ミニ東芝ストーリー

2017/02/26 13:35:04 | ニュース | コメント:1件

東芝関連の報道を見るにつれため息ばかりつくようになってしまった。経営陣の驚くべき見通しの甘さと無責任体質、そして子会社ウェスチングハウス社長ダニー・ロデリックの背後にいた連中が仕掛けた罠にまんまとはまり込んだ見識の無さ。東芝には筆者の同級生もたくさん入っているから、彼らのことを思うと胸の痛む思いである。

日本でも巨額の隠し負債を抱えた会社を誰かに売りつけてババを引かせるのは経済ゴロの常套手段で、石坂泰三や土光敏夫が社長を勤めていた頃の東芝ならそんな罠などとっくに見抜いていたはずなのだが、どこかの評論家が言う通りぬるま湯に浸かった現代のお坊ちゃん役員にはそういう目は養えなかったたしい。

しかしこんな話は何も東芝に限ったことではなく、筆者が勤めていた会社だってスケールは百分の一に落ちるけど現実に起こっていたのだ。それは今から12年前の事で、しかるべき筋を通じて「この会社を買収しないか?」と持ちかけられたのが香港証券取引所に上場していた売上200億円ほどのDGE社(仮名)である。

このDGE社はルドルフ・ギュンター(仮名)というドイツ人が創業者兼会長を務めていて、筆者の会社や競合他社から基幹部品を買い、その他の部品と組み合わせて完成品にした後で社長の母国ドイツへ販売していたのだが、基幹部品という商売柄いつも買い叩かれる構造にいた筆者の会社にとって最終市場に近いところにいるDGE社は魅力的な案件に見えたのである。





しかし担当役員に命じられた筆者がDGE社を調べてみたところ、ここの社員は上から下まで取引先からバックマージンをせしめている不正の温床であることが判り、さらに工場の生産キャパシティーやドイツ市場での平均単価とシェア状況、それと諸々のコストから売上や利益を算出したところ、これが相当水増しされている疑いが出てきたのだ。

それで「DGE社は粉飾決算してますね」と担当役員に報告に行ったのだが、話を聞き終えるや「そうは言ってもしかるべき筋から早く買収しろ!って急かされてるんだぁ・・」と担当役員は頭を抱えてしまった。この筋とは筆者の会社のオーナー一族の関係者で、話を無下に断ると自分の立身出世に響くことをこいつは恐れていやがったのである。

このアホ役員は結局DGE社との共同開発とか共同調達なんてプロジェクトを立ち上げて買収を地ならしを始めたのだが、異変に気付いた本社の財務部門がしゃしゃり出てきてギュンター氏と直接交渉をしたところ、なぜこんなに儲かっている会社を売ろうとしているのか?という質問にいつもは仏頂面で愛想も何にもない男がニヤッと笑ったというのだ。

「あの不気味な笑いを見たときにこれはヤバいぞ・・と思ったね。それで買収話は一旦棚上げにして共同プロジェクトだけに専念しましょう!って申し出たら、翌週になって相手さんは弁護士を通じて一切の約束事の破棄を送りつけてきやがったんだよ!」いかにアホな役員でも最低限の直感くらい持ち合わせていたことが救いとなった。





その後DGE社が他の会社を当たったかどうかは知らないが、全てが明るみに出たのは数ヶ月後のことである。博打好きの香港人は平日朝に放映される「今日の証券通信」というラジオ番組を熱心に聞いているのだが、出演した株アナリストが「DGE社の株価は実態を表していない!」と発言したのである。

「我が社は財務諸表をいじくってない」「アナリストが言うことは嘘っぱちだ」などありとあらゆる手段でDGE社は弁明に努めたが、株価の暴落はとめどもなく続き、ついに要注意銘柄へ指定された上に香港証券取引員会から調査が入る事態になってしまった。そしてそこからまあ出てくる出てくる・・、事態を見守っていた一同は全員唖然となったのだ。

粉飾決算なんてのはまだ良い方で、ドイツの子会社が運営デリバティブで巨額の損失を抱えていたり、香港にある子会社の不可解な巨額金取引での損失、中国・珠海市の下水道工事にからむ巨額の損失なんて「あんたの会社はそんな事までやってたの」みたいなのがゾロゾロ出てきたのである。ギュンターが不気味にニヤッと笑ったのはこのババを引かせる気だったのだ。

結局DGE社は破産となってしまい、ギュンター氏は株主から訴えられてお縄頂戴になったので刑務所で余生を過ごすのかな・・と思っていると、半年もしないうち思わぬ形でこの男の消息を知ることとなる。2007年10月19日スペイン・マヨルカ島で遊泳中に死亡。死因は溺死。表向きはそういう幕引けだった。





後年会社のOB会の席で引退されて久しい元海外営業部長に事の顛末を説明したところ「ギュンターは畑違いの商売に手を出す男ではない!」と激昂し、彼が1960年代にドイツの専門小売店組合のバイヤーとして日本にやってきてからの仕事ぶりを話し始めたのだが、人間追い込まれればなんでもやるものだし、それに社員たちの不正を放任していたというのは彼のビジネスに対するふざけた姿勢を如実に物語っているではないか。

イトマンに伊藤寿永光や許永中が入り込んだようにスキがある会社には悪党が住み着いてしまうものなのだ。だからギュンター氏が偉そうに社長室で踏ん反り返っているうちに、会社の下の方では彼がバカにしていた香港人たちがシロアリのように屋台骨に食いつき始め、やがて側近たちまでもが腐っていったのだろう。

そしてもはや自分は破滅するしかない事を悟ったギュンター氏は(誰かの入れ知恵だろうが)お人好しの日本企業にババを引かせる事にし、隠然たる力だけは持つオーナー一族が社内に蔓延っているという構造的欠陥を持つ筆者の会社に目をつけたという事らしい。この罠を切り抜けられたのは全く僥倖であった。

だから東芝もおそらくウェスチングハウス(WH)買収時点で筆者の会社にあったような内部の構造的欠陥を悪党たちに見抜かれていて、ダニー・ロデリックWH社長と日本の原子力行政を預かる実力者たちをテコに全てのババを引かせる絵が描かれていたに違いない。19万人を抱える巨大企業のトップはそれにまんまとはまり込んでしまったのだろう。






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コメント

情けないなぁ

2017/02/26(日) 16:14:10 | URL | K-chan #-
まぬけな経営陣は自業自得かも知れませんが、気の毒なのは社員とその家族。

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