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ある階級へのレクイエム

永六輔が亡くなったというニュースを聞いた時に筆者は真っ先に亡父の事を思い出した。筆者の父親は永六輔よりも5歳ほど年上だが、なぜだか知らぬが永六輔と小沢昭一、そして野坂昭如の3人が好きで、テレビ番組などでこの三人が出てくると知るや愉快そうに見ていたのである。

筆者の父親はテレビよりも書籍という御仁で、観る番組も時代劇くらいだったからテレビ黎明期の放送作家たちにシンパシーらしきものを感じるのも変なのだが、ここ数年立て続けに無くなった小沢、野坂、永の追悼記事を読み返すうちに彼らと父親との間にある種の共通点が何となく見えてきたのである。

それは戦前の中産階級、左翼風の言い方をすればプチ・ブルジョアジー出身であるという事である。野坂昭如と聞くと筆者にはタキシードに下駄をはいた野蛮なオヤジと言うイメージが湧くが、経歴を見てみれば戦前の旧制新潟高校から早大仏文科に進んだようにどこぞの馬の骨では決してない。

戦前の旧制中学(5年制で現在の中学と高校に相当)の学費は当時の公務員の初任給40%に相当と大変高額なため小学校からの進学率は10%を切っており、池波正太郎や松本清張のように大変優秀な頭脳の持ち主でも当時の平均的な家庭の生まれであれば小学校からせいぜい高等小学校(2年制)に進むのが関の山であったそうである。





小沢昭一が旧制麻布中学、永六輔も旧制早稲田中学を経て早大仏文科に進んだように、筆者の父親も旧制府立中学から国学院の予科・本科に進んだ事から、彼らは全員貴族や財閥とは言わないが豊かな階層の坊ちゃんであり、日本全体を企業に例えれば高卒の工員だらけの中で一握りの大卒エンジニアのような存在であったようだ。

それで父親の趣味を振り返ってみたのだが、時代小説以外に好んで読んでいたのは遠藤周作と北杜夫というこれまたプチブルジョア階級の出身者であり、バラエティ番組の出演するタレントでもお上品なクレージー・キャッツが好みだったのだが、その反対に筆者が大好きだったザ・ドリフターズなどはとにかく毛嫌いしていたのである。

さらに大衆芸人や俳優・女優、テレビタレントから野球選手など父親が好きだった人間を思い出してみるとこれが見事にビンゴで、要するに父親は堅物であれ素行がダラシナイ人間であろうとも、ただただ自分と同じようなプチ・ブルジョアジー出身者だけを対象にしていたようだ。

家には住み込みの書生や女中が居て、週末は円タクに乗って三越まで買い物に行き、長じてはドイツ語を学んで蓄音機でクラシックを聴き、哲学を論じていずれは社会をけん引する幹部候補生の身でありながら、いざデビューする段になったら戦争で全てが消し飛んでしまったという皮肉な体験を持つ世代とでも言うべきだろうか。





敗戦によって徹底的な虚無感を受けたためか筆者の父親には権力と社会制度に対する強い反発心を持っていたのだが、その一方大衆的なものへの嫌悪感と言うか一種の侮蔑心持ち合わせるという矛盾した精神構造をしていたことが思い起こされた。

そう考えると、野坂昭如や永六輔は一体なぜ何でもかんでも怒っていたのか?というのが何となく判るような気がしてきたのだ。彼らは単に自分たちプチ・プル階級が戦後の平等化政策のなかで存在を失っていき、自分たちが心底バカにしていた下層階級が増えて行く事を本能的に嫌っていたのだろう。

なに事も冷笑的な人間観を持っていた父親にとって永ら三人は似たような環境に生まれ同じ価値観を持つ同志の様な存在だったのだろう。そう考えれば父親が彼ら三人の事をとても温かい目で見ていたことも肯ける。

しかし昭和40年代以降は一億総中流となり出自が卑しく人物も如何わしい人間が跋扈する時代。戦前のような本物の教育を受けた高潔な人士が社会を統率すべきだという理念は薄れていき、そして彼らの死と共に最早完全についえてしまったのだろうか・・。そう考えるとなんだか大切なモノを失った気がする。






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ネット社会になってから、インテリの価値が下がっていますね。

身近なところでいうと、フィリピンの情報も、どっかの観光客のブログ情報そのまんまってことが多いです。書き手、発信側に知性が無いってことなんでしょう。

そういう意味においては、本ブログの価値は日々高まっているといえるでしょう(笑)


 

そういえば、大橋巨泉さん、なくなられたのですね。
はっぱふみふみ。。。

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