すれ違うインド人

2016/11/25 09:07:16 | 昔話 | コメント:1件

世の中には何故だか頻繁に会う人と全く逆の縁が無い人がいる。例えば筆者の場合、ドバイ在住のラカというインド商人は毎年ヨーロッパの展示会では1日4回~5回も出くわすだけでなくバカンスで訪れたプーケットでは同じホテルの同じフロアに泊まっていたり、ミラノの空港から市内へと向かう電車の中でも隣り合わせの席に座るなど何か因縁めいたものを感じたのだ。

アンタとは何か縁があるねえ・・・とお互い神妙な顔で言い合うのだが、じゃあラカ氏とのビジネスが上手く行ってるのかと言うと案外そうでもなく、ラカはむしろ筆者のライバル会社のお得意さんなのであった。まあ取引が微々たる額でも因縁があれば何かの時に即ビジネスにつながるものだから、こういう出会いを大事にするのは商売人の鉄則だ。

しかし同じインド人でもラカ氏と全く逆なのがスペイン在住のラジュ・バラ二氏であった。この方は筆者の会社とは随分古くからの取引先で、実は筆者が生まれて初めて海外出張を計画した時に一番最初にアポを快諾してくれた方なのだ。当時筆者は電子部品ではなく完成品を担当しており、ドイツからイタリアを経てラジュ・バラ二氏のいるスペイン・マラガを訪れる計画だったのである。

スペインと聞くとマドリッドとバルセロナの二大商圏都市を思い浮かべるが、実はモロッコやアルジェリア、モーリタニアなど北西アフリカ向けの密輸基地としてのマラガは大きな存在で、ラジュ・バラ二氏の一族はその親玉的な存在だったのだ。実際筆者の会社で何か新製品が出ると数は少なくとも取り敢えず買ってくれたのも彼の会社だったのである。

しかし運が悪いことに出張計画中に欧州通貨危機が深刻化し、もともと財務体質が弱かったイタリアの最大手取引先が瞬く間に倒産してしまっため筆者の初出張は一時停止の憂き目に遭ってしまい、筆者は泣く泣くラジュ・バラ二氏に「今回あなたと逢えなくなってしまったことを残念に・・」で始まるテレックスを打ったのだ。





まあ1年もすれば通貨も安定するだろう・・と思っていたが、数日後に筆者は突然上司に呼ばれて「来月から電子部品営業部に移籍せよ!」と命じられてしまい、結局夢のヨーロッパ出張はキャンセルとなってしまったのだが、その代わり1年後に香港支店に赴任の身となったから、後から考えればこの人事自体は悪いものではなかった。

そして電子部品部に移ってからはアメリカや中国、そしてヨーロッパなどいろんな国を訪れるようになったが、ある時香港の展示会で筆者の会社のブースを訪れた方の名刺を整理していたらラジュ・バラ二氏の名前を見つけたのである。ちなみにバラ二氏は完成品のバイヤーであり部品を買うことは無いのだが、どうもどんなニューテクノロジーが発表されたのか見に来たらしい。

へえ、あの人が来たのか。また会えなかったな・・と最初の年は思うだけだったが、実はその次の年もその次もラジュ・バラ二氏は展示会を訪れていていた事を毎度展示会の後になって知り、直接ビジネスをする関係ではもう無いけれども(それに部品売りだと注文単位のケタが2つ違う)、もしも会えるようなら挨拶くらいしよう!と思ったのだが・・・、これは全然会えないのである。

何年目かのヨーロッパでの展示会で筆者は1週間の開催期間中6日間にわたって受付を担当したのだが、なんとラジュ・バラ二氏はそのたった1日の休みの日に現れたし、また別の年には明らかに筆者がその場にいたのに、おそらく他の客の対応をしていたのか彼の姿かたちさえ見ることなく再び会えずじまいになってしまったのだ。

それである年は受付担当を任された女に「ラジュ・バラ二って人が来たら俺を呼べ!」と命じたのだが、運悪く電話がかかって来たのはドイツの大手客と会食の最中だったために再び会えずじまい。そして別の年には冗談でなくトイレに行ってる時に現れるとか、筆者はその場にいるのに何故か気付く前に名刺だけ置いて立ち去っていたのである。





だったら展示会の前に「会いませんか?」ってメールを打つとか、スペインまで会いに行けばいいじゃないか!と思うだろうが、これは一種の運試しみたいなものだから筆者も意地になっていたのである。それに彼だって一度アポを入れて来た日本人の若造の事などいちいち覚えてないだろうし、だいいち彼は完成体しか買わぬからビジネスにはならないのだ。

で、それで結論はどうなったの?と言うと、展示会で彼の名刺を見続けるだけで(途中で名前がラジュ・ヒロ・バラ二に変わっていた)、なんと最初のアポキャンセルから20年たってもついぞ一度たりとも彼と会うことは叶わなかったのである。ご縁が無い人というのは世の中本当にいるものだけれども、ここまで縁遠い人と言うのは珍しい。

しかし仮にラジュ・バラ二氏と会えたとしても「実は20年前にアポをキャンセルしてから・・」以外は何も話すことが何も無いのだから向こうも困ったに違いない。だから会えなくてもよかったのだが、にもかかわらず筆者がなぜこんな事を日記に書いたのかというと、一昨日ヒマに任せて昔取引のあったイタリアやフランスの顧客の名前を検索していた時に彼の事を思い出したのである。

それで彼の名をグーグルに打ち込むと案の定その昔何度もL/C(信用状)ネゴ書類にタイプしたスペイン・マラガの住所が出てきたのだが、別の検索結果を開いたら何とそこには「157サランガニストリート、アヤラ・アラバン、モンテンルパ」という住所が現れたのである。こ、これは・・、ラジュ・バラ二氏は現在は今現在何とフィリピンにいたのである・・。

たった一度アポをキャンセルしただけでここまで縁遠くなってしまった男、毎年筆者の周辺にチラッチラッと現れる姿なき影の男ラジュ・バラ二氏。それが筆者の家から直線距離で20キロほどのところに住んでいる・・・。それで何だか不思議な気分になったのだけれども、でも今までの経緯を考えると・・、それでも彼とは会うことは無いだろうな。






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コメント

2016/11/25(金) 13:21:34 | URL | starchild #/9hBKkrU
後者の場合、中途半端に縁があるのかも。
広い世界で、何回も会うチャンスがあったけど、わずかな時間差であえなかった。

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