいくか・・と思っていた矢先の出来事である。

筆者とモリヤは東京都内の私大付属高校の同級生で、勉強せずともエスカレーター式に大学進学できるのを良いことに新宿のディスコやパブに風俗店で遊び歩いた仲だが、筆者を含む帰宅部の仲間たちと違いモリヤだけはなぜだかバトミントン部の活動を地道に続け、筆者の記憶ではインターハイどころか東京都大会でも勝った記憶が無いにも関わらず何故か主将に祭り上げられていたのだ。

モリヤはどう見ても青春スポ根ドラマに出てくる主人公よりも、コメディ「モンティパイソン」に登場するトラブルに見舞われ続ける冴えない中年男に様な風貌であり、、性格的にもリーダーというより付いてくる派だったから「バトミントン部はよほど人材が枯渇しているに違いない!」などと仲間たちと茶化していたのである。

ただ大学では学部が違ったことと、高校時代さんざん夜遊びしたことの反動から筆者は根暗系の映画サークルに入ったためモリヤら高校時代の仲間とは段々と疎遠になっていき、さらに地方の企業に就職してから香港に十数年もいだためモリヤとの縁は完全に切れていたのだが、それがつい5年前にフェイスブックで実に25年ぶりの再会を果たしたのだ。





モリヤが大手ゼネコンに入ったことは知っていたが、なんでも入社早々に配属された現場でいきなり目の前で死亡事故に出くわした上にその後処理を全部押し付けられたこと、小泉構造改革のまっさ中に予算削減に人切りのおかげで阿鼻叫喚状態だったあちこちのダム建設現場の所長を任されていたことなど聞いたときに思わず笑ってしまったのだ。

ら校内で喫煙してないのに他の生徒の代わりに体育教官にぶっ叩かれる、頭のおかしい通行人に絡まれる、中央線で泥酔客にゲロをひっかけられる、吉祥寺の本屋で万引き客に間違えられる・・。実際こういう訳の分からない事態に見舞われてマンジリともせずにいる運の悪い男というのがモリヤの持ち味だったからである。

40半ば過ぎてもモンティパイソンぶり相変わらずだな・・とPC画面上の彼を見ながらそう笑ったのだ。それで熊本でも様々なトラブルに見舞われてさぞかし大変な毎日をおくっているのだろう・・と想像したのだが(実際昨年の熊本地震でもモリヤ宅は甚大な被害にあったそうである)、しかし奴の肩書を見た筆者はちょっとビックリしてしまったのだ。

モリヤは数年前に独立し、資格を生かして自分の事務所を開いていたのだが、その責任者の他に業界団体の専務理事に内容不明な社団法人の事務局長、国会議員陳情団の事務局長、ロータリークラブのなんとかガバナー、そして大学同窓会の熊本県支部事務局長にマンション管理組合の理事長、それと託児所だか幼稚園の理事長といった肩書がずら~りと並んでいるのだ。





お前・・こんな役職ばかり押し付けられて寝る時間あるの?と聞いたところ、本人はそれに対して「大変なんだよ」とか「困ったもんだ」なんて気弱な発言をするわけでもなく、しかしその一方「頑張らなければいけないんだ」みたいな気負いも全然なくて、最近庭の雑草が伸び始めてね・・くらいの微感覚でいる様子だったのである。

モリヤにそんなマルチな才能、さらにリーダーシップがあるようには全然思えなかったのだが、しかし確かに高校時代の奴から「やってられないよ」みたいな弱音は一度も聞いたことがないし、コンパで飲みすぎてゲロ吐いてる奴の世話や集金係みたいな皆が面倒くさがる仕事を文句ひとつ言わずに淡々とこなしていたモリヤの姿を思い出したのだ。

そう、確かに大人数の旅行団の幹事や冠婚葬祭の仕切り、立ち上げ直後のベンチャー企業の総務部長や選挙運動の本部長みたいな面倒な仕事こそモリヤには打ってつけなのである。他人の世話を焼くことが宿命と自分自身に折り合いをつけていたのか、あるいは(おそらく筆者はこっちだと思うが)面倒という感覚が他の人間に比べると相当薄かいことが奴の多重肩書人生のキッカケになったのだと思う。

おそらくモリヤの周囲にいた人間は外見とは裏腹の奴の脅威の忍耐力および仕切り能力特に気が付き、前述のような事務局長的な仕事を本人の意思とは関係なくどしどしモリヤに回していったが、モリヤ自身は別段それが大変だとは感じておらず(微量もしくはゼロ)、したがって熊本市内のホテルで開催される団体懇親会の懐石ディナーを毎週3回食わされる事態になっても別段何とも思わなかったのではないかと思う。





モリヤもこの超感覚と体力をずっと持ってれば10年後には熊本県選出の衆議院議員、あるいは熊本市長、もしくは少なくとも自民党県会議員団幹事長か県連事務局長くらいにはなっていたのだろうが、しかし数か月前に病魔に侵されていた事が発覚したのだ。尚なんの病気なのかは筆者は知らないしもちろん聞く気もなかった。

「ありがとう。これからはあまり急がずにゆっくり行くよ」。モリヤがチャットにそう書いてきたときに「奴にもこういう気弱な感覚があったのか?」とちょっと驚いてしまったが、おそらく手術後の体力低下はあまりにも激しく、タフと言うか忙しさ感覚が欠如したモリヤも目の前に残った仕事をこなす事が出来なくなっていたのではないかと思う。

さてモリヤの葬儀は昨日熊本市内の寺院で執り行われる様なのだが、異国にいる筆者は当然そこへは出向くこともかなわぬから近くの教会で彼のために祈り、そして一杯のウィスキーを飲みながら彼への追悼の思いを込めてこの日記を書くことにしたのだ。文章が変なのはただいま酔っているからである。

さてさてモリヤよ、どうせあの世でもいろんな仕事を回されることになるだろうけど、着いた直後はゆっくり休めよな。それとオレもしばらくしたらオマエの所へ行くから、その時は悪いけど見守り役として面倒見てくれよ。あとあの世じゃ熊本日航ホテルじゃなく1984年の夏みたいに新宿のパブでまた一緒に飲み明かそうぜ。






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