あの世に持って行くもの

2016/12/13 12:06:43 | 人間万華鏡 | コメント:2件

筆者の好きなアマチュア怪談師の話で、大好きだった祖父が亡くなった後で化けて出て来た話がある。まあこんなのはよく聞く怪談話だが、変わっているのはこの爺ちゃんは刻みタバコと赤貝の煮付けを頼むわぁ・・と棺桶に入れて欲しいモノをこの怪談師に何度も頼みこむのだそうだ。

それで婆ちゃんや叔父叔母たちにこの話をしたところ、幽霊話など信じない上に爺ちゃんが一番好きなものが間違ってる!と言い張られてしまった。皆さんよくご存知の通り例えばカレーライスが大好きでも一年中カレーばかり食べてるわけじゃないし、ヒマだから大して好きでもないけど磯釣りなどしていれば釣竿を棺桶に入れられてしまうものである。





ところがこの怪談話、死んだ爺ちゃんが欲しいものを入手するため死ぬほど(実際死んだんだけど)頑張って数々の超常現象を起こすことに成功し、あまりの不気味さに震え上がった遺族が怪談師の言う通りに刻みタバコと赤貝の煮物をどっかから買ってくると怪現象はピタッと収まったというオチである。

身内に死なれて葬式を取り仕切った経験がお持ちの方ならお分かりの通り、故人が何を持ってあの世に行きたいのか?というのは長年一緒に暮らそうが案外判らないものである。例えばデブ専とかスカトロビデオ愛好家や女装マニアなど特殊な嗜好の人の場合、奥さんや娘がその趣味を把握していることはまず有り得ない。





それと筆者の身近な例でいえば、父親が亡くなった際にも棺桶に何を入れるのか?については最後まで頭をひねってしまったのだ。なんせ50年連れそった母親は生まれてこのかた自分の事だけしか考えて来なかった上に錯乱していて支離滅裂だったし、筆者も20年近く別々に暮らしていたから、父の中の優先順位がさっぱり判らなかったのだ。

それで亡父が大学時代に師事して後生大事に本棚に入れてあった折口信夫の学術書と我が家で飼っていた歴代の猫の写真を棺桶に入れて焼いたのだが、火葬場の待合室で待っている間に「やっぱり向こうへの道中腹が減るから食物を入れておくべきだったかな・・」などと考えてしまった。いや実は焼いてる最中に浮かんだのは食い物だけでは無い。





チャイコフスキーの第6交響曲「悲愴」にパイプと刻みタバコ、わざわざ遠くのコーヒー屋から取り寄せていたブルーマウンテンコーヒーに値の張る一眼レフのカメラ、ラドーの腕時計に常に最新版を買い求めたビデオやDVDなどの映像機器、そして食い物はタコの刺身と播州手延べ饂飩、それから本棚にぎっしり並べられた時代小説など挙げればキリが無いのだ。

同じことを繰り返すが、人間が死んだ直後というのは遺族の気が動転しているため、あの世へと何を持たせたら良いのかなど的確に思いつかないものである。それで後から後悔することになるのだが、だったら最初から何が欲しかったのか言ってくれ!と思ってしまう。これこれを棺桶に入れてくれ・・とか、死んだらビル・エヴァンスの曲をかけといてくれ・・というようなことだ。





さて筆者もその時に備えてどう葬って欲しいのか?を考えることにした。筆者は食い物にうるさいから女房はフォアグラやリブアイステーキとか棺桶に入れそうだけれども、正直食い物は京樽のイカ大葉巻きくらいで結構なのである。そう、棺桶に何を入れて欲しい?と問われると、人生の中で何に楽しみを見出していたのかの優先順位が見えてくるから何とも不思議だ。

それで一日考えて出た結論は、ジョン ・ル・カレの「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」と「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」の文庫本、それとジミ・ヘンドリックスとケイト・ブッシュのCD数枚にウォン・カーウェイ監督の「重慶森林」のDVD。後はスコッチウィスキー1本とマルボロ・ライト1カートン、そして最後に恥ずかしいけど女房の写真、それだけあれば十分である。






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コメント

2016/12/13(火) 13:56:44 | URL | starchild #/9hBKkrU
人間界と電話できる、霊界携帯電話とか(笑)

何も持って行けません

2016/12/13(火) 23:33:32 | URL | oyoyo #-
亡くなった親父の戦記物の本が山のようにありました。
邪魔くさかったので、一部を残して知人にあげたり捨てたりしました。
亡くなった夫のLPレコードやCDを大量に処分したとかいう話が多いね。

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