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崩れていく脳内幻想

大学時代に良くバンコクに遊びに行っていた筆者は毎晩のようにホアランポーン駅前に出向いては、どぶ河の脇にゴザを敷いて安酒とソムタムという辛いサラダというツマミを出す通称ゴザ酒場に飲みに行っていたのだが、筆者はそこで働く女の子たちにかなり憐憫の情を抱くようになっていった。

数十人いる彼女たちはタイ東北部ロイエット県のスワンナプームというド田舎村の出身で、農作業の手が空いた時期になるとバンコクに出稼ぎに来るのだが、ふだんゴーゴーバーや路上売春婦なんてすれっからしのタイ女ばかり相手にしている筆者にとってゴザ酒場の娘たちは別の意味で新鮮なのだ。

すご~く純朴なのである。一応酒が入るからこっちもタイ語で猥談なんかするのだが、そうなると顔を赤めてしまうしお触りなんてトンデモナイ世界なのだ。それに彼女たちのエピソードを聞けばこれがまあ赤貧洗うが如しの世界だから(当然全員とも小学校卒業である)、筆者など生計の足しになればと言われた料金の倍くらい払っていたのだ。

ただ筆者も就職すればそうそうバンコクには行けぬし、彼女たちも田舎娘らしく22~3歳になれば田舎に帰って結婚しお母さんになってしまったのだけれども、中にはゴザ酒場に客としてやって来た日本人と結婚する娘も出てくる訳で、数年後に日本国内から投かんされたらしき手紙をひょっこり受け取ったりする事も何度かあったのである。





ニーもその一人で、平仮名で書かれた手紙には某都市の住所が書かれてあって、自分がバスの運転手と結婚した事、小さな娘が一人いてもう一人妊娠中である事、夫の両親と同居中である事など近況を知らせてきたのだが、筆者はその時「日本で大丈夫かなあ」と不安に思ったのである。

というのはニーはゴザ酒場にいた女の子の中で一番純朴で、それに何となく暗い影が付きまとう薄幸そうな雰囲気を漂わせていたからだ。「バンコクは嫌い。田舎に帰ってお母さんと暮らしたい」と涙を流していたニーの姿から、日本に来ても近所に馴染めず疎外されているニー、姑にいじめられているニーの姿が思い浮かんだのだ。

しかし筆者はその時香港赴任を直前に控えていたし、それに飛行機で片道2時間近くかかる某都市など仕事でもプライベートでも行くつもりはなかったから適当に返事だけ書いて後はナシのつぶてになってしまったのだが、今から数年前にフェイスブックの友達リクエストにニーの名前があるのを見つけたのである。

実に20年ぶりである。早速リクエストを了解してフェイスブックの繋がりが出来たのだが、そこにアップされているニーの写真を見た時に筆者はちょっと驚いてしまったのだ。どうも洒落たカクテルバーらしき場所で白人男性とかなりファッショナブルな若い日本人女たちに囲まれたニーがにんまりと笑っていたのである。





「昨日は盛り上がっちゃったね。来週もまた飲もう!」といったコメントが羅列されている処を見るとニーはバーで働いているのではなくバーの常連客のようだ。それと他の写真もイタリア料理店やフレンチカフェとか、茶髪にド派手なアクセサリーを身に着けた二人の女の子(どうも娘らしい)とのプリクラなんかがアップされていたのである。

な、なんだこれは?と戸惑う筆者。言っておくがこれが普通の日本人の女の子なら別になんとも思わないが、筆者の記憶では当時のニーは40歳を超えていたし、それにバンコクで「さびしい、つらい」と涙を流していた頃はもちろん化粧ゼロで服装も穴の空いたTシャツにジーンズ、それとサンダル履きである。

場末のスナックのホステスになっていて労務者らしきオヤジに抱きつかれている姿ならまだしも、六本木や麻布十番的なバーでカクテルグラス片手に談笑しているニーの姿が頭の中で連結しないのである。そう思ってる最中にニーからメッセージが来たのだ。

「久しぶり!元気してる?」と流ちょうな日本語で書かれたメッセージには離婚して二人の大学生の娘と一緒に暮らしている事、仕事は整骨院チェーンのマッサージ師をしているが給料が安いから大変な事などが書いてあったが、最後の方に「最近は英語の勉強がてら外人が多いバーで飲み歩いている内にオーストラリア人の恋人が出来た」と書かれてあったのだ。





なるほど写真を見るとこの白人のオヤジと手をつないでいるシーンが頻繁に出て来るし、それにシンガポールやドバイに旅行したらしき写真にも(かなり高そうなホテルに泊まっている)白人オヤジがちらりと映っているのだが、多くの写真を見ているうちに筆者の中で一番違和感が膨らんでいったのは服装やカネのかかった店よりもニーの立ち振る舞いが板についていたことである。

なんか君島十和子とか賀来千香子みたいな「綺麗な40代セレブ」になってるのだ。ただニーの離婚した旦那はバスの運転手だし、ネットで調べたら職場の整体院チェーンも見た目は立派だが料金はそんなに高くないからセレブと言われるほどの給料をもらっているとは思えないのだが、彼女の表情には今の人生が楽しくて仕方が無い的な輝きが感じられたのだ。

あの地べたに座ってパパイヤの皮を剥いてたニーがカクテルバーの常連に・・とそのギャップの大きさに唖然としたが、しかし人間30年も経てば性格も相当変わるものだし、それに当時のニーの「私は弱いから守ってね」的なキャラクターは幾分、いやかな~り作っていたのではないか・・との疑念が頭を過ったのである。

それで噛み砕けない思いを当時一緒にゴザ酒場で呑んでいた友人にぶつけてみたら「そりゃお前さんが可哀そうなゴザ酒場の女たちって虚像を作り上げて、そこに感情移入していただけだよ!」と一笑に付されてしまった。確かに・・日本で生活保護を受けています・・とか、結核でサナトリウムにいます・・と書かれていえば何の違和感も持たずにすんなり飲み込めたような気がするな。






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