戦後を逃げ延びた白衣の悪魔たち(2)

筆者の祖父は梅田徳次郎という名前で、当時の多くの日本人同様に大した学の無い人間だったが、731部隊長である石井四朗と同郷という縁で下級隊員(軍属)として徴用され、庶務や運転、伝書鳩養育など何でも係として従事していたようである。

最初の勤務先は部隊本部のあるハルピン郊外の平房だったが、やがてハルピン駅近くの支部に勤務となり、祖母と4人の子供たちともども市内の馬家溝(まじゃこう)という白系ロシア人が多く住む瀟洒な住宅地に居を構えることになった。

祖父と似たような学歴の人間が赤紙一枚で前線に送られて虫けらのように死んでいったのとは対照的に、731部隊の給料や待遇はビックリするくらい良いので、まったく自分たちはどこまでツイているのだろう!と喜んでいたそうである。





さて外地の日本人社会では良くあるように731部隊も隊員の奥方たちで構成する○○婦人会なる団体があって祖母もそのメンバーに組み込まれたのだが、同じくハルピン市内に居を構える奥様たち(将校以上)と付き合ううちに「夫の配属された部隊には何かがあるな・・」という疑念が深まっていったらしい。、

防疫給水部という正式名称から浄水器作りの技術者だけでなく保健所の様に医者が働いているのは理解できるが、奥方たちが話すご主人像というのはそんじょそこらの町医者なんかじゃなくて、医学専門学校出どころか帝大医学部出身、それも病理とか微生物研究に従事する超エリート研究者だらけだったからである。

それと部隊には祖父と同じような単なる用務員的な下っ端隊員たちも沢山いたらしく、尋常小学校での祖母は当然ながら彼らの奥方の方が気が合ったに違いないのだが、不思議なことに下っ端の隊員たちのほぼ全員が千葉県の成田あたりの出身者ばかりで占められていたというのである。





いくら陸軍の将軍とは言えワンマン経営者みたいに人事のえり好みが発揮できるというのは尋常でない。それで祖母や同じような疑問をもつ奥様たちは一体部隊では何をしているのか?と夫に聞いたらしいのだが、どのご主人も全員漏れなく機密事項を理由にがんとして口を閉ざしたままだったそうである。

超エリート医学者と同じ地域出身の隊員、さらに破格の待遇と妻にさえ何も言えないほどの秘密主義・・・。どうやら夫のいる部隊は医学関連の研究機関であり、外部に絶対漏らしてはいけない秘密を抱えていることは余程の阿呆でもない限り判る。

しかし祖母もまさか生体実験をやっていたとは当時は知らなかったのだそうなのだが、戦後日本に引き揚げてきた後に部隊の恐るべき実態に気が付いたらしい。そのきっかけは昨日の日記の冒頭に登場した日本医学会の重鎮であったS教授その人である。






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