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窓の下から聴こえてくるメロディー

筆者の住んでいるアパート裏の空き地に洗車サービス業が作られるらしく、それで先週から労務者たちが集まってトンカン!ガンガン!と鉄骨の組み立て作業をしているのだが、作業能率アップのため大音量でかけている音楽に懐かしいミュージシャンの歌が幾つも交じっている事に気づいた。

ジョーン・ジェットである。名前を言われても一体誰なのか???な方が大半だと思うが、彼女は今から40年前にランナウェイズというアメリカのガールズ・バンドでギターを担当し(「チェリー・ボム」と言う曲が唯一ヒットした)、その後ソロに転じて80年代から90年代にかけて「ごく一部」の間では大変人気のあった正統派ロックンローラーなのだ。

しかしそう言われても知らないものは知らないだろうし、それに前述の「正統派なのにごく一部の間で大変人気が・・」というなんだか矛盾する表現にも違和感を持たれたかもしれない。実は恥ずかしながら筆者も同じで、実は彼女の全盛期であっても「アイ・ラブ・ロックンロール」と言う曲のメロディーを知っていただけで、名前の方はこれが記憶にまるっきりインプットされて無かったのだ。

それが変わったのは大学4年の時に遊びにったバンコクでのことで、ヒマな筆者はよく歓楽街にある違法カセットテープ屋に立ち寄っては最新のヒットアルバムを買い求めていたのだが(違法ビジネスには変わりないがPeacock社という音質が良いブツがここは多く置いてあった)、一番手前の売れ筋が集められた棚にマドンナやプリンスなど当時最高に人気があったミュージシャンたちと並んでジョーン・ジェットのテープがやたらと並んでいることに気が付いたのだ。





精悍な顔つきの女性が黒いレザーのつなぎに身を包んでいる写真からハードロックかヘビメタ系の様で、「この店のオーナーはこのマイナーなロック歌手が好きなんだな」としか思わなかったが、これが不思議な事に他の店でも彼女のテープは一番手前の売れ筋コーナーにデン!と置かれているから、そんなにタイ人の間で人気があるなら聴いてみるか・・と200円なにがしの金を払って一本買い求めたのだ。

ところ・・、がこれが味付け海苔みたいに薄っぺらだけど旨味と塩っ辛さ強くてなんとも良かったのだ。これぞアメリカン・ロック!とも言うべき正統派ながら何処かにイギリスのパンクロックの影響を受けていて、特に筆者が好きだったパンクの雄セックス・ピストルズの名曲「プリティ・バカント」のカバー曲は本家よりもジョーン・ジェットが歌う方がよろしいのでは?と思えるほどの出来である。

「このネーちゃんイケてんな!」と喜んだ筆者は早速テープ屋に行って別のアルバムを買い集め、日本に帰国してからも彼女の新作が出る度に買い求めたのだけれども、ある時勤めていた会社の英会話講座の場でアメリカ人の女講師が「あなたの好きなミュージシャンは誰か?」と皆に質問したから、筆者はジョーン・ジェット!と答えたところ、これが・・変な顔をされたのだ。

あれっ?アイヴィーリーグの名門エール大学の卒業生ゆえか女講師はギャンギャンうるさい音楽が嫌いなのかな?と思ったが、レッド・ツェッペリンと答えた同僚にはニコニコ笑いながら「フィジカル・グラフィティの構成は・・」なんて話しているじゃないの・・。それに筆者とこの教師はウマが合う方で、こんな冷たい反応をされるのは今までなかったのだ。





それでジョーン・ジェットってアメリカ人の間では評判が悪いのかな?だけど差別的な事を歌っている訳ではなさそうだし・・などと考えあぐねていたが、今と違ってインターネットなぞ無い時代だから調べることもできない。結局その場は筆者の中では疑問符が付いたまま終了してしまったのだけれど、後日アメリカ女講師が自宅に生徒を招いて食事会をしてくれた際に種明かしをされたのである。

ジョーン・ジェットはアメリカの労働者階級、それもロクに教育も受けていない粗野で一番下の階層にいる白人のための音楽だと彼女は言ったのだ。いくら働こうが貧困に喘いでいて、不公平な社会構造に対する憤りや悲哀、そしてその裏返しの愛国心といったものがジョーン・ジェットのテーマであり、はっきり言わないけれども要するに「アナタはもっと上の階層向けのミュージシャンを聴くべきである」と言いたかったらしい。

しかし黒人に対して差別的な表現をした生徒を一喝するほど進歩的な女講師がなぜ同じアメリカ人の下層白人を軽蔑する風な見解を示したのか理解できなかったのだが、このアメリカのエリート進歩派が持つ博愛の精神は実は人類すべてに向けられているわけではなかった事を知ったのはそれから随分と後になってからである。

どうもジョーン・ジェットは日本でいうと(例えが古くて恐縮だが)70年代の泉谷しげる的なポジション(プラス右翼の味付け)にいるらしく、同じくプロテスト色が強い頭脳警察のように貧しいけれど高い感受性や教育を受けたインテリのファンが付くようなことが絶対に無い文字通り最底辺白人御用達のミュージシャンということらしい。





そう聞いて何故バンコクのあのテープ屋にジョーン・ジェットのアルバムが溢れていたのか?なぜ日本では全くと言って良いほど紹介されなかったのか?が判った気がしたのだ。同じ肉体労働者でも文庫本なんか読んでる日本人と違ってタイ人の方ときたら知性の砂漠、永遠のゼロみたいな世界だ。ジョーン・ジェットの曲はこういう人たちにだけ共鳴するのだ。

でも、となると共鳴していたオレって一体なんなの?とちょっと落ち込んでしまったが、しかし好きなものは好きなのだから修正しようがないし、それにパンクロックが好きということなら(筆者自身は下層の生まれではないけれども)志向的にその下地があるわけである。それでおそらくオレの前世は山谷の労務者か南方戦線でボロ屑みたいに死んだ二等兵かなんかだったんだろう・・と思う事にしたのだ。

しかしその後ちょっと羽振りが良くなってからはジャズなんか聞くようになり(人間懐具合によってテイストも随分変わって来るものである)、4年前にフィリピンに引っ込んでからは昔の曲でもケイト・ブッシュの様な知性品格才能ともトリプルAのお方の音楽ばかり聴いていたのだが、そこへ突然四半世紀前に好きだったジョーン・ジェットの曲が耳元に蘇ってきたのである。

窓から外を見下ろすとそこにはフィリピンでも最下層な風体の悪そうな男たちが重そうな鉄骨材料を肩に担いでいるのが見えた。なるほどジョーン・ジェットはあいつらのための音楽だわい・・と思ったが、しかし・・そのメロディーに合わせて体でリズムを取っている自分自身に気が付く。上の階にいるけどオレも連中と目線は同じなんだな・・と思った筆者は実に久しぶりにジョーン・ジェットの曲に耳を傾けたところ・・・・・・・。やっぱりイイね!このオバちゃん!






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