幻のフローシャイム

2016/10/30 09:12:46 | 旅行 | コメント:0件

バンコクのセントラルデパートでデッキシューズを探している時にふと紳士靴の陳列を見たらそこに信じられないものを見つけた。フローシャイム社のペニーローファーの定番バークレーである。筆者はこの靴を今から数年ほど前には必死で探し求めていたのだ。

高校入学時に学校の売店で学生服やらカバンを物色している時にローファーを見つけた筆者はそのデザインにすっかり魅せられてしまい、15歳の春からサラリーマンに見切りをつけた数年前まで実に30年に渡ってローファーを履き続けた人間なのだ。

もちろん高校から大学にかけては安物ハルタのローファーを履いていたが、給料をもらえる立場になるとリーガルにカーストアップし、香港駐在になるやバスやコール・ハーンなんか履くようになったのだが、困ったのは筆者は角質やタコが出来やすい足の持ち主で、月に一回はハサミでチョキンと分厚くなった皮を切る必要があったのだ。

「キミィ、だったらフローシャイムを買いたまえ!」と言ったのは海外営業の青木部長である。この御仁は部長になる前は長らくロンドン支店長を務めていて、上から下までブリティッシュなブランドを纏っているキザな紳士だったが、なんと靴だけはアメリカのフローシャイム社の製品で、これは若い頃ニューヨーク支店に勤務した頃から変わらないのだと言う。

「バリーやグッチも良いけど男はやっぱりフローシャイム」と子供の頃よく聞いたどこかのビール会社のCMみたいな事を言うので、まあ半信半疑で香港島東部フォートレスヒルの行きつけの靴屋に行ったら、そこのヘンテコリンな親父が「お前分かってるじゃないか」という表情をして奥の倉庫からバークレーを持ってきたのだ。





値段はなんと700香港ドル(当時のレートで一万円)ぽっち・・・。なんか間違ってるんじゃないか?と思ったが、この靴を履いてみると「な・何これ?」と思うほど足に馴染んでくる上にすごく頑丈なのだ。しかも驚くべきことにいくら歩こうが角質やタコとは全くの無縁となり、半年もするうちに筆者の足は赤ん坊のようにツルリン!としてきたのである。

なお齢70を超えた御仁がこの日記を読んだら「フローシャイム社はかつては世界一の靴メーカーだったが、経営が行き詰まってインド企業に買収され、最早かつての栄光が嘘のように落ちぶれてしまった事を知らんのか!」と言うに違いないが、例え本体が売却されても長年培ってきた設計ノウハウの蓄積と言うのはそう簡単に消え去るものでは無いし、現実に当時はまだまだ秀悦な靴を作っていたのだ。

それで筆者はすっかりフローシャイム社のファンになり、なんと15年間にわたってこのバークレーのブラックとブラウンを買い求め続け、ストレートチップが基本のフォーマルな場でもダークスーツ姿に本来ご法度なローファーで現れることもしばしばあったのだ。

それとバークレーは安い割に案外と頑丈で、それにいくら歩いても足への負担が少ないことからアメリカやヨーロッパ、ロシア、中近東にインド、パキスタンから中国奥地なんかもこの靴でずっと歩き渡ってきたのだが、それが2010年頃だか行きつけの靴屋に行ってみたら「バークレーが全然手に入らなくなってしまった」と言われたのだ。

生産中止になったわけでは無く、今でもフローシャイム社の香港代理店には入庫されているのだが、雑誌かテレビか何かで香港の有名なスターが「自分はずっとフローシャイム社のバークレーを愛用している」と取り上げられた事でファンが一気に増えてしまい、店に入荷するなりすぐに売り切れてしまうようになったのだと言う。





しかし何事も熱し易く冷め易い香港人のことだから、そんなの数ヶ月で元の鞘に収まるだろうと思っていたのだが、それどころか状況は更に悪化するだけで筆者が会社を辞める一年前にはどの靴屋に行っても店員に申し訳ない顔をされるだけで、もはや全く手に入らない幻の靴となってしまったのである。

その幻のバークレーが今目の前にある。それで値札を見たら案の定大した値段ではないので、だったら一足買ってみるか!と女店員に自分のサイズを言ったところ、5分後に箱を抱えて戻って来て「これより大きいサイズの茶色しか在庫がありません」と案外流暢な英語で言った。

それでこの靴は人気があるのか?と聞いたところ、ええ、知名度が高いわけでも無いのになぜだか固定客が多くて品切れになる時が多いのだ・・と言う答えである。なるほど、バンコクでも筆者みたいな奴が結構いるのだな・・と納得してしまう。

それで持って来たバークレーを試しばきしたのだが・・。この「大きいのしかない」の大きいというのが、こんな巨大な足してんのはケルトの巨人系種族くらいじゃないか・・と思うような代物で、こんなのしか無いんだったらサンプル陳列しなきゃいいだろうが・・と呆れてしまったのだ。

なんと女房の足のサイズから筆者までの間がスッポリと在庫ゼロな事が分かり、一時の喜びが完全に崩壊して憤慨しながら店を出る筆者。結局バークレーはまた幻の靴となってしまったのである。まあ別に今はスーツ着なくなったんだから困らないんだけど、でも増産とか考えないのかね?インド人のオーナーさん。






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